2015年6月16日放送

その傘が、持つ人を美しくする。
傘職人 小椚正一(おくぬぎ しょういち)さん。

60年以上傘を作り続けてきた小椚さんがこだわるのは、傘のシルエット。

「自分でやっていて良い型が出た時、“良かった、出た。この型が”と思う。だって格好悪くちゃどうしようもないもの。」

使う人の立ち姿まで美しくするその傘は、
雨の日を楽しい一日に変えてくれます。

「これぐらいが一番良いんですよ。16本の骨は。これがまん丸くてはしょうがない。浅すぎても格好悪いでしょ。これぐらい私は丸みがいいと思いますよ。」

シルエットを決めるのは生地の性質。
生地に向き合い、傘は1日に5本ほどしか作れません。

「(生地が)柔らかいから詰めた方がいいんじゃないかな。(生地が)固いなこれは。ちょっと伸ばさなきゃダメだとか、それで全部変わっちゃうからね、傘の格好がね。」

しかし、傘の形にこだわるあまり、こんなことも・・・

「1回(お客さんから)返ってきちゃったんですよ。“直してくれ”って。“固い”って。自分じゃ良いと思ってるけど、これはちょっとうまくないなってものは出ますよ。」

そんな小椚さんが共感した言葉、それは・・・

『忍耐の草は苦い。だが、最後には甘い、柔らかい実を結ぶ』

ドイツの詩人、ジムロックの言葉です。

「自分の体が続くだけ一生懸命やって、良い傘作って良い型を出して。それでいいんじゃないですか。」