福島県福島市
米の国際コンクールで殿堂入りを果たし、去年、TOKIOにアドバイスをくれた山形県の米の匠・遠藤さんが丹精込めて作った『五右衛門』と新男米を改めて食べ比べた。
すると、新男米は旨い米だが、『五右衛門』にある旨味の余韻が足りなかった。
奈良県大和郡山市
舌で感じる確かな違いの理由を探るべく、達也が訪ねたのは、日本中の米好きが買いに訪れる米穀店・イリグチ。
店主の入口寿子さんは、米の美味しさを判定する米・食味鑑定士。
都内有名デパートでは、入口さんが鑑定し、美味しいとお墨付きをもらった米は、一般的には、5kg3000円ほどが、鑑定米として倍以上の8100円にも!!
その米のスペシャリストに新男米を鑑定していただくと、『旨味はあるが、その旨味がスッと抜けてしまい、物足りない』との評価だった。
神奈川県厚木市
そして、城島は科学的に新男米の味を調べる。
その方法は、味覚センサー『TS-5000Z』。味の成分をセンサーで感じ取り、電気信号として数値化できる機械。
測ってみると機械でも、やはり確かに旨味の成分値は高評価だった。
しかし、『五右衛門』にはある苦みや渋みなどの雑味が少ないことが分かった。
この雑味とは、米の味を引き立てる隠し味となる大切な成分だった。TOKIOが作った新男米は、旨味を追求した結果、苦味などの大事な雑味を置き去りにしてしまっていた。
新男米に足りない雑味。それを補う方法は…品種改良だった!!
ただ、新男米に掛け合わせる米は何が良いのか…?
ヒントとなったのは入口さんの言葉。
入口さん曰く、「いつまでも記憶に残る米が、旨味がいつまでも舌に残る米」だという。
福島県福島市
『記憶に残る米』の手掛かりを求めて訪ねたのは、DASH村で養蜂を指導してくれた専次郎さん。
明雄さんのご近所で、明雄さんが作っていた米も知っていた。
専次郎さん曰く、明雄さんは作っていた米は、「あきたこまち、ササニシキ、チヨニシキ」とのこと。
実際に、食べて思い出してみると…TOKIOにとって記憶に残る米は、『チヨニシキ』だった。
実際に、味覚センサーで調べてみると、苦味・渋味という雑味が高いことが判明。
つまり、交配して品種改良するには、最高な相手ということ。
福島県田村市
達也が、チヨニシキの種もみを未だ引き継いでいる佐藤文治さんを訪ね、チヨニシキを見せていただくと、新男米は丸っこいのに、対し形は細長かった。
そして、交配させるために、佐藤さんにお願いし、必要な約1升分を分けていただいた。
吾妻山の雪解け水を10日間、たっぷりと吸収させ、小さい芽が出揃い、種まきの準備が整う。
そして、種まきは、今年も一粒ずつ、土を入れた容器に。
栄養を奪い合うことなく、より強い苗に生長する。
1ヶ月後、新男米もチヨニシキも田植えができるまでに生長。
2品種を比べてみると、この時点で、すでに違いが出始めていた。
隆々と生い茂る新男米は、葉に弾力がある。茎も太く、手で押しつけても、すぐに跳ね返ってくる。
一方、チヨニシキは、全体的に細身で、張りはなく、やわらかい。しかし、一本抜いてみると、その根張りは、新男米以上。細い根(ひげ根)が多く、密集度が高かった。
どっしり構える新男米に対して、チヨニシキは、見た目は女性的だけど、芯はしっかりした印象だった。
そして、いよいよ田植え。
チヨニシキは、花が咲きそうになったらすぐわかる、手前角の特等席へ。
DASH村の仲間達も集まり、16年目となる今年も、30cm間隔に。
花粉を交配するために植えたチヨニシキは196本。対して、植えた新男米は約6000本。
夏には、この中から優秀な株だけを選抜し、チヨニシキと交配させる。
稲が生長しながら、茎の数を増やしていくことを分けつというが、この分けつの期間は、ちょうど梅雨のど真ん中。雨が続き、日照が不足すると光合成ができなくなり、稲の生長にも影響を及ぼしてしまう。しかし、今年は、この時期の日照量が例年よりも多く、その分、光合成を多くできた新男米とチヨニシキは、順調に生長した。
分けつが終わると、茎の中で育まれていた稲穂が、茎の中から出てくる。
すると、すぐに開花し、受粉する。米の場合、ほとんどが自分の花粉で受粉するので、開花した時点で自然と米粒ができ始める。
だが、今年の目標は品種交配。自分の花粉で受粉してしまうと、また同じ品種の米ができてしまうので、品種交配できない。そこで、花が咲く前に、新男米のおしべを取り除き、その残っためしべに、チヨニシキの花粉をかけて受粉。品種を交配する。
だが、この作業が大変だった。おしべを取ると簡単に言ってみても、実際は、0,3ミリのおしべを手作業で一粒ずつ取り除かなければならない。
DASH村の仲間たちと、目を凝らしながら、なんとか20株の新男米にチヨニシキの花粉をつけられたが、その結果も実らなければ分からなかった。
今年は、連続して台風が日本に上陸した。
福島もその道上になることが多く、大雨・強風にさらされることが多かったが、茎が太いせいか、強風で倒されることがなかった上、難波さんが大雨対策として、雨が流れ出るように田んぼに溝を作って被害が出ることを未然に防いでくれた。
茎が過去最高の本数になった分、できた米粒の量も多く、頭を垂れるだけでは収まらず、頭の重さに耐えられず、根元から倒れこみ、地面に着きそうになっていた。
そして、その茎の多さと太さは刈ってみて、さらに実感した。
いつもなら、3株くらいは一度に刈り取ってしまうが、今年は2株で持ちきれなくなってしまった。
そして、刈った稲は棒がけにかけて、天日乾燥。
天日に乾燥させることによって、じっくりと甘みが凝縮されてより、美味しくなる。
一方、気になるのは、交配米。無事に実っているのだろうか?
