2008年、アメリカ・ペンシルベニア州。
人口1100人の小さな町の教会の牧師、アーサー・バートン・シャーマーは
多くの人に信頼されている町の名士だった。

"謎の事件が家族を襲う"

そんな彼の教会には週末になると必ずやってくる家族がいた。
大工をしている夫のジョー・ムサンテと妻のシンディ、娘のサマンサ。
いつもこの3人は家族揃って教会を訪れていた。

ある日、ジョーはシャーマーから古くなった教会の修繕を依頼された。
シャーマーを心から尊敬していたジョーは喜んでこの依頼を引き受けた。
しかし、この事で家族に悲劇が降りかかる事となる。

2008年10月28日。
夫のジョーが教会の牧師の部屋で銃により頭部を撃たれた状態で死んでいた。
銃はジョーの手に握られている。自殺なのかそれとも他殺なのか？

突然のジョーの死に落胆する妻のシンディと娘のサマンサ。
誰かに恨まれるようなことはなかった。
牧師のシャーマーも心当たりがないという。

状況から自殺の線が濃厚として捜査が進められていた。
しかし、それを疑う人物が現れた。娘のサマンサだった。

サマンサによると、父は牧師のシャーマーに殺されたという。
警察はそんなサマンサの言葉を信じられなかった。

シャーマーは町でも信頼のおける人物。
なのに、なぜサマンサは彼を疑うのか？

"聖職者を疑う娘"

実はサマンサ、父が亡くなる数日前にシャーマーと母であるシンディが
2人でいるところを目撃していた。
嫌な予感がしたサマンサは、隙を見て母親の携帯電話をこっそり見た。
するとそこには2人のただならぬ関係を示すメールがあった。

これは聖職者としてあるまじき行為。
そしてその関係を父のジョーも教会の内装工事をしている時に知ってしまったのだ。

愛する妻と尊敬する聖職者に裏切られたジョーは妻を問いただす。
怒りが収まらないジョーは家にあった銃を持って教会へと向かった。

そしてなぜかジョーはそのまま死んでしまっていたのだ。
きっと、父の死にはシャーマーが関係している。サマンサには確信があった。

警察が信じてくれない以上、自分で動くしかなかった。
まず、教会の人に聞き込みを始めた。

聞き込みをしていると、シャーマーの妻が3か月前に自動車事故で頭を強く打って
亡くなっていた事、さらにその前の妻も事故で亡くなっていたことが分かった。

シャーマーの周りで次々と人が死んでいる。
さらにサマンサはシャーマーが以前いた教会にも足を運んだ。
そこで最初の妻は階段から落ちた際に頭を強く打って亡くなっていたことが判明した。

2人とも頭を強く打っての事故死。これは偶然なのか？
そんな中、家に帰ると段ボール一杯の荷物があった。
母シンディに尋ねると、それはシャーマーの荷物で、これから一緒に暮らすのだという。

まだシャーマーに夢中の母親にサマンサは愕然とした。
どれだけ説得しても母親は聞く耳を持たない。こうしてサマンサはシャーマーと
同居することになってしまった。

次の被害者は母親かもしれない。
そう思ったサマンサの心配をよそに、母シンディはシャーマーと結婚すると言い出した。

このままでは母親も殺されてしまう。
サマンサは必死の思いで警察に再調査を依頼。悲痛の叫びに警察もようやく重い腰を上げた。

"警察の捜査で新事実が発覚する"

まずはシャーマーに事件当時のアリバイを確認。
シャーマーはジョーが銃を持って向かったことをシンディから聞き、
モーテルへ避難したという。その時のレシートも持っていた。

続いて2人目の妻の事故について調べ始めた。
自動車事故だったが運転していたのはシャーマーだった。
飛び出した鹿をよけようとハンドルを切り木にぶつかってしまったという。
妻は頭を強く打って死亡。しかしその時の妻の致命傷は後頭部だったことが分かった。
そして検死はシャーマーが拒否しすぐに火葬をしたという点も疑惑が残る。

さらに木にぶつかったという証言だったが当時の写真を見直すと
それほどスピードが出ていないことも分かった。
牧師であるシャーマーの証言だから嘘はないという思い込みが真実を捻じ曲げていたのだ。

そしてシャーマーに捜査の目が向けられることに。
さっそく警察は教会の家宅捜索に踏み切った。
ガレージを調べると2番目の妻の血液が見つかった。
つまり、2番目の妻はガレージで殺されたのち自動車事故に見せかけていたのだ。

最初の妻も当時は階段からの転落死という事だったが、
実際は後頭部以外の箇所に骨折は無く疑惑の残るものだった。
この時も牧師という立場が信用され検死の報告が無視されていたことが判明した。

2人の妻の後頭部の損傷具合はほぼ同じで同一犯の犯行であるとして
シャーマーは2人の妻の殺害容疑で起訴された。

"ついに逮捕された聖職者。そして..."

実はシャーマー、悩み相談に来た女性に対し牧師の立場を利用し関係をせまっていた。
それが最初の妻にバレてしまい離婚を迫られた。

牧師という仕事上、不貞行為での離婚はできない。
そこでシャーマーは事故に見せかけて最初の妻を鈍器で殴り殺害。

悲劇の夫を装いながら牧師の立場を利用し犯行をひた隠しにしていた。
2番目の妻も同様。シンディとの関係が深くなるにつれ妻の存在が邪魔になり
同じく後頭部を鈍器で殴り殺害。その後、交通事故に見せかけた。

シャーマーは1人目の妻殺害に対し、20年～40年の懲役刑。
2人目の妻殺害に対しては終身刑が言い渡された。

しかし事件発覚のきっかけとなったサマンサの父、ジョーの謎の死は自殺と断定された。
もしそうだったとすれば、愛する妻と尊敬する牧師に裏切られたことがショックだったに
違いない。サマンサはそんな父の気持ちを考え涙した。

大きな事件が明るみになったが、母シンディは今でもシャーマーの無実を信じているという。