- 青森県の南東に位置し八戸市に隣接している、人口約19,840人の町。
- 町の南部には標高615mの「南部小富士」と呼ばれる名久井岳があり、馬淵川が東西を横断するように流れている。
- リンゴ・サクランボ・ブドウなどの果樹栽培が盛ん。全国で唯一の町営青果市場がある。
南部煎餅で有名な地域の一つ
- 南部煎餅とは、およそ600年前から食べられる、小麦粉・塩を原料にしている。
煎餅のこと。青森県・岩手県全域で名物。南部町内にも、南部煎餅の専門店がある。
- およそ600年前、南部町を訪れた長慶(ちょうけい)天皇が空腹で困っていた際、家来が米とそば粉を鉄兜を使ってせんべい風に焼き上げた。天皇はその素朴な味わいがとても気に入り、これが「南部煎餅」の始まりと言われている。
せんべい汁
江戸時代の終わりの『天保の大飢饉』が発祥とも言われ、野菜などと一緒に、お米の代わりに、小麦粉で焼いた煎餅を鍋にしてお腹を満たした。
杉澤均和(まさかず)さん
200年以上続く農家の8代目。
若い頃は、DJやサーフィン、鉄道関係の仕事など農業には携わってはいなかったが、30歳の時、地元で採れる野菜の美味しさに改めて気づき、農家を継ぐことに。
地域の農家さんや飲食店の方などと協力し、地域を活性化する活動も精力的に行っている。
杉澤聡美さん
杉澤さんの奥様。ネギの栽培を手伝う他、トマトも栽培している。
青森県立 名久井農業高等学校の生徒さん(伝統野菜班)
写真左から
福田千晶さん
将来の夢は「農業高校の先生」になり、南部太ねぎの種を繋いでいくこと。
島守宏樹(こうき)くん
高校を卒業したら「セールスドライバー」として働く予定。
西館瑞樹(みずき)くん
叔父に憧れて、将来の夢は「自衛官」
沼畑勝子さん
地元の料理自慢。梨やリンゴを作っている農家さん。
- 5世紀に、中国から日本に伝わり、「日本書紀(720年)」には「秋葱(あきぎ)」という名前で紹介されている。江戸時代にはすでに栽培法も確立され、日本各地で作られた。
- 日本には、埼玉の「深谷ネギ」、京都の「九条ネギ」、群馬の「下仁田ネギ」など、確認されているだけで、90種類以上のネギの品種があるとされている。
- 土壌の違いや、食文化の違いから、東日本では、白い部分が多い「根深ネギ」を、西日本では緑の部分が多い「葉ネギ」が親しまれている。
生で食べると辛い理由
この辛味の正体は、『アリシン』。生で切ったり、かじったりすると成分が飛び出し、辛く感じるが、これは血行を良くし、体を温める効果がある。
この『アリシン』は熱が加わると、働かなくなる為、元々十分にある甘みを強く感じられるようになるので、ねぎは加熱すると甘くなる。
- 昭和39年、工藤幸五郎さんと留目忠男さんが40年かけて品種改良し、登録。
当初は青森県内外で栽培されていた。
- 甘くて柔らかく、耐寒性・多収性に優れている。
特徴1 「太さ」
一般に販売されている長ネギのおよそ3倍もの太さがある。
ネギの葉と葉の巻きがふわっとしているので、柔らかい食感である。
特徴2 「蜜が溢れるほどの甘さ」
一般的なネギに比べ、糖分はおよそ1.6倍。
→糖分が蜜となって、葉から溢れ出すほど。
甘い理由は葉の長さ
一般的なネギの緑の葉の部分は60cm程だが、南部太ねぎは、そのおよそ2倍。
→ネギは、光合成によって糖分を作り出すのだが、南部太ねぎの場合、葉の長さが2倍ほどあるので、より多く光合成ができる。
したがって、糖分をたっぷりと作り出し、溜め込むことが出来る。
甘さを感じられる食べ方:「焼きネギ」
フライパンで10分程度熱するだけ。
塩を少しかけて食べるのが、奥様のオススメ。甘さがより引き立つ。
特徴3「まるまる1本食べられて、栄養満点」
- 白い部分だけではなく、青い部分もえぐみがなく、付け根から葉の先まで、まるごと1本美味しく食べられる。
- 糖分だけではなく、ビタミン群(A・B1・B2・B6・C)食物繊維・βカロテン・鉄分など、栄養素が一般的なネギを上回る結果となった。
- 葉の繊維質が柔らかく、食べやすい。
一度、絶滅寸前に…
- 「土寄せ」の大変さから、栽培する農家が減り、4年前、一度絶滅しかけた。
「土寄せ」とは…
ネギは生長すると、地面から出て日に当たった部分が青くなる。
そこで、柔らかくて甘い・白い部分を長くするため、ネギの生長に合わせて土を被せ、日光に当てないように栽培すること。専用の機械で行うのが一般的。
- 一般的なネギが、葉先までピンと伸びているのに対し、南部太ねぎの葉は柔らかく、曲がりやすい。そのため、機械で土寄せをすると、土の勢いで葉が折れてしまう。
すると、そこが傷口となって病気にかかり、枯れてしまう。
→したがって、鍬で優しく丁寧に、土寄せしなければならない。
さらに、収穫間近まで伸び続けるネギは、7回ほど同じ作業が必要となる。
その負担の多さに、栽培する農家さんはほとんど居なくなってしまった。
絶命の危機から救ったのは「高校生」!
