STORY

第6話
2024.08.24 OA

新宿の雑居ビルの屋上から少女(白本彩奈)が飛び降り、命を絶った。所持品もなく身元は不明だが、少女の地雷系メイクとファッションから、トー横キッズの可能性が高い。もし彼女が家出していたなら、ご家族が捜しているかもしれない……さくら(小芝風花)とまこと(大島優子)は、身元につながる手掛かりを探すため、武藤むとう(半海一晃)が描いた似顔絵を手に新宿歌舞伎町のトー横へ向かう。

しかし、警察を嫌うキッズたちは、桜たちが話し掛けても空返事をするだけでまともに相手をしてくれない。唯一わかったことは、亡くなった少女がキッズたちの間で『キイちゃん』と呼ばれていたことだけ。彼女の本名や連絡先を知る者は誰もない……それがトー横では“当たり前”なのだとキッズたちは口をそろえる。
途方に暮れる桜と真の前に、科捜研の所長・早瀬はやせ(高島礼子)が現れる。早瀬は日頃からトー横に通い詰め、キッズたちの悩み相談に乗っているらしい。「どうしてそんなこと?」と尋ねる桜に、「ちょっとした罪滅ぼしね」と意味深な返事をする早瀬は、キッズたちと話がしたければ、ありのままの彼らを知ることが先決だと言う。

そんな中、キイちゃんと親しかったという地雷系メイクにマスク姿の少女ハルピ(莉子)を見つけた桜と真は、ハルピが持っているキイちゃんのスマホを見せてもらおうとするが、「ありえないし」と拒絶されてしまう。「キイちゃんは、家になんか帰りたくないよ、絶対に」と、遺骨を家族の元へ帰すことに反対するハルピは、それきり口を閉ざし……。ハルピともっと話がしたい桜は、「まずは自分がトー横のみんなのありのままに、なる」と意を決し、地雷系メイクで歌舞伎町に現れる!!

昨日まで笑っていた少女が突然命を絶ったのはなぜ!?真相解明に奔走する桜と真!その裏で、身元不明人相談室には不穏な空気が漂い始め――。

以下、ネタバレを含みます。

桜のいびつな地雷系メイクを見たハルピは「バカにしてんの?」とあきれつつ、桜のメイクを手早く修正。「ハルピちゃん、メイクうまいっ」と桜が褒めると、ハルピは「キイちゃんはもっと上手だった」と表情を曇らせる。キイちゃんのことを本当に何も知らないと言うハルピ。お互い干渉しないのがトー横のルール……そう言いながらも、キイちゃんのリュックやスマホを手放せないのは、本当はキイちゃんのことを知りたいから。そんなハルピの本心を見透かした桜と真は「私たちが必ず突き止めるから、協力して」とハルピを説得する。
そんな中、キイちゃんのスマホを契約していた男の証言から、キイちゃんの地元が静岡県御殿場市だと判明。男はパパ活目的でキイちゃんにスマホを渡していたが、実際には何度か食事をしたことがある程度で、その時にキイちゃんから地元の話を聞いていたのだ。急いで静岡に向かおうとする桜に、ハルピはキイちゃんのリュックとスマホを差し出し、その代わりに自分も御殿場に連れて行ってくれと要求。「私、知りたい……キイちゃんが、なんで私にスマホを渡したのか。だから一緒に連れてって」。一般市民を捜査に巻き込むわけにはいかないが、ハルピの思いも無視できない桜は、“たまたま静岡に旅行に来た”ハルピと一緒に御殿場駅周辺で捜査を始める。その間も、かたくなにマスクを外そうとしないハルピのことが桜は気になって……。

間もなく、キイちゃんのスマホに残っていた動画と通行人の証言から、キイちゃんの通っていた高校が判明!キイちゃんの本名は『奈良岡紗季』だった。教師の話では、当時からメイクアップアーティストを目指していたという。教師から実家の住所を聞いた桜とハルピは、その足でキイちゃんの実家へ向かう。
「あの子に、間違いないんですか」――娘の死を知って肩を落とす母・奈良岡文子(遊井亮子)。しかしその横で、再婚相手の葛城拓真は「娘じゃねーし」と遺骨の引き取りを拒否。キイちゃんは文子と前夫との子なのだ。「勝手に出てったんだから、今さら死んで戻って来られても迷惑なんだよ」と吐き捨てる拓真は、キイちゃんのリュックの中に15万円が入っていたことを知ると、一転して「やっぱ引き取るわ」と態度を変え……。

