2018年10月16日放送

文化刺繍(ししゅう)作家、椎津康子さん。
季節や自然などの風景画を作り出す、文化刺繍。
「糸を布にくぐらせるという作業が本来の刺繍だったんですけど、
針で糸を打ち込んでいく作業で文化刺繍は出来上がっていくんです。」
4本組のひもをほどき、専用の針に通して打ち込んでいくと糸が縮れます。
これが文化刺繍の秘密。
「糸が縮れていますから、打ち込むと布がくわえこみます。このことによって、
針を引き上げた時に糸が取れてこないんです。」
この作業を幾重にも重ねると、縮れた糸が持つ風合いが独特の表情を生み出します。
「木はひびが入っているじゃないですか。
ひびの部分を先に刺して、木の皮の部分を後から刺し乗せると、
ひびの部分が沈みこむので質感が上手に出てくるんです。」
今年、英国王立美術家協会の名誉会員にも選ばれた椎津さんが心に思う言葉。

「遊びをせんとや 生まれけむ」(平安時代末期の歌謡集『梁塵秘抄』)

童心に帰ることで生まれるものもあるという意味です。

「岩の質感の固いものや川の流れを表現できた時は
喜びのあまり、誰かに『見て』って言いたくなります。」