出張DASH村

ジャガイモとは

  • ナス科/ナス属の野菜
  • 世界五大食用作物(小麦、水稲、大麦、トウモロコシ、ジャガイモ)の一つ。
  • 食べている部分は「塊茎」とよばれる地下の茎へと養分が蓄えられたもの。
    さつまいもは「塊根」つまり、根に養分を蓄えたもの。共にいもでも、食べている部分は異なる。

歴史

  • 紀元前から食べられ、紀元後500年頃には栽培も始まり、インカ帝国の重要な食料原だった。
  • 原産地は、南米のアンデスからメキシコにかかる高原地帯。
  • 主要な作物として認められ、生産が盛んになったのは18世紀以降。
  • 日本へは、慶長3年(1598年)にオランダ人が長崎の出島に持ち込んだのが最初。
    ジャワのジャガトラ港経由(現ジャカルタ)だったため、「ジャガタラ芋」と呼ばれ、それが「ジャガイモ」の由来となったなど、諸説ある。

北海道とジャガイモ

生産量
北海道のジャガイモの生産量は年間171万5000tで、全国1位。
日本全体の約80%を占める。(平成28年度 農林水産統計調べ)

歴史
・1598年に長崎に上陸したジャガイモは、のちに北海道に上陸。
1706年に北海道の瀬棚町で栽培されていたという記録が最も古い。
・明治時代に入り、海外からの新品種の導入、さらに北海道開拓史や屯田兵など北海道の農地を開墾していく働きもあり、生産性も向上。栽培が広まった。

恵まれた環境
ジャガイモは、アンデスの高原野菜のため、適度な乾燥と低めの地温を好み、湿地と多肥を嫌う。
→年間を通して涼しく、梅雨もない気候の北海道は、ジャガイモにとって最適な環境。
※生育適温:15~24度。特に品質を左右するデンプン蓄積期の地温は17~22度が最適

ジャガイモの種類・産地
世界では約2000種類ほどあり、日本で作られているのは50種類ほどと言われ、北海道でも数十種類作られているが、完全に地域限定のものも多く、市場に出回るのは10種類程度と言われている。

栄養価
・ビタミンCが豊富。ほうれん草やミカンと同量含まれるデンプンに守られているため、加熱などで壊れることが少ない。
・主成分がデンプンのため、カロリーはお米の半分以下。“満腹指数"は米の2.5倍とも。
・ジャガイモに含まれる「難消化性でんぷん」は、血糖値上昇予防の他に、大腸の善玉菌の餌となり、腸内環境改善にも役立つという。

北海道檜山郡厚沢部町(ひやまぐんあっさぶちょう)

  • 北海道の南端・渡島(おしま)半島に位置する町。
  • 面積平方460.42km、人口3992人。(29年10月時点)
  • 農業、林業が盛んで、海が無い町で、面積の8割が森林。宅地面積は1割以下。

メークインの発祥の地

  • 大正14~16年、全国に先駆け、厚沢部にあった試作場で試験栽培がされた。
  • そのため厚沢部が『メークイン日本発祥の地』とされている。
    厚沢部は帯広の大正地区とともにメークインの栽培に適した地として認められた。
  • 町のキャラクター『おらいも君』は、メークインをイメージしており、『メークイン発祥の地』の石碑も建っている。
  • 毎年夏行われる、町の祭りでは、メークインを約2000個使用し、直径2.1mの超巨大コロッケを揚げている。

お世話になった方

外﨑(そとざき)明さん

厚沢部生まれ、厚沢部育ち。幼い頃から、様々な農業の仕事を手伝っている、大ベテラン農家さん。
町の馬鈴薯組合の組合長を務め、厚沢部のメークインをPRするため、道内だけではなく、全国各地に自ら足を運び、美味しさを伝える活動をしている。
奥様の節子さんも一緒にメークインを作っており、3人の子供達も、学校が休みの日には、農作業を手伝っている。

三木エミ子さん

地元の料理自慢。厚沢部の魅力に惹かれ、20年前に移住。

並川麻子さん

町の保健センターに勤め、町の人々に栄養指導や食育などのイベントを行っている。

ジャガイモ

ジャガイモの生長のしくみ

ジャガイモも他の作物と同様に、光合成によって、養分を作り出す。
それを、地下にある実(塊茎)に溜め込みながら、生長する。

完熟のジャガイモ

  • 芽が出てから3ヶ月ほどで、葉や茎が枯れ始めると、作られる養分も、実の中に溜め込む養分も減少。完全に枯れると、養分が作られなくなるため、イモの生長はストップ。
  • つまり、一番養分を溜め込んで、美味しい状態になっている証拠である。

厚沢部の環境とジャガイモ「涼しい気候」

  • 厚沢部町には、高い山や建物がほとんどなく、日本海側から吹く冷たい風が入って来やすい。
    そのため、北海道の南に位置しているが、夏は涼しい。
  • ジャガイモも人間と同じく、呼吸をしていて、溜め込んだ養分を消費していて、暑いと、その呼吸が激しくなり、せっかく溜めた養分が多く消費されてしまう。
  • ジャガイモが最も生長する夏の時期に、涼しい環境でストレスなく育てられたジャガイモは養分をたくさん含み、美味しくなる。