「あんなやつんトコに、キイちゃん、帰したくない」と拓真の態度に憤るハルピ。あの15万円はパパ活でも何でもなく、キイちゃんがメイクのバイトでこつこつ貯めたお金なのだ。しかし、両親が引き取ると言っている以上、それを拒む権利は桜やハルピにはなく……。
その夜、桜とハルピはキャンプ場で一夜を過ごす。人生初キャンプに喜ぶハルピは、高校2年生の時、トー横で遊んでいただけでパパ活していると学校でウワサを立てられ、それ以来、学校にも家にも居場所がなくなってしまったのだと桜に打ち明ける。一緒に居てくれたのは、キイちゃんだけだった。それなのに……。「推しが、死んじゃったからだと思う」。キイちゃんが死を選んだ理由は、好きだったアニメのキャラクターが物語の中で死んだから……。その悲しみをわかっていながら、「私、キイちゃんに言えなかった。推しがいなくなっても、私がそばにいるから……って」。ウザがられるのを恐れて何も言えなかった自分を責めるハルピに、桜は「それだけあなたがキイちゃんのことを大切に思っていたからだよ。あなたにとっての推しは、キイちゃんだったんだね」。きっと、キイちゃんもハルピのことが大好きだったに違いない。その証拠に、ロックがかかっていたキイちゃんのスマホには、マスクを外したハルピの写真がたくさん残っていた。キイちゃんがハルピにスマホを託したのは、もっと自分に自信を持ってほしいと伝えたかったから……。桜が真剣なまなざしでハルピの心に訴える、「推しがいなくなっても、あなたはいなくならないでね。生きていれば、また必ず、推しに巡り会えるから」。桜の言葉が胸に響き、泣き崩れるハルピ。「桜さんにも、推しいる?」「うん、いるよ」――笑顔で答える桜の脳裏には、真の顔が浮かんでいて――。

翌日、桜とハルピは、拓真と文子に15万円を差し出し、「所持金と同じ額です。お受け取りください。その代わりといってはなんですが、ご遺骨は、こちらで供養させていただけないでしょうか」。すると拓真は「あ、そう」とあっさり受け入れ、「生意気なこと言って家飛び出して、結局死んじまうんだから……かわいそうにな」とキイちゃんをさげすむ。その瞬間、ハルピは初めてマスクを外して声を上げる――「キイちゃんはかわいそうなんかじゃない!あんたにDVされて、家を出るしかなかったんじゃないか!」――ハルピの声に、その場が凍り付く。実はキイちゃんの体には無数のアザがあった……文子の知らないところで、拓真から虐待を受けていたのだ。「それでも、キイちゃんはかわいそうなんかじゃなかったよ。大好きな推しと一緒に死んだんだから。……あんたと一緒に死んでくれる人がいる!?あんたが死んで、泣いてくれる人がいる!?少なくともキイちゃんには、そういう仲間がいたよ。あんたなんかよりキイちゃんの方が、よっぽど幸せだったんだから!」。全身で拓真を非難するハルピを、桜が後押しする……「正直申し上げて、紗季さんが心から安らげる場所は、ここではないと思います。紗季さんのご遺骨は、こちらで引き取らせてください」。すると文子は桜たちにお金を差し戻し、「紗季のこと、よろしくお願いします」と深々と頭を下げるのだった――。

後日、身元不明人相談室にハルピがあいさつにやって来る。トー横を卒業し、実家に戻ってメイクの勉強をするらしい。「キイちゃんには及ばないかもしれないけど、やれるとこまでやってみようかなと」。そんなハルピに桜がランチをごちそうしようとすると、ハルピは「無理です!そんな恐れ多いことできません!」と全力で拒絶。どうやらハルピの新しい推しは桜のようで……。「私の名前、樋口美晴です」。ハルピはそう言って桜に一礼し、去って行く。その背中を見送る桜の目には、キイちゃんが並んで歩いているように見えて――。

桜と真がトー横事件に奔走する裏で、身元不明人相談室には不穏な空気が漂い始めていた。堀口ほりぐち(戸次重幸)が一人、深刻な表情で何かを決断していて――。