2012年、南部町にある名久井農業高校の『南部太ねぎ』が絶滅の危機にあると知ったグループは、「南部太ネギ復活」を目指し、1人になってしまった農家さんを探し、種を分けてもらい、繊細な南部太ねぎに合った栽培方法を見つけ出すため、全国各地の様々なネギ栽培を研究。
その結果、手間ひまのかからない「縦穴法」という、栽培方法に行き着いた。
「縦穴法」とは…
- 普通の畑につくった畝に「穴あけ棒」で、30~40cmの穴をあける。
※「穴あけ棒」には、スコップの柄を再利用。
- あけた穴の中に、ネギの苗を挿す
☆穴の大きさいっぱいまでネギが育ち、土寄せすること無く収穫を迎えられる。
→土を盛らずに穴に植えるという方法は、まさに発想の転換だった。
→土を寄せる必要もないので、農家さんも栽培しやすい。
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高校生や、杉澤さんをはじめとする若い農家さん達の呼びかけもあり、「南部太ねぎ」を作る農家さんは今では10軒に。
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地元の小学校の学校給食に、南部太ねぎを使ったメニューを出したところ、南部太ねぎの残食はゼロに!
収穫
十分な太さに育ったものから、1本1本手作業で収穫する。
袋詰め作業
- 葉を優しく折りまとめて、専用の袋に入れて出荷する。
購入
地元のスーパー、直売所のほか、ネットの通信販売で全国に発送している。
「ikutera」 https://ikutera.com
「目利き問屋」 http://www.mekikitonya.com
(2015年11月現在はこの2つの通販サイトで販売中)
豚肉巻きネギ天
- ネギを5cm程度の長さに切る。
※表面に切り目を入れて、火が通りやすくなるようにする。
- 1に豚バラ肉を巻き、塩コショウをふりかけ、5分ほど置いておく。
- 天ぷら粉と水で作った衣をからめ、170度の油でじっくりと揚げる。
せんべい汁(青森の郷土料理)
具材にする煎餅は、南部煎餅の中でも、硬めに焼いた鍋専用のもの使う。
- 一口大に切った鶏もも肉と、ささがきにしたニンジン、ゴボウを炒める。
- 1と椎茸をカツオ出汁の中に入れ、醤油とみりんで味を整える。
- 鍋専用の南部煎餅と、斜めに切ったネギを2本分入れ、弱火で10分ほど煮込めば完成。
ネギまみれ油淋鶏(ゆーりんちー)
- 塩とコショウで下味をつけておいた鶏もも肉を、片栗粉にまぶす。
- 1を180度の油で、表裏をひっくり返しながら、10分ほど揚げる。
- ネギの白い部分を粗みじんに切り、醤油・みりん・砂糖・ニンニク・生姜と一緒にフライパンで炒めてタレを作る。
- ネギの緑の部分の千切りを皿に敷き、その上に、食べやすい大きさに切った肉→ネギの白い部分の千切り→ネギのタレをのせ、仕上げに鷹の爪を乗せて完成。