放送内容

2016年2月17日 ON AIR

皮膚をかきむしるのがやめられない少女

大西洋に面したカナダ南東部の街、ダートマス。
1986年に生まれたアンジェラ・ハートリンは両親と姉の4人家族。
ごく普通の家庭に育った、元気な少女だった。


"父親が脳梗塞で倒れる"


しかし、勉強はちょっと苦手。
むしろ体を動かすのが大好きなタイプだった。


そんなアンジェラに新たな悩みが。
顔にニキビが目立つようになったのだ。
同級生の中でも早い方だったのでからかいの対象となった。


さらに追い打ちをかける出来事が起きた。
家族の中でいつも自分の味方でいてくれた父親が脳梗塞で倒れた。
幸い一命は取り留めたが、重い後遺症が残り寝たきりの身体になってしまった。


家計の為、働きに出る母親。
帰りが遅くなり、アンジェラは食生活のバランスが崩れていった。
その結果、ニキビもさらに増えていく。


学校ではいじめの対象になってしまう。
父親は話もできない状態。
アンジェラは学校でも家でも心が休まる時間が無かった。


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"ニキビ潰しが癖に"


そんなある日。母親がアンジェラの異変に気付いた。
顔に点々とかさぶたが増えている。


実はニキビのせいで何もかもうまくいかないと考えるようになったアンジェラは
ニキビを一つ潰した。なぜかそれがちょっと快感だった。
すると、無意識のうちに次々とニキビを潰し始めた。
気分がよく、やめられなかった。


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気付いた時には血だらけの状態に。
そしてかさぶたになった所を母親が気付いたのだ。
母親と姉には痕が残るからやめるように注意を受けた。


しかし一度癖になったら最後、夜になるとまたやってしまう。
ニキビを潰している間はストレスもなく、気分がよかった。


"行動はエスカレート"


そんな行動を繰り返しているうちに行動はエスカレートしていく。
顔のニキビだけでは飽き足らず、腕や足の何てことの無い肌のかさつきも
無理やり剥がすようになった。


そんなことを続けるうちに体中が傷やかさぶただらけになった。
自分で剥いだとは思わなかった母親は心配になり病院へ連れて行った。
医師からは乾燥して痒くなったためのひっかき傷であると診断された。


本当は痒みなんかない。ただ、引っかきたいだけ。
病院でそんな自分の本心は言えなかった。


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悪いとはわかっていてもそれをやめられない。
皮膚をむしっている間は嫌な事を忘れることが出来たのだ。


自分の心をコントロールできない。
実は、このアンジェラの行動には病名があった。


"病名は皮膚むしり症"


アンジェラを苦しめていたのは「皮膚むしり症」という病気だった。
皮膚むしり症とは、「スキンピッキング」とも呼ばれ、
病変を起こすほど皮膚むしりを繰り返してしまう症状が特徴。
発症するのは女性がほとんどで、若い時期に行為を始める人が多い。


ストレスや不安が主な原因と考えられているが、
近年の研究で脳の神経伝達物質の異常が関係している事がわかっている。
それぞれのケースで様々な原因がある複雑な疾患だという。


その後もアンジェラの皮膚むしりはおさまる事はない。
やがてキレイなのは手の届かない背中だけになってしまった。
アンジェラも自身を恥ずかしい、情けない存在と感じる様になった。


それは大学生になっても続いた。
誰にも言えない自分の体の傷の秘密と劣等感。
この状態を抜け出したいと、精神科をいくつも訪ねた。


しかし、まだこの頃は精神科でも皮膚むしり症は認知されていない。
自分の苦しみを分かってくれる医師はいなかった。
部屋にこもり、ネットを見ながら皮膚をむしり続ける無気力な毎日が続いた。


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"自身の苦しみを書籍に"


そんなある日、運命を変える出来事があった。
意外なほど多くの人が自分と同じ症状に苦しんでいる事をネットで知ったのだ。


彼女もブログを開設し、自身の悩みや苦しみをぶちまけてみた。
家族の事や学校の事、皮膚をむしるようになったきっかけなどなど。
やがて、彼女のサイトを見ていた人から友人にも読ませたいから
このブログを書籍化してほしいというコメントが。


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自分のブログを読んで少しでも心が楽になるならと一念発起し
アンジェラはブログの書籍化を出版社に売り込んだ。
そして2009年、書籍「FOREVER MARKED」を出版。


この書籍が話題となり、さらにアンジェラに密着したドキュメンタリー映画、
「Scars of Shame」が制作された。


そして皮膚むしり症が認知された現在、29歳になったアンジェラは
治療を受け、以前の様な傷は目立たなくなった。
しかし完全に消える事はなく、いまでも白いアザとして残っている。


今でも時々、顔の皮膚をむしる事があるというアンジェラ。
しかし、自分自身をさらけ出すことで人生の道を開くことが出来た彼女は、
振り返ることなく、前を向いて生きていこうとしている。

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