鍋料理に入っていた恐怖の食材
かつて、食の安全の認識が変わる大事件が起きた。
時の横綱、大鵬と柏戸がしのぎを削っていた1960年代、
九州場所の行われていた福岡県で、ある相撲部屋の力士たちが突然苦しみだし
病院へ搬送された。
"突然苦しみだした若手力士たち"
搬送されたのは6人の若手力士たち。
症状は腹痛、しびれ、嘔吐など。病院は出来る限りの治療を行ったが
翌日に1人、その2日後にもう1人が亡くなってしまった。
一命を取り留めた力士たちに事情を聴くと、
搬送された日に食べたちゃんこが原因であることがわかった。
"ちゃんこ番の密かな楽しみとは?"
搬送された若手力士は、相撲稽古が終わると
「ちゃんこ番」として親方や兄弟子たちの料理を作る役割を担っていた。
自分たちの食事は兄弟子たちが食べ終わった後。
もちろん、ちゃんこ鍋にはほとんど具は残っていない。
しかし、若手力士たちはちゃんこ番の特権として
自分たち用の食材を密かに残しておき、兄弟子たちに秘密で食べることが
定番となっていた。
そんなある日の事、福岡県の近くでとれたふぐが遠征先の相撲部屋に届いた。
いつもの様に手慣れた手つきでふぐをさばく若手力士たち。
実はこの当時、全国でふぐを調理する際の規定は存在していなかった。
そして、ふぐの入ったちゃんこを食べたことによってふぐ毒による食中毒を
起こしてしまったのだ。
"当時は食べられていたあの食材が原因だった"
しかし、ふぐ自体は親方も兄弟子も食べていた。
ではなぜ若手力士たちだけ食中毒を起こしたのか?それは兄弟子たちに秘密で
取っておいたふぐの肝を鍋に入れ食べていたからだった。
実はこのふぐの肝、古くから美味とされ当時は食通に好まれていた食材だった。
ふぐの毒はふぐ自身が作るものではなく、餌として取り込んだ貝やヒトデなどに含まれる
毒が体内に蓄積されるものなので、毒性の強いふぐ、弱いふぐがあり
食べても何も起きない場合も多かったためそれほど危険な食材という認識が無かったのだ。
もちろんふぐの肝は原則として現在、食用として認められていない。