幼い命を救え!
1994年、アメリカ・ケンタッキー州、ルイビル
この街で暮らすミッシェル・シュミット(3歳)は「胆道閉鎖症」という
重い病にかかっていた。
命に関わる重い病。助かる術は肝臓移植しかなかった。
そんなある日、臓器移植センターからミッシェルに適合する肝臓が見つかったという
連絡が入った。
"外は大雪。病院へ行く方法は?"
父のエドワードはわが子を救える吉報だと喜んだ。
しかし重大な問題があった。臓器の移植はスピードが命。
手術は当日の夜7時までに行わないと移植は不可能だという。
実はこの日、ケンタッキー州は記録的な豪雪に見舞われており、
家から一歩も外へ出られる状況ではなかった。
病院があるのは1150km先のネブラスカ州オマハという街。
飛行機を乗り継いで行かないといけない。
残された時間は9時間30分だった。
父のエドワードはなんとしても娘に手術を受けさせるべく
手当たり次第に電話をかけ、協力を求めた。
その中の一人、ボランティアをしているシャロンという女性がある行動を起こす。
"街の住人達が奇跡を起こす"
数時間後、街のラジオであるアナウンスが流れた。
ミッシェルの臓器移植手術についてだった。7時までに病院へ行かないと
手術を受けることが出来ないという知らせは街全体へ行きわたった。
これはシャロンの働きかけによるものだった。
そのラジオをたまたま聞いていたのが同じ街に住むテレサ・アムショフという女性。
知らせを聞いていてもたってもいられなくなったテレサはあるアイデアがひらめいた。
ラジオ局へ電話し、近くの教会の駐車場にヘリコプターを呼んだらどうかと提案した。
しかし教会の駐車場は現在、大量の雪が積もっている。
その提案をしたのちテレサは自身でシャベル片手に教会の庭へと向かった。
最初は一人ぼっちの雪かきだったが、夫のジョーも駆けつけ二人となり、
その後ラジオの放送を聞いた街の住人達が一人、また一人と増えていった。
ボランティアのシャロンはミッシェルの父エドワードに急いで教会の駐車場へ向かうように連絡。
エドワードは指示通りにミッシェルを連れて教会へ向かった。
するとそこには見知らぬ大勢の人たちが雪かきしているではないか。
驚くエドワードたち。
ここからヘリコプターで病院まで行ける事になった。
こうして多くの住民たちの協力を得たミッシェルは無事肝臓移植手術を受けることが
出来た。
様々な人の力で命をつなぐことが出来たミッシェル。
しかしこの話はこれで終わりではなかった。
ミッシェルの命はカンザス州に住むある少年によって救われていた。
"心優しい少年に起こる突然の不幸"
1994年、アメリカ・カンザス州ウィチタという街に住む
ブライアン・フリーセン(7歳)は大きくなったら牧師になって多くの人を救いたいと考える心優しい元気な男の子だった。
そして、なぜか「天使と友達になりたい」とたびたび母に話していた。
ある日、ブライアンはお絵かきをして遊んでいると激しい頭痛に襲われた。
大きな悲鳴に異変を感じた両親が彼の元に駆けつけるとブライアンは意識を失っていた。
すぐに病院へ搬送されたブライアン。
病名は「破裂脳動脈瘤」。脳内の血管が膨らみ破裂するというものだった。
すぐさま脳内の血液を取り除く手術が行われたが意識が戻ることはなかった。
医師からは脳死と診断された。
少し前まであんなに元気だったのに。泣き崩れる両親。
そんな中、一人の看護師が心苦しそうにこう言った。臓器提供の話だった。
その話を聞いた両親はふと生前、わが子が多くの人を救いたいと語っていた事を思い出した。
きっと今もその気持ちは変わらないはず。
そう思った両親は臓器提供を承諾。
こうしてミッシェルの肝臓移植が行われることとなったのだ。
"天使になった少年"
ブライアンの両親は家で悲しみに暮れていた。
ふと台所をみると見慣れない紙が挟まってある。それはブライアンからの手紙だった。
内容は「お父さん、お母さん、愛してるよ」と書かれたメッセージ。
家を探すといろんな場所からブライアンの手紙が見つかった。
それはまるで自分の死が近いこと予感しているかのようだった。
ブライアンは死んだんじゃない。天使になったんだ。両親はそう考えるようになった。
ブライアンの両親はのちに肝臓移植に成功したミッシェルの家族に会うことが出来た。
天使となったブライアンはミッシェルの中で今も生きている。