2018年9月25日放送

花鋏(はなばさみ)職人、川澄巌さん。
生け花で使われる花鋏。
川澄さんの花鋏は多くの華道家や園芸家たちに愛用される名工の逸品です。
『生け花のハサミというのは手の延長だから自分の思うように切れるハサミでないとね』
その特徴は握った時の軽さ。
わずかな力で切れるかどうかは、カシメと呼ばれる芯棒の締め具合で決まります。
『小さい金づちで少しずつ締めていく。
“ここは軽く締めなくてはいけない”“ここは力を入れないとだめだ”
というのは長年の経験で自然と出てくるんだよね』
さらに良いハサミにするためのこだわりが…
『ハサミを閉じたときの“カシャン”と響く音です』
持ち手の先の1mmにも満たないすき間が心地良い音を生み出します。
『すき間の狭さで音が全然違う。良いところがあるんだよね。
良い音がパチパチと鳴っていれば疲れも感じないで“仕事してるなぁ”と思えるじゃない。
使う人の意見を聞いてずいぶん勉強になった。
職人は頑固だと言われているけれど、悪い所を言ってくれた方が商品が良くなっていきますからね』
この道70年、今なお最高のハサミを追い求める川澄さんが共感する言葉。

「色を見る者は形を見ず、形を見る者は質を見ず」

全体を見ることが、本質を理解する上で大切と説いた夏目漱石の言葉です。

『使う人に喜ばれることが1番だね。もうかるなんて考えていない!』