2018年10月23日放送

そば店 店主 前沢克也さん。
新そばの季節。長野県北部の富倉地区
ここに古くから伝わる『富倉そば』は、その製法から『幻のそば』とも言われています。
「“オヤマボクチ”を入れているのが特徴です。つなぎは小麦粉を使わず、オヤマボクチのみ。
喉越しや、歯ごたえがいいし、そばの香りはかなり良くなると思う。」
つなぎに使うのは“オヤマボクチ”と呼ばれる多年草の葉の部分。
これをおよそ3か月かけて加工します。
「干して、ゆでて、乾かして、ゴミを取る。
1kgのオヤマボクチの葉から、数gしか作れない。」
オヤマボクチにはクセがなく、そば本来の香りがひき立ちます。
しかし大変な苦労が…。
「一般的なそばは10~15分しかこねないのに比べて、富倉そばは30分以上こねないと生地がつながりません。
しかもオヤマボクチは草なので、生地全体に、むらなく混ぜないといけないんです。」
この手間と地域の高齢化によって、そばを打つ職人も減りつつあります。
「富倉そばを絶やしたくない。つなげていきたい、そばみたいに。」
古(いにしえ)の味を受け継ぐ前沢さんが共感する言葉。

「伝統とは形を継承することを言わず、その魂を、その精神を継承することを言う」

柔道家 嘉納治五郎

「“おいしかったよ”って言ってもらえるのが一番ですね。
来ていただいて、味を知ってもらえれば何よりです。」