放送内容

2016年3月16日 ON AIR

囚人の愛情は本物か...それとも...

2004年、アメリカ・カンザス州。
妻のトビーは高校時代に初めて付き合ったパットと20歳の時に結婚。
2人の子どもを育てながらフルタイムで働き、
夜は大学に通い、2つの経営学学位を取得する程の頑張り屋だった。


"刑務所である男性と出会う"


そんな彼女が取り組んでいたのが、殺処分される犬の引き取り先を探す活動だった。


そこでよく訪れていたのが2500人もの凶悪犯を収監しているランシング刑務所。
ここに捨て犬を連れていき、囚人たちに訓練させるというプログラムを行っていた。


囚人は動物と接する事で更生への道を開き、動物たちもここで訓練されることで
新たな引き取り先を見つけることが出来る。
このプログラムを考案したトビーは「動物たちの救世主」と呼ばれるようになっていた。


しかし、毎年数千匹の犬は殺処分をされてしまう。
救世主なんて名ばかり。トビーは自分の無力さを痛感し、心を痛めていた。


結婚して30年。家では真面目な夫に何の不満もない。
でも私の今の気持ちを理解してはいないだろう。
トビーはどこか寂しさを感じていた。


そんなある日の事、刑務所で犬の訓練についての講義をしていた際に
何かと突っかかってくる男性がいた。
名前はジョン・マナード。27歳。


17歳のころに殺人を犯し、終身刑に服していた。
はじめは犬にも乱暴な扱いをしていたが、トビーの熱心なアドバイスによって
少しずつ心を開き、犬もそんなジョンに対して言う事を聞くようになっていった。


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それからというもの、トビーとジョンの親交は深くなっていく。
正反対の人生を歩み20歳も年の離れた2人だったが、なぜか気が合った。


"囚人に恋を抱く"


それからしばらくして2人の間に決定的な事が起こる。
一人の荒っぽい囚人がトビーに襲い掛かる出来事があった。
それを守ったのはジョン。
ジョンは囚人たちの中でリーダー的な存在で、彼に逆らうものは刑務所の中にはいなかった。


そんなこともあり、トビーは犬や家庭での悩みをジョンに打ち明け相談するようになった。
いつしかトビーはジョンに恋愛感情を抱くようになっていく。


夫としか付き合ったことのない自分。
恋愛というものを20年以上忘れていた自分。
そんな自分が囚人にときめいている。


訓練が無い日はジョンに会いたくて会いたくてしょうがない。
この時のトビーの心の中にはジョンしかいなかった。


そうなると真面目なトビーは夫に隠すことが出来ない。
正直に夫にいまの気持ちを話し離婚を切り出すトビー。
しかし夫は笑いながら相手にしてくれなかった。


トビーは翌日、ジョンにも自分の気持ちを伝えた。
するとジョンは自分もトビーと一緒にいたいと答えた。


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2人はついに相思相愛であることを確認し合った。


"2人で脱獄を計画"


とはいえ、ジョンは終身刑の身。一緒にいる事は叶うはずもない。
しかしジョンはこれを機に減量や筋トレをするようになり、
密かにある計画をスタートさせた。


一方でジョンからの告白を受け、正常な判断が出来なくなっていたトビーは
刑務所内では禁止されている携帯電話を隠れてジョンに手渡し、
自宅にいる時もジョンと連絡を取るようになっていた。


2005年11月。
ジョンは突然こんなことを言い出した。
「もし脱獄することが出来たら俺と一緒に逃げてほしい」


最初は無理だと言ったトビーだったが、何度も脱獄を持ちかけられるうちに
ジョンと一緒に暮らすことが出来るという期待がトビーの正常な判断を
失わせていく。そしてトビーはジョンの脱獄に協力することを決めた。


最高レベルの警備を誇るランシング刑務所はそうやすやすと脱獄することは不可能。
それでも二人は何日もかけて脱獄する方法を話し合った。


そんな時、トビーが思いついたのは犬を運ぶバンを使って脱獄する方法。
トビー自身が信頼されているから通常の運搬に比べチェックが甘いという。


こうして脱獄の方法が決まると、トビーは逃走用の車を購入し
退職金の積み立てから4万2000ドルを引き出した。


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準備は整い、いよいよ決行日の前日となった夜、
ジョンは囚人部屋でトビーに脱獄が成功したらキスをしたいとメールを打った。
しかしその顔はトビーの知らない悪意に満ちた表情だった。


