2020年12月29日放送

手彫り刻印職人、赤塚正和さん。
時計やメガネ、電化製品の部品に押される記号や番号。
それを刻む、いわば金属の判子が「刻印」です。
「今までに彫った中では、1文字の大きさが上下で0.4mmというのが1番小さかった。」
まず彫刻用の機械を使って限界まで彫っていきます。
「機械では刃物が回転して彫るので、Aの三角の部分はただ丸い穴が空くだけになる、
それを手で鋭角にする、これが手彫りなんですよね。」
刃先が、わずか0.3mmほどのタガネで手彫り。これが出来る職人は日本では数えるほど。
「いっぺんに削ろうとして、削りすぎてしまうと失敗。
鉄なんだけれども、力がかかって線がゆがんで膨らんでしまうんですよ。
どの位が1番いいのか、やってみて感覚で覚えるしかないんだよね。」
アルファベットのQなど、曲線をキレイに彫るのが腕の見せ所。
「やっぱり手が震えるんですよ。角 角 角のアールになっていっちゃう。
もう息を止めて、薄皮を削るように、本当に集中してやらないとできない。」
製品に命を与える刻印を、手彫りで刻む赤塚さんが共感する言葉…

「各人にとってほんとの天職は
自分自身に達するというただ一事あるのみだった」

ドイツの作家 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の言葉です。

「手彫りでやった線の方が微妙な太さ細さが出たりとか、
人間味が出るという人もいるんですよ。誰もできなければ、全部手でやっちゃう。
そこが自分のプライド、誇りでもある。」