男爵とメークイン

数ある品種の中で、国内に出回るジャガイモの約4割を占めると言われる、多くの人に馴染みがあり、ともに北海道で作られ始めたのが『男爵』と『メークイン』。

【男爵

  • 明治の半ば、造船会社の経営者 川田龍吉男爵は、イギリスやアメリカから様々な種いもを取り寄せて、函館近郊で試験栽培を行っていた。
  • 1908年(明治41年)その中で「アイリッシュコブラー」という品種が北海道の地に一番適しており、普及させることに努めた。
  • 後に、「男爵様が育てたいも」から農家が「男爵いも」と名付けた。
  • 1971年に、日本で一番初めに品種登録された。

見た目

  • 丸くてゴツゴツしている。
  • 深く入った芽の数は平均で12~15個ほどあるとされている。

ホクホクな食感とデンプン

ジャガイモの主成分・デンプンの含有量は15%程度で、デンプンが多めの品種。
加熱すると、デンプンは膨らんでイモの細胞の壁を内側から押し出す。
→細胞同士が離れ、粒状になり、口の中に入れた際に、ホクホクした食感を生み出す。

 

【メークイン】

  • 20世紀初頭にイギリスの南西部チェルトナムで初めに栽培されたとされる品種。
  • 1917(大正6)年、メークインがイギリスから日本に輸入される。
  • 大正14~16年、厚沢部で試験栽培が始まる。
  • メークインは皮が薄くて病気に弱く、農家にとっては扱いにくい品種だったため、収量が多い男爵イモの方に関心を向ける農家が多かった。
  • 食生活が安定してきた頃に少しずつメークインの需要が伸び始めた。

見た目

  • 見た目は細長くて、芽の数が少なく浅い。
  • イギリスで5月に行われる村祭りで、村の中で一番美しい娘が女王に選ばれた事から、イギリス生まれのメークインは、その美しさゆえ『5月(May)』の『女王(Queen)』と名付けられたという。
  • 日本での、主なメークインの出荷先は関西地域。
    料理に見た目の綺麗さを求める文化の関西での需要が昔から多いため。

しっとりした食感と食物繊維

  • メークインには『ペクチン』という食物繊維の一種が多く含まれている。
  • 『ペクチン』は、ジャガイモの水分と結びつくと、ノリの働きをしてくれ、加熱してデンプンが膨らんでも、細胞同士をくっつけてくれる。
    →しっとりとした食感と、煮崩れしないという特徴。

【収穫~出荷作業】

収穫

葉が枯れたら、(ポテト)ハーベスタという収穫機を、トラクターでけん引して収穫する。

ハーベスタのしくみ

  1. 機械下部の3本のショベルで、イモを土ごと掘り上げる。
  2. コンベアで運ばれながら土や葉や茎を分離。
  3. 観覧車のような、回転するバケットで、機械上部へ。
  4. 選別のコンベアにのり、人の目で規格外品を選別した後、タンクに収納される。

選別~出荷

  1. 収穫されたイモは、各農家さんの作業場で、規格外のものや腐ってしまったイモ、小さすぎて、生食用にはならず、デンプン用になるイモなどに分け、農協に出荷。
  2. 農協の共同選別所で、さらに選別にかけられて、出荷。

選別所の流れ

人の目でチェックする『1次手選』『2次手選』、さらに、カメラや空洞センサーなどによる選別、機械で重さ別に分け、最後も人の目で確認して、出荷されていく。
※1~3℃に設定された専用の貯蔵庫で、保管され、翌2月まで順次出荷される。

購入先

北海道外の地域では、全国のスーパーや、直売所、アンテナショップなどで購入ができる。

調理

イモの塩煮

北海道全域で食べられている郷土料理。

  1. 皮をむいたジャガイモと、塩を適量いれ、鍋で水から煮る。(およそ30~40分)
  2. お湯だけを捨て、1~2分ほどもう一度火にかけて、水分を飛ばす。
    (各地域、各家庭によって、作り方は異なる)
  • そのままでも塩味が付いていて美味しく食べられるが、バターや醤油をつけたり、イカの塩辛をのせる。
  • 今ではイカの塩辛をのせる地域が多くなってきたが、昔はイカが良くとれていた函館近辺・道南地域での食べ方だったと言われている。

舞茸たっぷり!コロッケ

  1. 茹でたメークインをつぶす。
  2. 厚沢部の名産・蝦夷舞茸(えぞまいたけ)、タマネギを切って、ひき肉と一緒にフライパンで炒める。
  3. (1)と(2)を混ぜ合わせて塩胡椒で味つけをしたら、小判形に整える。
  4. 小麦粉、卵、パン粉をつけて180℃の油で揚げたら完成。

肉じゃが

  1. メークインをひと口大に切る。
  2. 豚バラ肉を油を引かずに炒め、そこへニンジンとタマネギと(1)を加える。
  3. 水、酒、砂糖と10cm程度にした昆布を加えて、アルミ箔で落としぶたをし、中火で10分煮る。
  4. しょう油を加えて一煮立ちしたら、茹でたきぬさやをのせて完成。

ポテトのミートグラタン

  1. 茹でて潰したメークインにバター、牛乳、塩胡椒を加えて混ぜ合わせ、マッシュポテトを作る。
  2. (1)を容器の底に敷き詰め、茹でて輪切りにしたメークインを乗せていく。
  3. ミートソース、チーズ、パセリを乗せて180℃のオーブンで15分焼いたら出来上がり。

細切りオイスターソース炒め

  1. メークインを細切りにする。
  2. (1)と細切り豚ロース肉を炒める。
  3. 細めに切ったきくらげとピーマンを加え、塩胡椒で下味をつける。
  4. 最後にオイスターソースで味を整えたら完成。