STORY

第10話
2024.09.28 OA

「……相談室……辞める。私、福島に行こうと思ってる」――。まこと(大島優子)の突然の告白に、驚き言葉を失うさくら(小芝風花)。真は、震災の爪痕が残る福島で今も大切な人を待ち続けている誰かの力になるために、福島県警の採用試験を受けるつもりだと言う。止めたところで真の気持ちが変わらないことを知っている桜は、寂しい気持ちをこらえて真の背中を押すが、その前に、2人には、まだやり残したことがある――。公安部長・佐川(杉本哲太)の不正を暴き、不慮の死を遂げた堀口ほりぐち(戸次重幸)の無念を晴らすのだ。

事件性なしと判断された堀口の本当の死因は、代議士の高山に突き飛ばされて頭を強打したことが原因の可能性が高く、佐川はそれをもみ消そうとしている……。黙っていられないのは桜と真だけでなく、利根川とねがわ(吉田鋼太郎)と武藤むとう(半海一晃)も同じ気持ちだ。堀口と同郷の元警察官・磯辺(モロ師岡)も、佐川が関わってきた不正について証言してくれるという。これを糸口に佐川と高山のつながりを暴くことができれば、佐川を追い込むことができるはず!桜たちは大船に乗ったつもりでいたが、直前になって磯辺が佐川の圧力に屈し、「何も知らない」と証言を覆してしまう……。

佐川の力をまざまざと見せつけられる桜たち身元不明人相談室……果たして真相を暴くことはできるのか!?そして桜の命を救ってくれた恩人の身元は一体!?

ぶつかりながらも支え合ってきた桜と真、年の差バディが最後の事件に挑む!!

以下、ネタバレを含みます。

佐川と高山のつがなりを証明することも、高山が堀口を死なせたことの証明も、どちらも不可能だと判断した利根川は、最後の手段として、堀口の戸籍偽装を公にしようとする。そうすれば、偽装に関わった佐川もタダでは済まない。「俺たちの最後の悪あがきだ」――利根川の奇策に動揺する佐川は「知らんよ、戸籍偽装なんて」とシラを切るが、すでに勝負はついていた。手嶋てしま(阿部亮平)の説得により、磯辺が堀口の戸籍偽装を証言すると約束してくれたのだ。堀口の妻・由理恵(星野真里)も、犯罪者の家族として世間の目にさらされるのを覚悟で戸籍偽装の公表に納得してくれた。さらに、高山ともめたホステス・倉田真奈美(都丸紗也華)が、佐川と高山の密会場面を隠し撮りしていたのだ……。動かぬ証拠を突き付けられた佐川はついに陥落。がくぜんとする佐川の胸に、利根川の言葉が突き刺さる、「おまえは、堀口の正しさに負けたんだ」――。

佐川は堀口の戸籍偽装の全責任を認め、公安部長を退任。これで高山を守る盾はなくなり、堀口の家族に影響がでることもなくなった。ひとまず胸をなで下ろす桜たち身元不明人相談室に、インターネット番組の取材依頼が舞い込む。佐川の騒動を見て、相談室の仕事に興味を持ったそうだ。番組の中でインタビューに答える桜は、相談室への配属を希望した理由を聞かれ、いまだ身元がわからない命の恩人の話をする。「私を救ってくれた人を、帰るべきところに帰してあげたい……そう思ってこの仕事に就きました」。すると、このインタビューが思いがけない知らせを呼び込む!桜のインタビューを見た山梨県の医師が、“桜の命の恩人に会ったことがある”と連絡してきたのだ。桜は急いで山梨県の病院に向かい、医師に恩人の写真を見せる。「間違いないと思います」と答える医師の記憶では、恩人は心臓発作で救急搬送されてきたという。運よく一命は取り留めたものの、肥大型心筋症という、移植以外では完治が難しい大病を患っていたようだ。にもかかわらず、恩人はいつの間にか病院から姿を消してしまった。身元がわかる物を持っていなかったため、どこの誰かは不明だが、「これが残されていました」と医師が見せてくれたのは、『助けてくれた方へ ご迷惑をおかけしました』と書かれたメモ書き。メモの裏側を確認すると、それは高速バスチケットの半券だった。千葉駅発のバスで、日付は救急搬送された日……。千葉から山梨へ、何の用があったかはわからないが、難病を抱えていた恩人がもし千葉に住んでいたとしたら、県内の病院に通院していた可能性が高い。桜たちは千葉県内の病院に片っ端から電話をかけ、ついに恩人の身元を特定する――。

