STORY

第9話
2024.09.21 OA

堀口ほりぐち(戸次重幸)が突然、帰らぬ人となった。死因は、階段で転倒して頭を強打したことによる外傷性脳損傷。通夜に参列したさくら(小芝風花)やまこと(大島優子)ら身元不明人相談室の一同は堀口の遺影の前で言葉を失い、堀口の妻・由理恵(星野真里)と息子・翔太(白髭善)も突然のことに現実を受け止めきれない……。

沈痛な空気で覆われる葬祭場に堀口律子(川俣しのぶ)が現れ、由理恵が「お母さまですよね?妻の由理恵です」とあいさつする。実は由理恵と律子はこれが初対面。由理恵は堀口から「両親は亡くなった」と聞かされていたが、戸籍謄本を見て律子の存在を知り、慌てて連絡したのだ。律子の話では、堀口は借金まみれの父に嫌気が差し、高校卒業後に家を出て、それ以来30年も音信不通になっていたという。「まさか立派に……警察官になってたなんて……」と律子は声を詰まらせるが、堀口の遺影を見た途端、信じられない言葉を口にする――「違います……尚史じゃありません」。30年ぶりなら面影がなかったとしても不思議ではないが、律子は断固として息子じゃないと言い張り、持っていた古い写真を桜たちに見せる。「これが……私の息子です」。写真の男は、堀口とは全く似ても似つかない、明らかな別人だった――!

桜たちが知っている堀口は、堀口ではなかった!?戸籍を偽って警察官になった全くの別人!?一体なぜそんなことに……。堀口のことを調べようとする桜たちを、利根川とねがわ(吉田鋼太郎)が「やめておけ」と制止する。戸籍の偽装が公になれば、由理恵と翔太はマスコミの格好の餌食になってしまう。堀口の名誉と家族のためにも事を荒立てるべきではないと言う利根川は、何かを知っているようで……。

堀口が戸籍を偽装したワケは!?彼は何に苦しみ、なぜ死ななければならなかったのか!?本当の彼は一体誰……!?堀口の帰る場所を見つけるため、桜と真は、開けてはいけないパンドラの箱に迫る!!

以下、ネタバレを含みます。

捜査一課の手嶋てしま(阿部亮平)は、以前、堀口と利根川が2人きりで話す姿を目撃していた。その時の深刻さから、堀口は何かを抱えて苦しんでいたに違いない……。手嶋の話を聞いて黙っていられなくなった桜と真は、堀口のことを知るために由理恵を訪ねる。由理恵が堀口と知り合ったのは10年前、堀口が三鷹署の交番勤務だった頃だという。実は由理恵の父は殺人罪で服役中で、そのことを当時の夫の身内に知られ、離婚。由理恵は1人で翔太を育てようとしたが、悪評が近所中に知れ渡り、嫌がらせを受けるようになっていた。そんな時に堀口が「僕も似たようなものですから」と手を差し伸べてくれたという。“自分も似たようなもの”――つまり堀口も身内に犯罪者がいた!?もしそうなら、堀口は警察官になるために戸籍を偽った可能性がある……身内に犯罪者がいる者は警察官採用試験ではじかれてしまうのが定説だからだ。
とはいえ、どうやって本物の堀口尚史と入れ替わったのか?調べを進める桜たちは、堀口が山形県に強いこだわりを持っていたことに気付き、過去に山形県で起きた殺人事件を徹底的に調べ、1つの事件にたどり着く。――1988年、山形県南陽市の住宅で、当時41歳だった伊藤英司容疑者が借金の取り立てに来た男性を刺殺。その場に居合わせた11歳の長男が救急車を呼んだが、男性は死亡した――。もしかして、その時の長男・伊藤和宏が、堀口の正体……?「私、山形行ってきます」と桜が飛び出して行こうとすると、利根川が「そこまでだ。堀口のことは、もうこれ以上追求するな。……あいつは……俺のせいで、死んだ」――。

数年前、捜査一課にいた利根川は、友人の記者から1本のUSBメモリを預かった。その中身は、公安部長の佐川(杉本哲太)による不正の記録……佐川は代議士・高山吉次の汚職や暴力事件をもみ消していたのだ。……だが、不正を暴く前にその記者が事故で死んだため、利根川はたった1人でそれを内部告発しようとした結果、身元不明人相談室に飛ばされた。それでも諦めきれなかった利根川は、元公安部の堀口に相談。手嶋が目撃したのは、その時の堀口と利根川だったのだ。……実は堀口は、佐川の命令で利根川のことをずっと監視していた。それに気付いていた利根川は「俺と一緒に、佐川を告発しないか」と持ち掛けたが、堀口は佐川に戸籍の偽装という弱みを握られていたのか、「申し訳ありません。佐川部長に背くことはできません」と利根川の誘いを断り、そして死んだ……。堀口の死に佐川が関係していると踏んだ利根川は、繁華街の防犯カメラ映像を片っ端から調べた。すると高山ともめる堀口の姿を発見。堀口は、ホステスに暴力を振るう高山を止めようとして高山に突き飛ばされ、頭を強打。その後、堀口はなんとか歩き出したものの、激しい頭痛に襲われ、階段で転倒。堀口の死は、高山に突き飛ばされて頭を打ったことが原因だったのだ。
おそらく堀口は、佐川を告発すべきか迷っていた。だからいざというときのために、佐川と高山の密会の証拠を押さえておこうと、あの夜、繁華街のクラブへ行き、そこで偶然、高山の暴力を目撃して、とっさに止めに入ってしまった……。しかし、その証拠は佐川によってきれいさっぱり洗い流され、高山を傷害致死で逮捕することはほぼ不可能。今後、佐川は堀口の戸籍偽装の件を公表することはないだろう。それで警察はメンツを守り、由理恵も遺族年金を受け取れる……完璧な口封じだ。

