嫉妬に狂ったママ友
1983年、アメリカ・テキサス州 チャンネルビュー。
夫と離婚したワンダ・ワイドナーは8歳になる長男のシェーン、
5歳の長女のシャーナと共にこの街へ引っ越してきた。
元夫から得た慰謝料で家を買い、二人の子どもとの新しい生活。
しかし、この街での生活が家族の運命を大きく変えることになる。
"意気投合する二つの家族"
ワンダの家の隣にはヴァ―ナ・ヒースと娘のアンバーが暮らしていた。
アンバーはシャーナと同じ5歳。
娘たちがよく遊ぶようになったこともあり、ワンダとヴァ―ナもすぐに仲良くなった。
ヴァーナは高校時代、チアリーディングチームのリーダー的な存在だった。
チアリーディングはアメリカンフットボールなどの応援に欠かせない花形。
特にアメフトの盛んなテキサス州はチアリーディングの経歴が大きなステイタスとなり、
交流も広がるため玉の輿にも乗りやすくセレブへの近道というイメージもあった。
そんなヴァーナも地元の資産家と結婚。裕福な生活を送っていた。
一方でワンダは小さいころからチアリーダーになる事を夢見ていた。
しかし、厳格な父親に猛反対され諦めざるを得なかった。
そんなこともあり、ワンダは隣人のヴァーナに触発され、娘のシャーナにチアリーダーの
ユニフォームを買い与えた。いつの間にか自分の夢を娘に託すようになっていったのだ。
ある日、チアリーディングに必要なダンスのスキルを学ばせようと
近くのダンス教室を訪れた。
シャーナをここに通わせ英才教育を受けさせればチアリーダーの夢へと
近づくことが出来る。
教室を訪れるとワンダは驚いた。そこにはヴァーナがいたのだ。
実はヴァーナ、チアリーダーの経験を生かしてこのダンス教室を経営しており、
もちろんヴァーナの娘、アンバーもこの教室に通っていた。
アンバーも小さいころからこの教室でダンスを学び、チアリーダーになるのが目標だった。
シャーナとアンバーは地元の小学校に通い、子ども同士で親友の間柄。
そしてダンスのレッスンに励むよきライバルとなっていた。
ワンダはそんな娘の手助けになればと、ダンスのレッスン時に娘の宿題をやっていた。
いけないとわかっていながらも、どうしても娘にはダンスを優先させてあげたかった。
ワンダはシャーナをチアリーダーにする事に人生を懸けるようになっていく。
"少しずつ崩れていく関係"
ある日、地元のアメフトチームのチアリーダー募集があった。
無名のチームだが、チアリーディングのステップアップにはもってこいの場所。
そういう事もあり地元の多くの人が参加した。
もちろんワンダとヴァーナもそこにはいた。
チアリーディングに選ばれる条件は父母によるボランティアの貢献度。
キャンディを多くの人に売った親子が優遇されるというルールだった。
アメリカではよくあることだった。
シャーナをチアリーダーにすることが出来るかもしれない。
ワンダは友達や仲間たちにキャンディを売りまくった。
一方でヴァーナはキャンディを売ることはせず、財力にものを言わせ多額の寄付をした。
選ばれたのは多額の寄付をしたヴァーナの娘、アンバーだった。
その後、行く先々のオーディションでも選ばれるのはアンバー。
財力がものを言い、アンバーは勝ち続けた。
スポットライトが当たるのはアンバーばかり。
我が娘にもスポットライトを当ててあげたい。そう考えていたワンダに転機が訪れた。
彼女より20歳も年上の実業家、ハロウェイと出会い、交際が始まったのだ。
そして再婚。ワンダは資産家の夫人となった。
ヴァーナに負けないほどの財力を手に入れたワンダ。
娘をチアリーダーにする夢は次第にエスカレートする。
母であるヴァーナの指導を小さいころから受けていたアンバーは
何に置いてもシャーナの一枚上手を行く。成長してもその差は開くばかりだった。
そこでワンダは自宅ガレージの一部を改装。シャーナ専用の練習場にした。
さらに個人レッスン用のコーチまで雇った。
"我が子の為、強引な行動に出る母親たち"
猛特訓を続けていたシャーナが小学5年生になったころ、
とんでもない情報がワンダの耳に飛び込んできた。
来月、公立のアリス・ジョンソン中学がチアリーダーを一人募集するが、
それが私立からではなく公立の小学校からしか募集しないという情報だった。
シャーナもアンバーも私立の小学校へ通っている。
しかしアリス・ジョンソン中学は同じ公立の小学校からしか募集しないという。