緊張しつつも、一株ずつ袋を取りながら確認してみると…ない?
不安を抱きつつも、探していくと、ようやく交配した粒を見つけて一安心。全て確認してみると、合計107粒の交配米がなっていた。
これが新たなる品種の一粒になるかもしれないので、大切に桐の箱にしまい、春まで保管する。
およそ1ヶ月、天日で乾燥させた新男米を早速、脱穀して、籾すりすると、その玄米は大粒で、しっかりと張っていた。等級も3年連続の1等米に。チヨニシキも測ってもらうと、チヨニシキも無事、一等米に。この二つの一等米を心待ちにするDASH村の仲間たちの元へ。
みんなで新米を味わうべく、それぞれが食卓の準備をする。なんと、漬物名人の孝子さんは新男米で味噌を作り持ってきてくれていた。この味噌は、2年間じっくりと熟成されて赤色に。
まだ、新男米の米粒も残っていた。
そして、いよいよみんなで新米を味わう。今年、一年の実りに感謝しつつ、楽しく食べていた。
だが、今年の収穫祭は、ひと味違った。
春、新男米の味を正当に評価してくださった入口さんが新米を食べに、来てくれていた。
みんな、入口さんの評価を緊張した面持ちで、聞いていた。
その評価は…、美味しいお米という評価!しかし、その美味しさは、やはり長続きしないとのことだった。続けて、チヨニシキも食べていただく。すると、入口さんは、チヨニシキの中に確かな存在感を感じ、この存在感が雑味になるとのこと。この米を新男米に掛け合わせると、うまくいけばいいお米ができるのではないかと評価していただいた。
美味しさや高い収穫量、病気への強さ、冷害や高温への耐性など、生産者や消費者が望む新しい特性をもった品種を開発すること。
→米は本来、熱帯地方の植物で暖かな気候と比較的、降雨のある地域が適しているのだが、より収穫できる品種や寒い地方でも栽培可能な品種など、目的にそって品種を開発してきた。
生かしたい長所によって、両親の組み合わせを選ぶ。
例えば、食べておいしい品種Aを、おいしくてたくさんとれるように品種改良したい場合、たくさんとれる品種Bを交配させる品種として選ぶ。
新男米の場合
新男米の場合、旨味は強いが、旨味を引き立てる雑味が少ないので、雑味があるチヨニシキを交配させる品種に選んだ。
1.母体となる品種(新男米)の準備
→イネは自家受粉なので、自分の花粉で受精する前に、母体のおしべを取り除いてから別の品種の花粉をふりかけて交配させる。
新男米の場合
今回、新男米の品種改良では、すでに開花した粒は取り除き、開花前の粒の頭1/3を切り、おしべを全て取り除き、掛け合わせる品種・チヨニシキの花粉をかけて交配させた(雄しべ摘出除去法)。
→通常、研究機関などは、いくつもの品種を掛け合わせるため、比較的、簡易的な温湯除雄法で行われるが、掛け合わせる品種は一つだけなので、手間はかかるが確実な方法で行った。
温湯除雄法:イネの穂を約43度のお湯に7分間つけて、花粉だけを働かなくさせる。
→43度のお湯につけてもめしべは正常に働く。
→穂によって咲く日がずれるので、すでに自分の花粉で受粉した花は取り除く。
このような花が残っていると、交配した米と区別できなくなる。
2.交配させる品種(チヨニシキ)の準備
3.2品種を交配
→花を母体となる品種に近づけ、そっと振ると花粉が飛び、めしべに降りかければ完了。
→この時、別の株の花粉が飛んで来ないよう風のないところで作業する。
→交配が終わったら、他の花粉が自然にかからないように、直ちに穂に袋をかける。