消えた親友...秘密だらけの男
アメリカ、ラスベガス。
カジノとエンターテインメントで有名なこの街で恐怖の事件が起きた。
"行方不明になった親友"
発端は一軒のガソリンスタンド。
シェリーという一人の女性従業員が行方不明になった。
真っ先に事情を聴かれたのはサラという同僚。
サラは2か月前に働き始めた新人で、シェリーと年も近かったこともあり
すぐに打ち解け、仲良くなっていた。
サラによると、シェリーの交友関係で知っているのは交際していた恋人がいたという事。
名前はアンドリューと聞いていた。しかし最近は上手くいっていなかったようだった。
翌日、シェリーの車が発見された。
シートには女性用のカバンが残されていたが中身は空っぽ。
手がかりが失われ、警察もお手上げ状態だった。
"サラの前に現れた男"
サラは2人の子どものいるシングルマザー。
昼はベビーシッターに子どもを預けて生活のために必死で働いていた。
シェリーが失踪して2か月がたったころ、
サラは自身の働きが認められ、マネジャーに昇進した。
昇進に伴い、別の店舗での勤務となったサラは。
店から連絡用のポケベルを渡された。
これで家にいる時も店からの連絡を受けることが出来る。
しかし、このポケベルが彼女を恐怖のどん底へ突き落すことになる。
マネジャーとして新店舗で働き始めたサラに
ある男が声をかけてきた。名前はロバート・ジェネロッソ。
サラを気に入ったらしく、初対面でいきなり食事に誘ってきた。
サラはもちろん丁重に断ったが
ロバートの猛プッシュもあり、その後も2人はよく会話をするようになった。
ユニークで明るいロバートとの会話は楽しく、サラも少しずつ心を開いていくようになった。
"ポケベルから恐ろしい声が"
しかし、恐怖は始まろうとしていた。
サラが家でシャワーを浴び浴室から出てきたところで突然ポケベルが鳴った。
店からの連絡かと思いきや、聞こえてきたのは知らない男性の声。
「タオル姿がステキだよ」
サラは辺りを見渡した。しかし人影はいない。
ポケベルからのこういった声は翌日も、そのまた翌日も続いた。
ポケベルの番号を知っているのは従業員のみ。
しかし、働いていても誰も怪しい様子はない。
その後も自分の行動が監視されているかのようにポケベルから怪しい声が聞こえてくる。
その声はだんだんエスカレートし、猟奇的なものに変わって行った。
恐くなったサラはポケベルの電源を切った。
すると、翌日店で上司に怒られた。
大事な勤務連絡が繋がらず困っていたという。
しかしサラは、事情を説明することが出来なかった。
元気がないサラを励ましてくれたのはロバートだった。
ロバートはいつもの楽しい会話で元気づけてくれる。
いつしかサラはロバートが心のよりどころになっていた。
"ポケベルの声の正体は?"
ロバートのおかげで元気を取り戻したものの、
家に帰ると再びあのポケベルが鳴り続けた。
「早くお前を思いっきり痛ぶりたいよ...」
実はこの声の正体こそ、サラを元気づけていたロバートだった。
この男、ロバートという名前は偽名だった。
本名はステファン・ピーター・モリン。彼は恐ろしい連続殺人鬼だった。
11年前、ある若い女性を暴行のうえ殺害。それ以来、人を殺すことに取りつかれ、
40件以上の殺人に関わっているとみられている。
モリンの家には監禁された女性が。それは数か月前に失踪したシェリーだった。
実はシェリーの交際相手のアンドリューもこの男。
モリンはシェリーの次のターゲットとしてサラを狙ったのだった。
当初、サラに近づくために声をかけたものの断られたため、
従業員のポケベル番号とサラの家を調べ、ポケベルで極限まで追い詰めたのち
自分にすがってくるのを待っていたのだ。
そんなモリン扮するロバートに心を開いてしまったサラは
ついにデートの約束をしてしまう。
次の日の夜7時に家で待ち合わせをすることになった。
しかし、モリンは一つミスをしてしまう。
サラが自分の家の場所を伝えようとすると、もう知っていると答えた。
サラはその一言に疑問を覚えたのだった。
"殺人鬼が本性を現す"
一方、ついにサラを我が物にできると喜ぶモリン。
しかし翌日、約束の時間にサラの家に行ったが、家には誰にもいなかった。
実はサラ、モリンの一言が不安になり職場で残業をしていた。
次の日に謝ればいい。そう思っていたのだ。
そしてデートの約束をした日の次の日。
サラの店にモリンはやって来た。サラは声をかけようとしたが
発狂したモリンはサラに鬼気迫る顔で詰め寄ってくる。
これまでの優しかった彼とは全く違う姿にサラは驚いた。
モリンの怒鳴り声に街の人が集まってくる。
通報を恐れたのか、逃げるように男は去っていった。
しばらくして、再びサラのポケベルが鳴った。
そこからは男が女性をいたぶる声が聞こえる。何か残虐な事が行われているようだった。
恐ろしさのあまり耳を塞ぐサラ。
これを最後にポケベルからのメッセージは途絶えた。
そんなある日、警察から行方不明だったシェリーが遺体で発見されたと連絡があった。
ショックを受けるサラ。そして警察はもっと重要な事をさらに伝えた。
次は自分の身が危ないという事を。
シェリーの遺体のそばには男物の財布が落ちてあり、
そこにはサラの名前と家の住所が書かれた紙が入っていた。
警察は、指名手配犯の姿を多数収めたファイルをサラに見せると
そこにはロバートの姿があった。
サラはここで初めてロバートがモリンという殺人鬼であることを知ったのだった。
"男から逃げる日々。そして..."
警察の話を聞いてサラは恐くなった。
最後に聞いたポケベルの声、あれはシェリーの最期の声だったに違いない。
親友の死に気付いたサラは涙が止まらなかった。
サラは警察の勧めで街を出て実家のあるアリゾナ州に子どもを預け、
一人では危険なので友人に付き添ってもらいながらラスベガスの自宅に
荷物を取りに戻った。
家に戻ると、友人が異変に気付いた。家のドアが少しだけ開いている。
家の中ではいち早く侵入していたモリンが待ち構えていたのだ。
すぐに警察に通報すると、モリンは裏口から逃走していた。
散らかった家の棚から住所録が無くなっていることが分かった。
このままでは実家も危ない。
サラは住所録に載せていなかったテキサス州のおじの家に身を寄せた。
それから1年。警察からモリンを逮捕したという連絡があった。
モリンはテキサス州に潜伏していたが、
その情報を知った地元警察が捜索、長距離バスを使うと見て網を張っていた所に
現れたところを取り押さえられた。
40件以上の殺人への関与が疑われたモリンだったが、
立証できたのは自供したわずか3件だけだった。
男は1985年3月、死刑が執行された。