なぜ自分は意識を失った?
2017年12月。冬の新潟県。
冷えた体の24歳の女性は銭湯に行くのが大好きだった。
寒い冬に大きなお風呂につかると超リラックスできる。
だから彼女は頻繁に通っていた。
体を洗い終えると、熱めのお湯に入り…じーっと浸かるのが彼女のルーティーン。
冷え切った体が一気に温まる。これがたまらなく好きだった!
10分入るのもいつものこと。
程よく汗も出ていい感じ!だがもう少し我慢して更に5分!
こうして限界まで追い込み…涼しい場所で体を冷やすのも彼女のいつものルーティーン。
そして勢いよく湯船から立ち上がった。そして、この後とんでもないことが!
歩きだしてまもなくのこと。
急に目の前が暗くなり…突然気を失い転倒!
だが間一髪、たまたま後ろにいた人が支えてくれた!
意識が戻ったのは倒れて数分後。
頭ははっきりしているが言葉が出てこない。
体にも全く力が入らず動かなかった。
その状態が数分間続き、ようやく話せるように。
徐々に体も動くようになってきた。
実は、この症状こそ最近よく耳にする「ヒートショック」だった。
それは、急激な温度変化によって血圧が乱高下し、心臓や血管に疾患が起こること。
彼女の場合でヒートショックを検証すると…湯船につかる前までは、彼女の血圧はおそらく正常な状態。
だが、お湯の中へ入ると、体はお湯から伝わる熱を息や汗から放出するために血管を広げる。
そうなると、血流がゆっくりになり血圧が急激に下がる。
一般的に血圧が下がると、脳へ血液を送り出す力が弱まり「脳貧血」を起こしてしまうのだ。
だが、彼女は湯船の中では異変は起きなかった。
これは水圧の影響で、実は湯船の中ではウエストが5センチも細くなると言われているほど、水圧がかかっているため。
この圧により、下半身の血管が締め付けられ、脳への血流を保っていたのだ。
しかし…彼女が湯船から出ると水圧を失った下半身の血管が広がり脳への血流が一気に低下する。
これにより「脳貧血発作」を起こし、失神したと考えられた。
たまたま後ろにいた人がとっさに支えてくれたが、これがなければ命に関わっていた可能性も。
特に65歳以上の高齢者が危ないと言われている。
身近に起こるヒートショックの怖さ
ではお風呂に入るだけで、どれくらい血圧は変動するのだろうか!?
20代の健康な番組スタッフで入浴時の血圧の変動を測定してみた。
まずは25度に温めた部屋で20分程安静にする。
その後、血圧を測定すると…その数値は129。少し緊張しているのかやや高め。
そして脱衣所へ移動
ここは14度。先ほどいた部屋から一気に11度も下がる。
服を脱ぎ、血圧を測定すると…なんと155まで上昇!部屋で計った時より26も上がっていた!
つまり、ここでもヒートショックが起こりえるということ!
脱衣所に来る前の部屋での血圧は正常値だった。
だがその直後、寒い脱衣所へ行ったことで体は熱を逃がさないように、急激に血管を収縮。
すると血流が速くなり、血圧が急上昇したのだ。
これがもし、動脈硬化が進んでいる高齢者だとすると、急激に早くなった血流に血管が耐えられなくなり心筋梗塞や脳卒中などを起こす危険がある。
これはお風呂場に限ったことではなく、例えば部屋と温度差が激しいトイレや早朝のゴミ出しなどで薄着で外に出た時だったり、夜中に温かい布団から出た時でも起きる可能性がある。
続いてスタッフは浴室へ移動。
42度と少し熱めのお湯に一気に入る。
熱いお湯につかると、血圧は131まで低下。さっきより24も下がった!
そして湯船につかってから20分後。勢いよく立ち上がると血圧はなんと93まで低下!
湯船の中の血圧から一気に36も下がったのだ!
ここまで下がると脳への血流はかなり低下した状態。
高齢者であれば、この瞬間失神する可能性もある。
このように、寒いお風呂場に来た事による血圧の急上昇。さらに、お風呂を出た時の血圧の急低下。
この2点で主にヒートショックが起きているのだ!
このヒートショックを防ぐにはとにかく温度差をなくすこと!
脱衣所を暖め、浴室も温める。
浴室暖房や事前に湯船の蓋を開ける。または熱めのシャワーを流すなどして温度を上げる。
お湯は41度以下にして入浴時間も10分以内。
さらにお酒は血圧を低くするので飲酒後の入浴はしない。
また入浴中は汗をかき、血液がドロドロになる。
すると血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞が起こりやすいので入浴前に水分を補給しておいた方がいい。
一般的にヒートショックは高齢者に多いと言われているが…高血圧やコレステロールが高いまま放置している人、また糖尿病の人も動脈硬化が進むのでヒートショックを起こしやすいという。
寒い冬は十分に気をつけて!