恩人の名は、藤田昭良(尾美としのり)。千葉県内の昭良の家を訪ねた桜と真は、昭良の妻・真知子(藤田朋子)に昭良の似顔絵と遺体写真を見せて確認を取る。しかし、真知子は夫の写真であることを認めながらも、遺骨の引き取りは拒否。「私たちは、捨てられたんです」――。9年前、昭良は突然『ごめんなさい』という書き置きを残して家を出ていった。それから9年、真知子と娘の秋桜里(富田望生)がどれほど苦しんだか……「もう関係ありませんから」と突っぱねる真知子に、桜は「昭良さんは、お二人を捨てたわけではありません」。難病を患っていた昭良は、家族に心配をかけまいとして、病気のことを誰にも言わずに一人で抱え込んでいたのだ。……が、真知子はそのことにもうすうす感づいていて、いつか話してくれると信じていたという。それだけに、何も話してくれないことが悔しかった……「何だったんですかね、私たちの20年は……」と肩を落とす真知子に、桜は昭良に命を救われたことを言い出せず……。

桜が帰宅すると、部屋のドアノブに紙袋が掛かっていた。袋の中身は、葉月(鈴木杏樹)からの手紙と、桜の大好きな唐揚げ。桜のインタビューを見た葉月が届けに来たようだ。手紙には、今まで桜の苦しみに気づいてやれなかった自責の念と共に、親としての素直な思いがつづられていた……『身勝手だって言われるかもしれないけど、それでもお母さんは、あなたを愛してる。どうか忘れないで……。いつか笑って帰って来られるようになったら、そのときは春にしてね。みんなで庭に桜の木を植えたの……その花をあなたとも一緒に見上げたいな……あなたのお父さんも大好きだった、桜だから』――手紙を読みながら、込み上げるものを必死に我慢して唐揚げを頬張る桜――「とっくに冷めてるはずなのに……おいしいなぁ……」。
一方、真の元には、福島行きを知った手嶋が想いを伝えにやって来る。「俺……福島に遊びに行ってもいいですか?」。不器用なりに精一杯の気持ちを示す手嶋に、真は「もちろん、お寿司食べに行こう」と答える。そしてその夜、桜と真は部屋でお酒を飲みながら2人だけでプチ送別会を開く。「大丈夫?ちゃんと1人でやれる?」と心配する真に、「子ども扱いしないでもらえます?真ちゃんの方こそ、無理して体壊さないようにね。腰痛とか」と言い返す桜。いつもの調子でやり合いながらも、いつの間にか抱き合って別れを惜しむ2人……。真は「私が行く前に、桜の過去を解決しなきゃ。絶対に、藤田さんを家に帰してあげよう」。

昭良が残したバスチケットから、秋桜の成分が検出された。昭良は亡くなる前日、山梨県の秋桜畑を訪れていたのだ。そこは、娘の秋桜里がまだ小さかった頃、家族3人で訪れた思い出の場所……。真知子と秋桜里に報告する桜は、昭良に命を救われたことを打ち明け、「昭良さんはここに帰ろうとしていたんです。最後まで、あなたたちと一緒に生きるために」――。昭良の思いを知った秋桜里の目に涙があふれる。その隣で真知子は、「ずっと、出せずにいました……出さなくてよかった」と、昭良の残した離婚届を破り捨て、「彼に会わせてください」――。
後日、名無しだった墓石に『藤田昭良』の名前が刻まれた。花を手向ける真知子と秋桜里を見守る桜に、幻の昭良がほほ笑みかける……「ありがとう」。帰っていく真知子と秋桜里、そして昭良……。真が桜に言う、「昭良さんは、桜のせいで死んだんじゃない。あんたが彼に生かされたように、彼も、あんたに生かされたんだよ」。幻の昭良の後姿を見送りながら、桜と真は、これからも前を向いて生きていこうと心に誓うのだった。

旅立つ真を見送ろうと、身元不明人相談室には桜を除くいつものメンバーが集まるが、見送られるのが苦手な真は既に旅立った後だった。真らしい去り際が、どこか嬉しくもある一同。
その頃、桜は1人でジムに来ていた。真に会ったらグチャグチャに泣いてしまいそうだからだ。それなのに……ジムで真とまさかの鉢合わせ!驚く桜に、真は「最後にスカッとしてこうかと……」。思わず吹き出してしまう2人は、最後に激励の拳を交える――「真ちゃん、いってらっしゃい!」「いってきます!」――。
どこの誰かも分からない“名もなきご遺体”の身元を特定し、家族のもとに帰すことが仕事の『警視庁身元不明人相談室』。1人でも多くの身元不明者を家族のもとに帰すため、桜と真の挑戦は続いていく……。