放送内容

2016年3月30日 ON AIR

世界にはこんな症状と闘っている子どもたちがいる

インドの首都ニューデリーから 飛行機で3時間の場所にあるトリプラ州アガルタラ。
そこからさらに、車で2時間かけて向かったのはジラニアという村で
ある病気と命がけの闘いをした少女がいる。


ルーナ・ベクムちゃん、現在4歳。
1歳6か月のときのルーナちゃんは頭が大きく膨れ上がっていた。
頭が大きすぎるために常に寝たきりの状態。
少女の身に 一体何が起きていたのか。


"頭が大きく膨れ上がる病"


生まれた直後は 特に変わった様子はなかった
しかし 生後3か月を過ぎた頃から頭が大きくなってきたという。
貧しかったため 治療を受けられなかった彼女の頭は、
1年半で大きく膨れ上がってしまった。


20160330_06_02.png


彼女を苦しめていたのは水頭症という病気だった。
これは 脳の中にある脳髄液が溜まり 脳を圧迫する疾患。


本来脳髄液は 脳室内で生産され 脳全体を循環し 体内に吸収されるが
何らかの原因で過剰に生産されたり、吸収されづらくなる場合や、
腫瘍などで流れが詰まったりすると 脳室が大きくなる。


日本でも珍しい疾患ではなく生まれて来た子どものおよそ1000人に1人が
水頭症だと言われている。


通常、水頭症には脳室から管を通し 腹部や心臓に 溜まった脳髄液を流していく
「シャント術」という治療法がある。
もし 早期に治療を受けていれば ルーナちゃんの頭部もここまで大きくなることは
なかったと思われた。


"国境を越えた寄付で7度の手術"


2013年、そんな少女に転機が訪れた。
ルーナちゃんの現状をメディアが報じると国を越えて寄付が集まったのだ。


さらに ニューデリーの病院が無償で手術をすると申し出た。
こうして 2013年5月21日に世界が注目する中、ルーナちゃんの手術が始まった。


彼女の場合 脳髄液があまりにも溜まりすぎていたため一時的に体の外に排出。
一度に急激に脳髄液を抜くと脱水症状を引き起こす可能性があるので、
10日間かけてゆっくり抜き取ることになった。


すると ルーナちゃんの頭はでこぼこの状態に。
乳児の場合 頭蓋骨は柔らかく まだ固まっていない上、頭頂部に隙間があるため
脳室の拡大に伴い 頭蓋骨が開いていたのだ。


そこで包帯を用いて 頭蓋骨を締めつけ 閉じる治療が行われた。
その後 長期的な治療法として、腹部に脳髄液を流す シャント術と
頭蓋骨の形成手術が行われた。


こうして行なわれた手術は合計7回。
その結果、94センチもあったルーナちゃんの頭は通常のサイズまで小さくなった。


手術から2年半。4歳になったルーナちゃんには家に遊びにくる友達もできた。
頭に残る傷痕は 7回もの手術と闘った証。


長い間圧迫されていた脳は相当なダメージを受けていたと思われたが、
父親に支えられながらだが おすわりができるようになった。
そして 会話はまだ無理だが 全身の動きで感情を表し声を発することも。


支援者のおかげもあって その後も病院に通い経過を見ているという
小さな成長は 両親にとって希望の感じる嬉しい一歩。
あの絶望的な状態からここまで成長した彼女は、家族に愛されながら
すくすくと大きく育っている。

バックナンバー一覧