出張DASH村

長野県北安曇郡小谷村(きたあづみぐんおたりむら)

  • 長野県の最北西に位置し、新潟との県境に面していて、人口は約2800人。
  • 江戸時代、「塩の道」の要所として栄えてきた。「塩の道」とは、塩や海産物を内陸に運び、逆に内陸からは山の幸や、木材・鉱物などを運んだ道で、日本各地に存在した。
    現在も、昔ながらの里山の生活、知恵やしきたりなどが守られている。
  • 雄大な北アルプスの山々が近くに囲まれ、小谷村の真ん中を流れる「姫川」は、水質ランキング日本一にも輝いたことがある。
  • 栂池高原スキー場を始め、小谷村内には3つのスキー場があり、冬はスキー客で賑わう。

小谷杜氏(おたりとうじ)

かつて、小谷村には、小谷杜氏と呼ばれる酒造りの職人が多くいた。杜氏とは、「酒造りの最高責任者」のこと。冬は深い雪に閉ざされる小谷村では、男衆たちが、冬の仕事ととして、酒造りに小谷村の外に出向いていた。

特別豪雪地帯

  • 豪雪地帯対策特別措置法により指定された豪雪地帯のうち、積雪の度が特に高い地域。
  • 小谷村では、1ヶ月の降雪量が2mで、ひと冬の累積の降雪量は9mにもなる。

伊折集落

  • 全体で12戸の小さな集落。
  • 2000平方メートルの畑に、約2600個の雪中キャベツを栽培している。
  • 高齢化や過疎化により、若者が減ってしまっているが、農産物の生産と販売を中心に、住民で協力し合い、地域おこしをしている。
  • 伊折集落では、わら細工体験、棚田や野菜の収穫の農作業体験ができる。

お世話になった方

3人とも信州おたり雪中キャベツ生産組合の一員。

坂井昭十(しょうじゅう)さん(82歳)

  • 長野県出身。小谷村に移り住んで、50年以上で、農業は定年後に始めた。
  • 伊折集落では、雪中キャベツ作りの親方的な存在。
  • ユンボの操縦歴57年の大ベテラン。伊折では、唯一操縦ができる。

福永朋子さん(26歳)

  • 東京都生まれ、東京農業大学出身。
  • 学生時代に小谷村に卒業論文を書くために訪れ、自然の豊かさと小谷村の住人の優しさに、魅力を感じた。その後、農家になりたいと夢を持つようになり、大学卒業後、長野県内の農園に勤務し、野菜作りのノウハウを学んだのち、昨年、単身で小谷村に移住した。
  • 現在は雪中キャベツの他にレタス、キュウリ、ピーマン、ズッキーニなどの野菜を育て、旬の野菜を個人宅配している。

田原富美子さん(58歳)

  • 小谷村生まれ、小谷村育ちの地元の料理自慢。
  • 8人家族のお母さんで、平日は会社に勤める傍ら、5年前から雪中キャベツを育てている。

雪中キャベツ

  • 雪中キャベツの品種は、「四季穫(しきどり)」。
  • 「雪中甘藍(せっちゅうかんらん)」「ゆきわりキャベツ」「雪下キャベツ」などの名前でも呼ばれる。
  • 伊折の雪中キャベツは、種を自分達で蒔くことから始める。8月にキャベツの苗を植え、11月には、もう収穫できるくらいの大きさになっているが、雪が降り積もるまで、畑に植えたままの状態にしておく。すると、やがて冬になるにつれ雪が積もり、1m以上に。
  • 雪の中は、キャベツが凍る直前の約0℃ほどに保たれる。これは「氷温」と呼ばれ、野菜が凍り始める直前の温度。すると雪中キャベツは、凍ることから身を守ろうと、自身のでんぷん質から糖質を作り出すため、甘くなる。
  • さらに降り積もった雪の下で根を張り生き続けているので、更に大きく成長。
    通常のキャベツの大きさの約1.5倍で、重さは3キロにもなる。
  • 雪の下で、根が養分と同時に水分を補給するために、甘いだけでなく、みずみずしく、芯まで美味しくなる。
  • 糖度は、10度近くになることもある。
  • 雪が積もっても、どこに雪中キャベツが埋まっているか分かるように、畝ごとに、杭を立てて、目印にしている。

空洞

キャベツは凍ることから身を守ろうと、糖分を作り出す際、エネルギーを発するので、その熱により、キャベツの周辺の雪は溶けて、雪とキャベツの間に、空洞ができる。
まさに生きている証。

収穫

  • 積雪約1.2mの雪の下に埋まっている雪中キャベツを掘り出すためには、約1mの雪だけをユンボを使って、勘だけで掘る。ベテランの坂井さんは、ユンボのショベルのひとかきで50cm掘り出し、ふたかきめで40cm掘り出す。
    最後は、残りの雪をなでるように掘ると、キャベツすれすれ。このあとは、スコップや手を使って、一玉ずつ掘り出す。
  • 収穫時期に伊折集落では、1回の収穫で、100玉から120玉程度収穫し、多い時で250玉収穫。

ソリカート

坂井さんが、古い子供用スキー板をリサイクルして作った、収穫した雪中キャベツを運ぶためのカート。

販売

小谷村でとれた雪中キャベツは地元のスーパーでは、1玉500円前後で売られているが、特に大きいものは、贈答用として、とても喜ばれるという。
発泡スチールに天然の雪と一緒に詰めて、1玉2500円で販売されている。

調理

キャベツたっぷりメンチ

  1. キャベツは粗めのみじん切りにする
  2. 玉ねぎはみじん切りにして炒め、地元産・はくばの豚のバラ肉はミンチ状にする。
  3. (1)と(2)、さらに牛乳、パン粉、卵、塩、コショウで味つけをしたらよく混ぜ合わせる。
  4. (3)を小判型に整え、小麦粉、卵、パン粉の順番に浸ける。
  5. (4)を160℃の油で約10分揚げたら完成。

キャべツと豚肉のミルフィーユ鍋

  1. キャベツと豚肉を切り、芯がついていない方のキャベツを土鍋に敷き詰め、間に豚肉を挟んでいく。
  2. カツオと昆布で取った出汁に、酒粕と味噌を溶かし、酒、醤油、みりん、塩で味付けし、土鍋に加える。
  3. 約10分程煮たら完成。

雪中キャべツの天ぷら

  1. 芯をつけたままのキャベツを、食べやすい大きさに切る。
  2. 天ぷら粉と水を合わせて、そこにキャベツをくぐらせる。
  3. (2)を180℃の油で約3分揚げたら、出来上がり。

回鍋肉

  1. キャベツを食べやすい大きさに切る。
  2. 豚バラ肉に酒と片栗粉をまぶして炒める。
  3. フライパンにゴマ油を引き、みじん切りしたニンニク、長ネギ、生姜を炒めたら、ピーマン、パプリカを加える。
  4. キャベツを加え、炒めた豚バラ肉を加える。
  5. (4)に甜麺醤、豆板醤、合わせ調味料を加え、炒めたら完成。