一流企業を狙った連続強盗殺人犯
2005年。
わずか3か月の間に3件の強盗と4件の殺人を犯した連続強盗殺人の主犯格が逮捕された。
男の名は小田島鐵男。
窃盗や詐欺を繰り返してきたこの男はこれまでに7回の懲役で
人生の半分を塀の中で生きてきた。そんな獄中で書いた手紙は書籍にもなった。
男が残虐な事件を起こした理由とは?
"分不相応な金が男を狂わす"
きっかけは1990年、6月の事だった。
この時、小田島は47歳。府中刑務所から出てきたばかりだった。
小田島はその足で刑務所で知り合った仲間の家を訪ね、
金になる仕事がないか相談を持ちかけた。
すると持ちかけられたのは仕事ではなく、なんと強盗計画だった。
ターゲットはある建設会社。
区役所の職員と名乗り経営者一族の役員と接触したのち拉致。
そして社長の家まで案内させ、経営者の家族を銃で脅し金を要求した。
それもハンパな額ではない。なんと3億円。この計画はあっさり成功した。
取り分は2人で分けた1億5000万円。
高級車に高級マンション。海外でのカジノ旅行など贅沢三昧。
3か月で手に入れた金のほとんどを使い果たしてしまう。
しかし、その派手な金の使い方が警察の目に留まり、帰国初日に空港で逮捕されてしまった。
下された判決は懲役12年。
小田島は再犯の長期受刑者が収容される刑務所に送られた。
"7回目の懲役刑"
小田島は1943年、北海道で生まれた。
父親はおらず、家は超が付くほど貧乏。
祖母や親戚、そして母親の交際相手の家を転々とする毎日だった。
中学を卒業すると、働きに出たものの長くは続かなかった。
金欲しさに窃盗や詐欺を繰り返し犯罪に手を染めていった。
こうして6回の懲役を繰り返していた小田島。
しかし7回目となる今回は更生を心に誓っていた。
というのも、小田島は出会った女性と獄中で結婚していたのだ。
彼女の為にも次はちゃんと生きよう。そう考えていた。
しかし一方で、獄中では3億円の強盗に成功した小田島の話を聞こうと
受刑者たちが声をかけてくる。そんなことが続くといつしか、次はもっとうまくやれる
という気持ちが芽生えてしまっていた。
更生と再犯。この時小田嶋の心はどちらが大きかったのだろうか。
それから1年がたったころ、突然妻からの面会が途絶えた。
しばらくして一通の手紙が。差出人は妻の父からだった。
手紙には妻が蒸発したと書いてあった。
小田島はショックを受けた。この時、自分の中の何かが壊れたという。
"獄中で最悪の出会いが"
1995年12月、受刑者の部屋の入れ替えが実施された。
そこで同室となったのが、守田克美という男。殺人罪での服役だった。
部屋のメンバーが変わったこともあって、再び武勇伝のごとく自身の犯罪を語る小田島。
いつしか小田島と守田は大企業での強盗計画を企てるようになっていく。
刑務所で看守の目が光る中、2人は隙を見つけては細かい計画について話し合った。
見つかったときは殺す、証拠隠滅のために火をつける。出るのは残虐な話ばかり。
そして1996年12月
再び受刑者の部屋の入れ替えで小田島と守田は別々の部屋へ。
小田島は別れ際、先に出所する守田に計画に必要なものを用意しておくように依頼した。
それから5年たった2002年6月25日。
ついに仮出所の日を迎えた小田島。向かった先は妻の実家。
まだ妻は消息不明のままだった。一方で守田という男から連絡があったという。
小田島より2年早く出所した守田は
違法に契約した携帯電話を売って金を稼いでいた。
そして小田島の出所に合わせてアパートを用意。
ここを拠点に悪魔の計画はあっさりとスタートしてしまった。
犯行内容は過去に小田島が成功させた3億円強盗事件の模倣。
ターゲットは前回よりも大きな東証一部上場企業の創業者一族の家。
ここなら10億は奪える。そう信じて疑わなかった。
"悪魔の計画が実行される"
まずは下見。業者と偽って電話をかけ日中の在宅状況を調べた。
そしてホームセンターで道具を購入。
軍手や粘着テープ、作業着に混合ガソリンを準備し宅配業者のフリをして
家に押し入る事にした。
そして海外逃亡するためのパスポートを申請。
ホームレスから買った戸籍を使った。
そして決行の日。
宅配業者のフリをして一流企業の創業者宅を訪れた2人。
出てきた女性にナイフを突きつけ、家に押し入った。
中にいたのは、年老いた母と娘の2人。
すぐに両手首を縛り、粘着テープで目をふさぐ。
家を捜索するとすぐに5~600万円程の札束が見つかった。
さらに金の場所を聞くが娘はここにはもうお金はないという。
これまでずっと貧乏な暮らしをしてきた小田島は、これだけ裕福に暮らしている
この女性が金のありかを言わない事に突然怒りを覚え頭が真っ白になった。
小田島は気づくとこの女性を殺害していた。
当初の予定が狂ってしまった。
動揺した小田島は守田に殺害したことを伝え社長を待たずに家に火を放って逃げた。
一刻も早くここから離れなければ。
怪しまれないように早歩きで車に乗り込む2人。
後で札束を調べると、1万円ばかりだと思っていたものが千円も交じっており
結局奪えたのは250万円程度だった。
この事件はすぐにトップニュースとして取り上げられ警察も捜査に乗り出したが
社長と犯人たちの関係性が無いため捜査は難航。
そして1か月後。
奪った250万円はパチンコやフィリピンパブなどで使い果たし、
あっという間に無くなってしまった。
同じ手口で今度は個人病院の院長宅を襲った2人。35万円を奪い院長を殺害。
しかしその金もあっという間に使い果たすと次は警察を装い商店主の家へ。
100万円を奪い、家に住む女性を殺害した。
3件襲い、4人を殺した。
しかし奪った金額は当初予定していた10億円とは程遠い。
自信を無くした小田島は2度と強盗計画を立てなくなった。
"きっかけは生活費のための窃盗だった"
目撃者は殺し、証拠は残していない。
ここでやめれば捕まる事はないと考えていたのかもしれない。
そんな中、小田島が次に目を付けたのは新聞の「おくやみ欄」。
葬式が行われている最中に参列者の家から現金を奪う計画だった。
生活費を稼ぐためだったがこういった空き巣を続けているうちに
2人は窃盗で捕まってしまった。
すると、パスポートの偽造など様々な罪があぶりだされ
これまで行った3件の強盗殺害事件の実行犯として再逮捕されることになった。
真実が明らかになったのは事件から3年がたった2005年の事だった。
現在2人には死刑が確定しているが守田は現在も再審請求をしているという。
金のために人間の心を失い尊い命を奪った男たちの結末。
このような事件を繰り返させてはならない。