2012年5月29日放送

作られた当時のピアノの音を蘇らせる人がいます。
ピアノ調律技師 大久保詩朗(おおくぼ しろう)さん。

工房に所狭しと並ぶ、数多くの古いピアノ。
「100年以上前の音は、どんな音なのか?」
直さずにはいられない大久保さん。

これまで1400台ものピアノを蘇らせてきましたが、まだ手がけたことのない
幻のピアノがありました。
それは、上海の博覧会を訪れたとき、出会った。世界最高のピアノ「スタインウェイ」

「こんなのがもし修理できたら感動ものだ」

瀕死の状態で運び込まれたスタインウェイと向き合うこと半年。
寝る間も惜しんで修復したのです。
ここまで大久保さんを奮い立たせた言葉、それは…

「苦悩を通して、歓喜に至れ」

「苦悩を通して、歓喜に至れ」

作曲家ベートーヴェンが、友人への手紙に記した言葉で、
悩み抜いたからこそ納得のいく 曲が完成するということ。

「非常に喜びのある仕事でできることなら
アンティークを続けていきたいです」

静かに眠るピアノたちは再び音色を響かせる時を待ち続けます。