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ひめゆり隊と同じ戦火を生きた少女の記録 最後のナイチンゲール

2006年8月22日 放送
ストーリー

ハワイ真珠湾への奇襲で始まった太平洋戦争が3年目に入った昭和19年の夏、戦局が悪化しているにもかかわらず、沖縄ではまだ平穏な日々が続いていた。
女学校で養護室の代理教員をしている助産婦の新城美智子(長谷川京子)は、好感を抱いている教師の新垣信一(椎名桔平)に、その日新しい命を取り上げたことを報告する。
だが、笑顔を見せる美智子に、信一は近々米軍が上陸する可能性が高いことを明かした。

地上戦となれば女生徒たちは、半ば強制的に学徒看護婦として従軍しなければならない。美智子と信一は、何も知らずに校庭を元気に走る生徒たちを眺めながら、その時を想像して顔を曇らせた。そして、約半年後の3月下旬、信一の予想は現実のものとなった。沖縄本島西南沖に集結した艦船からの米軍の上陸が始まったのだ。

卒業を直前に控えた信一らの教え子、照屋サチ(成海璃子)、平良安子(市川由衣)、仲根悦子(サエコ)、玉城冨美(岩田さゆり)らに動員令が出たのは、米軍機による激しい空襲があって程なくのことであった。焼け焦げた校舎を背に、校長は、学徒看護婦の任務を全うするよう訓示する。捕虜になる前に立派に自決するようにと叩き込まれた生徒たちは、家族に見送られながら出発し、国民学校の敷地内に造られた軍の病院壕にやって来た。

多くの負傷兵がトラックで運び込まれる病院壕は、苦痛による悲鳴や唸り声で満ちていた。
痛みに耐えかねた負傷兵に、血まみれの手でいきなり服を掴まれた冨美は、恐ろしさと緊張から、思わずサチに助けを求める。そこへ凛とした様子で現れサチらに指示したのは、婦長として従軍した美智子であった。
美智子の優しく的確な命令で勇気を取り戻したサチらは、懸命に壕内で任務に当たった。

サチらが配属された壕は、非戦闘員の一般人より兵士の治療が優先されていた。瀕死の重傷を負った老人(植木等)が入口で置き去りにされているのを見つけたサチは、命に順番はない、と担当の軍曹・山崎(柄本明)に反発する。美智子は、そんな山崎の命令に黙って従っていた。血と膿の臭いが充満する暑い壕内で、負傷兵の足を麻酔なしで切断する手術を手伝ったサチは、全てが戦争を中心に回っていると思い知った。兵士の治療が終わった頃、老人はすでに事切れていた。

“鉄の暴風”と呼ばれた米軍の猛攻の中、招集された信一が前線部隊に移ると報告に来た。一方、転属命令が出た美智子は、サチ、安子、悦子、冨美を連れて、老人や女性、子供の死体が転がる道を、病院壕の分室に向けて出発した。

途中、我が家に立ち寄ったサチは、笑顔で迎えてくれるはずの父母ら5人が、揃って自決しているのを目の当たりにして愕然となった。悲しみで押し潰されそうになったサチを懸命に励ます仲間たち。

上官の命令で信一らが民家から食糧を強奪する場面に遭遇した美智子らは、戦争が人の心まで醜く変えてしまうと思った。

4日程歩いて到着した分室と呼ばれる壕も前の壕と同じように負傷兵で一杯だった。ヘマをする冨美に、文句を言う軍国少女の安子。いがみ合う2人に結束を訴えるサチ。疲れ切った生徒たちの乱れる胸の内を知った美智子は、その夜、生きる尊さを教え、明日への希望を与えようと形ばかりの卒業式を行った。ロウソクの灯りの中、髪をとかし大切にしまっておいた制服を着て整列する生徒たち。美智子は、そんな4人の髪に、卒業証書代わりの美しい沖縄の花を挿した。

だが、美智子やサチらの幸せな時は僅かだった。まもなく、水を汲みに行った安子が米軍機の爆撃を受けて死亡。日本軍が首里の司令部を放棄するとの連絡があったことから、美智子らにも南部に移動するよう命令が出た。担当の将校・小泉(斉藤洋介)は、歩けない負傷兵はそれぞれ自決するようにと毒入りのミルクと手榴弾を配る。「天皇陛下、万歳!」の絶叫が響いた壕内は、すぐに地獄絵図と化した。

4人は、一人また一人と絶命する兵士たちを置き去りにしながら、南部の病院壕に向かった。だが、途中、他の生徒たちと合流し、ようやく到着した美智子らに、なんと看護隊の解散命令が出た。

上空を舞う米軍機の攻撃にさらされながら逃げ惑う美智子と生徒たちがようやく入り込んだ先は、大きな自然壕だった。中では、老人や子供ら民間人と兵士たちが息を潜めている。だが、この壕に、ついに米軍部隊が接近してきた。

そんな中、一人の妊婦が連れていた子供が急に泣き出し、これを見た軍曹の山崎が壕から出るよう命じた。妊婦に銃を突きつけている部下が信一だと気付いた美智子は思わず声を掛ける。信一が上官の命令に逆らえないと察した美智子は、サチらを促し、妊婦と子供を連れて壕の出口にやって来る。これを見た米兵たちは、攻撃態勢に入った。

その時、妊婦が極度の緊張で急に産気付いたことから、地獄の戦場に奇跡が起きた。美智子は、自分の置かれている状況も忘れ、懸命に妊婦を励まして出産を手伝う。その介助をするサチら生徒たち。
これを見た米兵たちは、なんと攻撃をせずじっと新しい命の誕生を見守ったのだ。やがて、壕の周辺に元気のいい産声が響いた。固唾を呑んで様子をうかがっていた人たちから安堵のため息が漏れる。壕内外の兵士たちも敵味方に関係なく、笑顔を見せる。

だが、この平和なひと時も、つかの間だった。
一人の米兵が美智子らに水の入った水筒を投げたのがきっかけで、壕の周辺は再び戦闘状態になった――。

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