わが子を取り戻せ!母の大作戦
1993年、アメリカ・オクラホマ州の州都、オクラホマシティ。
この日は、コニー・ゴッツィーが離婚調停中の夫ナビルに息子イーリーを会わせる日だった。
待ち合わせ場所で愛するわが子をナビルにあずけたコニ―。
しかしこれが事件の始まりだった。
"愛する息子が帰ってこない"
約束の時間になってもコニ―の元にイーリーは帰ってこなかった。
夫のナビルはイーリーを母国のチュニジアへ連れ去ってしまったのだ。
コニ―はすぐに弁護士に相談をしたが、ナビルの行為はチュニジアにいる以上
アメリカの法律で取り締まることが出来ないという。
チュニジアに対し子どもの返還要求も不可能だった。
息子を奪われて黙っているわけにはいかない。
コニ―は必死でイーリーを取り戻す方法を探した。
しかし1年たっても進展がなかった。
家を担保にしてまでお金をかき集め、探偵を雇ったこともあったが、
お金だけを奪い逃げられたこともあった。途方に暮れるコニ―。
しかし息子を諦めるわけにはいかない。
自身でチュニジアに行こうと決心したコニ―は夫の居場所を聞くため国防省へ。
しかし、担当者は国際トラブルになりかねないと取り合ってくれない。
そんなやりとりをしているうちに担当者から「CTU」という組織の存在を聞かされた。
詳しく調べると「CTU」はこれまで法律などに縛られない方法で子どもの誘拐事件を
解決してきた組織だということが分かった。
コニ―は藁にもすがる思いでノースカロライナ州にあるCTUの本部に向かった。
"頼みの綱はCTUという組織"
淡い期待を胸にドアを叩くコニ―。
現れたのは一組の男女だった。
男性はCTUの代表、ドン・フィニー。女性はジュニーと名乗った。
まずジュニーは自分たちはボランティアではないので報酬を頂くことになると説明。
その額はなんと5万ドル。日本円で約570万円とさらに必要経費が掛かるという。
しかし、もうこれ以外手段のないコニ―は借金をしてでもこの条件を飲むことに決めた。
契約は成立。ここから国境を越えた、愛する息子の奪還作戦が始まる。
"国境を越えた息子の奪還作戦が始まる"
夫へよりを戻したいという内容の電話をかけ、コニ―自身が夫の元へ行くことになった。
電話番号はCTUが手に入れた。1年ぶりの夫への電話が繋がった。
驚く夫のナビルに対し、落ち着いた雰囲気で事前に用意したシナリオ通り
よりを戻したいと嘆願するコニ―。
ナビルは了承し、作戦通りコニ―はチュニジアの家へ向かうことになった。
1994年3月14日、いよいよコニーはチュニジアの地に足を踏み入れた。
ナビルの家を訪れると、そこには愛する息子、イーリーの姿があった。
約1年ぶりの再会。抱き合う2人。しかし夫の両親たちが2人を引き離す。
夫の両親はコニーを妻と認めず、使用人のように扱った。
夫とその両親の監視が厳しく、なかなか息子と2人きりになれない。
そんな日々が2週間ほど続いたころある客が夫の家を訪ねてきた。
アメリカからワインを仕入れにやって来た夫婦だという。
しかしコニーはこの夫婦と初対面ではなかった。
なぜならこの男女は自身の協力者、CTUのドン・フィリーとジュニーだったから。
ワイン商の夫婦を装い、2人を救出にやって来たのだ。
実はチュニジアに入る前、コニ―はこの2人からある作戦を伝えられていた。
コニーがチュニジアに来てしばらくした後、準備を整えて自分たちも行く。
その日が奪還作戦開始の日である。と。
ナビルがレストランを作ろうとしているとの情報を掴み、
ワイン商のフリをしてナビルに近づいたCTUの2人。
そしてある店の名前を会話の中でつぶやいた。
「カフェ・モニフィーク」
この前行った美味しいカフェの店という雑談の中で語った店名だったが
これが息子を家から連れ出したあと待ち合わせをする場所だというキーワードだった。
コニーはこの店名を頭にインプットし、息子と2人きりになるタイミングを待った。
そしてCTUの2人は自分たちの滞在するホテルにぜひ飲んでほしいワインがあるといい
ナビルとその両親の3人とも家から出かけさせることにも成功。手筈は整った。
"必死に逃げるコニー。母子の未来は?"
待ちに待っていた瞬間。
コニーは支度を整え、イーリーを連れて家を飛び出した。
もし夫にバレればこれまでの計画が水の泡。
コニーは息子を抱きかかえ、待ち合わせ場所「カフェ・モニフィーク」まで必死で走った。
約束の場所へたどり着いた2人。しかし誰が味方なのかわからない。
コニーが戸惑っているとある大柄の男が突然しゃがみ、靴ひもを結びながら
ある場所を指差した。指の向こうには車が停まっている。
この車だ!コニーはすぐにサインに気づきイーリーを抱えて車に飛び乗った。
指を差した男はCTUのメンバー。そのまま運転し車を走らせた。
その頃ナビルも息子が連れ出されたことに気づいていた。
状況を警察に通報。現地の警察が誘拐事件として動くことになった。
1分1秒を争う奪還作戦。2人を乗せた車は港に到着した。
そこには船に乗ったCTUのドンとジュニーが待っていた。
警察の追っ手はすぐそこまでやってきている。
船で向かう先はイタリア。
イタリアの領海に入れば、保護が受けられる。
しかし、背後にはチュニジアの巡視船が追っていた。
捕まればチュニジアで犯罪者となってしまう。
必死でスピードを上げ逃げるコニ―達。
すると巡視船はある地点から方向を変え姿を消した。イタリアの領海に入ったのだ。
こうして愛する息子を取り戻したコニ―。
無事アメリカへ帰ってきた2人は、現在ある田舎町で幸せに暮らしている。