「あなたは誰?必ず家に帰してあげるからね」――。どこの誰かもわからない“名もなき遺体”の身元を特定し、家族のもとに帰すことが仕事の『警視庁身元不明人相談室』。捜査官の三田桜(小芝風花)は、誰も行きたがらない地味な部署に自ら志願して配属された変わり者。10歳上の生真面目な同期・月本真(大島優子)とは性格も趣味もまるで正反対。顔を合わせれば言い合いばかりだが、一人でも多くの身元不明者を家族のもとに帰してあげたい気持ちは一緒。そんな2人とは裏腹に、上司の利根川(吉田鋼太郎)や、堀口(戸次重幸)、武藤(半海一晃)相談室のメンバーは無気力で緊張感ゼロ……。
のんびりムードの相談室に、珍しく捜査一課と科捜研の若き両エース・手嶋(阿部亮平)と菜津(柳美稀)が捜査の協力を求めにやって来る。なんと、都内の中学校にあった人体骨格模型が本物の人骨だったのだ。鑑定の結果、その白骨は約1年前に亡くなった人のもので、殺人の可能性もあるという。「被害者の推定年齢は20代後半から30代の男性」――菜津の報告に、真は思わず息をのむ…。一方の桜は「やったりましょう!白骨遺体の身元、うちらが絶対突き止めましょう!」と、やる気満々!
その直後、事態は急転。中学校の理科教師・西川(坂本真)が、遺体を標本にするため薬品で白骨化させたことを認めたのだ。標本マニアの西川は、動物の死骸を探すために入った奥多摩の山中で、見ず知らずの男性が崖から飛び降りるところを目撃。人間の標本を作る絶好のチャンスと見て、その遺体を持ち帰ったが「殺してはいない」と言う……。
桜たちは、科捜研の早瀬所長(高島礼子)の協力を得ながら西川が持っていた遺留品を頼りに遺体の身元を突き止めることに成功。ところが……男性の妻は「違います、夫じゃありません」と、なぜか遺体の引き取りを拒否して……。男性は本当に自殺!?家族が引き取りを拒否するワケは!?桜&真の年の差バディが真相究明に奔走する…!!
以下、ネタバレを含みます。
桜と真は、白骨遺体がプロバスケットボール選手の富田純也(浅利陽介)であることを突き止めたが、純也の妻・聡美(仁村紗和)から「違います。夫じゃありません」と遺体の引き取りを拒否されてしまう。
「よくあることだ」――家族の死を認めたがらない人は珍しくないと利根川は言う。「最初から俺たちは望まれてないんだよ。大切な人の死を告げて、わずかな希望を断ち切る……疫病神だ。ここはそういう連中が集まる掃きだめなんだよ」。これ以上は事件に首を突っ込まないよう、桜と真にクギを刺す利根川。
「じゃあ、富田純也さんはどこに帰ればいいんですか?」――納得できない桜と真は、利根川が止めるのも聞かずに純也の死の真相を探り始める。そんな2人に少しずつ心を開き始める聡美は、「彼がいなくなったのは、私のせいなんです」。選手として将来を期待されていた夫・純也は日本代表入りが内定していたものの、合宿直前、階段で足を踏み外した聡美をかばって腕を骨折。それ以降、思うようなプレーができなくなってしまったという……。「私が彼の夢を奪ってしまった。もし彼が自殺したなら、私が殺したようなもの。私のところになんか帰りたくないはず……」と自分を責める聡美……。
純也は本当に自殺だったのか?桜と真は拘留中の西川を問い詰める。「あいつは間違いなく自分から飛び降りた。死にたいヤツは死なせてやったほうがいい」――自分の欲求を満たすために純也を見殺しにした西川に、桜は思わず声を荒らげ……「あんたが一言でもいいから声を掛けていたら、彼も、踏みとどまれたかもしれないのに!」……独りで命と向き合った純也に、桜は過去の自分を重ねてしまう……。
腹の虫が治まらない桜と真は、キックボクシングのジムで激しく打ち合う。むしゃくしゃした時はいつも2人でスパーリングをして互いの鬱憤をぶつけ合うのだ。このまま終わらせたくない……桜と真の思いは一つで……。
純也を家に帰してあげたい……聡美の止まった時間を動かしてあげたい……そのための手掛かりを必死に探す桜と真の強い思いが、無気力な堀口と武藤の心を動かし、相談室総出で純也の転落現場を捜索!すると、純也が1年前に落としたスマホを発見……!そこには純也が最後に撮った写真が残されていた。それは、オレンジ色に染まる夕日の写真……。純也が生前読んでいた雑誌に『パワースポット』として紹介されていた景色だ。純也は自殺なんかじゃない……。このきれいな夕日から、もう一度生きる力をもらおうとしていたのだ。しかし不運にも足を滑らせて転落してしまった……。「きっと彼は、この景色をあなたと見たかったんです。だから夢中になって撮影したんじゃないですか。これからもずっと2人で生きていくために」……桜の言葉に、聡美は涙し、ようやく全てを受け入れる……「彼に、会わせてください」――。
「これでよかったのかな……」。生きて戻って来てほしい……そのわずかな希望を奪ってしまったことに悩む桜。一方の真は「私は良かったと思ってる。これで彼女は前に進めるんだから」。そう言う真も、ある人の帰りを待ちわびて前に進めずにいるようで……。
何が正解かなんて、今はまだ分からない。でも……。桜は名無しだった1枚の報告書に、『富田純也』という名前を、確かに書き込むのだった――。