"トビーの心を利用した囚人"


実はジョン、トビーの事などこれっぽっちも愛しておらず、
脱獄に利用しているだけだった。


10年間も刑務所にいたジョンは警備の事を熟知していた。
犬の訓練プログラムが始まったころ、脱獄にはこの犬を運ぶバンしかないと
この時から考えていたジョンはこの犬訓練プログラムの関係者で
自分の言う事を何でも聞く人物を育て上げようと計画していたのだった。


そしてそのターゲットがトビーだった。
それからというもの、バンに乗り込むために15kgの減量を行い、
トビーには脱獄後の幸せな生活をちらつかせ、脱獄の方法もあえてトビーから
提案させた。それはトビーに、自分が利用されている事を気づかせないためだった。


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ジョンはそこまで慎重に緻密な計画を遂行していた。
そしてその計画の最後にはトビーの殺害までが含まれている。
もちろんトビーはそんなジョンの最終計画までは知る由もなかった。


2006年、2月12日。
脱獄の実行日。この日は日曜日で看守の数も少ない。


午前10時。ついに計画が動き出す。
犬の搬出が始まると、囚人仲間の協力で看守が目を離したすきに
ジョンは犬用のケージに入り込みトビーの乗るバンに積み込まれた。


厳重な警備を誇るランシング刑務所は二重のゲートを突破しないと
外に出ることは出来ない。
第二ゲートは難なく突破。しかし第一ゲートで、警備員が車の中を確認すると言い出した。


後部ドアを開けると一つだけケージにフタがされている。
警備員が指摘するとトビーは捨てられたばかりの犬だから他の犬を見るとおびえて
しまうためフタで見えないようにしていると答えた。


もちろんこの中にジョンがいるのだが、警備員はトビーの一言に納得しチェックは終了。
なんとか最後の難関を突破することが出来た。


こうして2人は脱獄することができたのだった。


"12日の脱獄生活。そして..."


大いに喜ぶ2人は計画通り逃走用の車に乗り換えるため自宅へ向かった。
約束通りジョンにキスを求めるトビー。
ジョンもその約束に答える。しかしそのキスに愛情などひとかけらもなかった。


犬達を下ろした後、逃走用の現金や荷物を積み込む。
さらにジョンは家にあった護身用のピストルを持ち出し、
2人は計画した通りにある場所へ向かった。


脱獄から4時間後、ランシング刑務所ではついにジョンの脱獄が発覚する。
囚人たちの証言からすぐにトビーの乗るバンから逃走したことも判明した。


そして脱獄から15時間。
車をひたすら走らせた2人はテネシー州にある隠れ家に潜んでいた。
トビーは夢にまで見た2人きりの時間を楽しんでいた。
自分の命が危ないという事も知らずに。


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その夜、寝ているトビーを見るジョンの表情は悪魔のようだった。
脱獄に成功した今、トビーはすでに用済み。
もう少し利用したのち殺害しようと考えていた。


脱獄から12日後、警察は逃走用の車を購入した販売店に行きついていた。
購入した際の書類には隠れ家の住所が書いてあった。
トビーが夫に車の購入を知られないようにするためのものだったが、このミスから警察は
すぐさま2人の居場所を特定することができた。


そして近くのショッピングセンターから買い物をして出てきた2人を発見。
警察とのカーチェイスとなったが最終的には観念し、2人の身柄は確保された。


トビーはこれまでの異常な行動を反省したものの、夫はすぐに離婚を申請。
そして27か月の実刑が言い渡された。
一方ジョンは終身刑からさらに10年が足され、より警備の厳しい刑務所へ送られることになった。


そんなトビーは事件から10年たった現在、新たなパートナーと再婚。
さらに囚人の社会復帰を目指すNPO法人を設立し活動している。

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