「俺が、あいつをたき付けなければ……俺があいつを殺したんだ……」と自分を責める利根川は、「今回ばかりは、ここまでだ。これ以上進んだら、堀口が守りたかったものも守れなくなる」。しかし桜は納得できず、「室長にはわかるんですか?堀口さんが本当に守りたかったものが何なのか?私にはわかりません」――だからせめて、堀口の帰るべき場所を見つけてあげたい。堀口が本当はどこの誰なのか、なぜ戸籍を偽装したのか。それがたとえどんな結果であろうと、受け止める覚悟はある。「だって私たちは、ずっと堀口さんと一緒にいたんだから……彼を信じることができます」――。
桜の思いに突き動かされた一同は、利根川が止めるのも聞かず、堀口の身元を突き止めるために動き出す。桜と真は山形へ向かい、手嶋は高山の件について調べ始め、菜津なつ(柳美稀)も「なんかあったら、室長と所長のせいにしますから」と、利根川と早瀬はやせ(高島礼子)に責任をなすり付けつつ桜に協力。「……ったく、バカしかいないのかここは」と呆れる利根川を、「あなたも、そうだったでしょ」とたしなめる早瀬で――。

ネットバンキングの記録から、堀口が山形県南陽市の元警察官・磯辺誠司(モロ師岡)に毎月10万円を振り込んでいたことが発覚。さらに、堀口の実の母・啓子(朝加真由美)が36年前から今も変わらず南陽市で暮らしていることを突き止めた桜と真は、2人の元を訪ねる。「伊藤和宏さんについて、お聞きしたいことがあります」――。磯辺と啓子は、堀口のことも伊藤和宏のことも「知らない」と言い張るが、和宏が亡くなったことを桜たちが伝えると、ようやく重い口を開く。磯辺は堀口の遺影を見ながら、「制服……似合ってるじゃないか……」と言葉を詰まらせ、啓子は「よく頑張ったね……和宏」と涙を流す――。
36年前、11歳だった堀口こと伊藤和宏は、目の前で父親が人を刺したことにショックを受け、家に引きこもるようになった。そんな和宏に寄り添い続けたのが、事件を担当していた警察官の磯辺だ。いつしか和宏は、磯辺のような人の痛みがわかる警察官になりたいと思うようになったが、その頃の警察は、身内に犯罪者がいる人間は採用試験ではじかれてしまうのが定説。そこで磯辺が公安の佐川に相談し、佐川から戸籍を変えて別人になることを提案されたのだ。和宏は断ろうとしたものの、啓子から「あんたは自由になりなさい」と背中を押され、戸籍を変えることを決断。堀口尚史として生きる道を選んだのだった。
以来29年間、堀口は啓子との連絡を絶ちながらも、磯辺を通して毎月10万円の仕送りだけは続けていた。しかし亡くなる直前、堀口は初めて啓子に手紙を送っていた。怖くて開けられなかったという啓子に代わって、桜が手紙を開く。手紙には、自分を自由にしてくれた母への感謝の気持ちと、戸籍を偽ったことに対する後悔の念がつづられていた。さらに、『俺は、伊藤和宏に戻るよ』――手紙の中で堀口は、真実を明かして罪を償う覚悟を固めていたのだ。堀口にそう決意させたのは他でもない、一緒に働く相談室の仲間と、大切な家族だ。みんなに、これ以上ウソをつきたくないから……『母さん、俺、今すっごい幸せなんだ』――。

たとえ戸籍を偽ろうとも、家族と過ごした日々にウソなんて一つもない。夫の思いを受け止めた由理恵は、涙を流しながら桜たちに礼を言う。「夫が最後まで笑顔でいられたのは、皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございました」。それに利根川が答える。「堀口は……誰よりも熱い正義感を持った、素晴らしい警察官でした。我々は、彼と一緒に働けたことを誇りに思います」――。相談室のみんなに見送られ、最後は笑顔で帰って行く由理恵と翔太。その横で優しくほほ笑む堀口の姿が、桜にはハッキリと見えたのだった――。
その夜、桜と真は、山形で買った名産品を並べて楽しむ。「おいしそ~どれからいく?」と待ちきれない桜に、真が答える、「私は……相談室……辞める」――絶句する桜!どうなる真!次回、怒涛の最終回!!