その情報を聞きつけたワンダはすぐに動いた。それは公立小学校への転校。
母親の強引な転校指示にシャーナは了承するしかなかった。
友達に別れを告げる間もなくシャーナは公立小学校へ転校。
そして1か月後、待ちに待ったアリス・ジョンソン中学校の選抜テストの日が訪れた。
シャーナの他にも同じ小学校からチアリーダーを目指す女の子が集まっていた。
そんなライバルたちの中に見慣れた親子がいた。ヴァーナとアンバーだった。
ワンダは目を疑う。私立からは選ばれないと聞いていたのに。
ヴァーナによると、アンバーは校長先生の特別枠が与えられ
選抜テストを受けられるようになったという。
実はヴァーナは校長に嘆願し、もし入学出来た際は多額の寄付金を援助するという
見返りとしてこの特別枠を手に入れていたのだ。
"オーディションで膨れ上がる嫉妬心"
オーディションが始まった。
まずはコーチたちの前でダンスパフォーマンスを行い数人がふるい落とされ、
その後は中学生たちの投票により最終選考者が決定する。
これまでのレッスンによりシャーナの技術は飛躍的にアップしていた。
ワンダは今までの様な結果にはならないと確信していた。
一方でアンバーもミスのない高レベルなパフォーマンスを披露する。
最終的にシャーナとアンバーを含む3人に絞られ、中学生たちの投票へ。
そして合格者が発表された。
選ばれたのは最高得票数172票を獲得したアンバーだった。
ワンダは愕然とした。シャーナのダンスはアンバーに負けてはいない。
実はオーディションの前日、ヴァーナは生徒たちの票を獲得すべく
娘の名前が入ったグッズを中学校内で配布していた。
シャーナの票数は165票。僅差だったことからこのヴァーナの行動が
勝敗を決めたと言ってもよかった。
せっかく娘を転校させてまでチアリーダーになるチャンスを作ったのに。
それをあの親子に潰された。悔しさに打ちひしがれるワンダ。
ワンダはこの悔しさを再びシャーナのレッスンにぶつけた。
日に日にシャーナのレッスンは厳しくなっていく。
1年後、再びチアリーディングチームのオーディションが開始されると
ワンダはシャーナの名前入りのグッズを大量配布した。
しかしワンダの思うように事は進まない。
実はこの年から親の応援合戦のヒートアップが問題となり、グッズの配布はチラシのみ
というルールになっていた。
それを破ってのワンダの行動に学校側はシャーナのオーディション失格を決定。
実はこれ、ヴァーナから学校への通報によって発覚していた。
それを聞いたワンダは怒りに震えた。
なんであの親子はいつもシャーナの成功の邪魔ばかりし続けるのか。
許せない。絶対に許せない。ワンダは怒りで理性を失った。
"理性を失った母親の末路は..."
しばらくしたある日。
ワンダは街の人影のない場所で一人の男と会っていた。
男の名はテリー・ハーパー。ワンダが離婚した元夫の弟で、
ドラッグや武器の所持などで7回の逮捕歴がある男だった。
そんな男にワンダはヴァーナ親子の殺害を依頼する。
我が娘を酷い目に合わせた憎き女たち。ワンダは正常な判断を失っていた。
依頼を受けたテリーは、後日再びワンダと密会した。
改めて殺害依頼を確認するテリー。ワンダの気持ちは変わっていなかった。
テリーは実行に移すと言い、ワンダから手付金として大事にしていた
ダイヤのピアスを受け取った。殺人依頼契約が成立した瞬間だった。
しかし2日後、ワンダの前に現れたのはテリーが準備した殺し屋ではなくなんと警察。
なぜかワンダが殺しの依頼をしていたことを警察は知っていたのだ。
署に連行されたワンダは証拠がないとしらばっくれる。
しかし警察は証拠として、あるテープを取り出した。
そこにはテリーとの密会で話していたことがすべて録音されていた。
テリーは初めから殺害依頼を受けるつもりはなく、
密かに会話をテープに録音し、それを警察に提出していたのだ。
こうして、愛する娘の為に殺人を犯そうとしたワンダは逮捕され、
殺人教唆罪で懲役10年の実刑判決を受けた。
この事件を機に、シャーナはチアリーダーになる夢を諦めた。
一方でアンバーは夢を捨てることなく高校・大学を通じチアリーダーとして活躍した。
事件から25年。ワンダは娘のシャーナと最近になってようやく和解。
ワンダはシャーナの二人の息子の面倒をよく見ているという。