2016年11月22日放送

江戸時代から金物業が盛んな新潟県三条市。

2つの面を持つ金槌(かなづち)、玄翁(げんのう)を作る職人、
道心斎 正行(どうしんさい まさつら)さん。

玄翁を作る正行さんの元には、全国から注文が入ります。

「私の玄翁の特徴は、軟らかいもの(鉄)に硬いもの(鋼)を貼るということなんですね。軟らかいものに硬いものを貼るということはかなりの技術が要ります。それを習得するのに15年かかりました。」

軟らかいものに硬い物を貼る芋付(いもづけ)は、師である
幸三郎(こうざぶろう)さんが再現し、正行さんが道具として極めた技術。

鉄の粉で鉄と鋼を接着し、鋼を叩いておわん状に被せることで、くっつきにくい
素材同士を密着させることができるのです。
そこには、使う人への思いがありました。

「たたかれた力はより軟らかいところで吸収されるわけですよ。そうすると手に響きがないとか、入りがいいとか、これくらいの長さの釘をへしこむ時に全鋼だと10発くらいでへし込むんです。これだと6発くらいではいっちゃう。腱鞘炎も防げますよ。」

使い勝手まで極める正行さんが大切にする言葉。それは。

『お客さんが喜ぶことだけしろ』

師匠・長谷川幸三郎さんの言葉です。

「こんなに端端、隅隅まで気を使わないとダメなのかなぁということなんですよね。手作りでここまでできるのは自分しかいないんじゃないでしょうか?」