全米が感動!娘の合唱発表会
アメリカ、フロリダ州・クリアウォーター。
ここに出産を間近に控えた夫婦がいた。
夫のトーマス・コッチと妻のロリ。
実は、この夫婦はある障害を抱えていた。
"聴覚に障害を持つ夫婦"
それは先天性による重度の聴覚障害。
難聴にはいくつか種類があり、
夫婦はともに、耳から脳に伝わる神経に障害があり音が歪んだり響いたりする感音性難聴だった。
トーマスは子どものころ、補聴器をつけていたが
言葉が聞き取れず、いじめられることもしばしばあった。
どうせ聞き取れないなら聞こえない方が気が休まるという理由で補聴器を付けなくなった。
そして大人になり選んだ仕事がスキューバダイビングのインストラクター。
海の魅力を聴覚障害者にも伝えたいという思いで資格を取得した。
一方でロリはろう学校へは行かず、健常者と共に過ごしてきた。
すると、唇の動きだけで言葉を理解できるようになった。
その能力を生かし、聴覚障害者と健常者が電話で会話できる通訳の仕事をしていた。
そんな二人は聴覚障害者のコミュニティーで知り合い、結婚。
そして待望の赤ちゃんを授かったのだ。
"子どもへの遺伝を心配する夫婦"
しかし二人には大きな心配があった。
それは自分たちの障害がこれから生まれてくる子どもに遺伝してしまうかもしれない。
夫婦二人とも遺伝による先天性の難聴だった。
そして同じように子どもに遺伝する確率は50%とも言われている。
ロリとトーマスは二人で協力して子育てをしていこうと心に誓った。
そして2008年4月2日、ロリは無事に女の子を出産。
心配していた耳の障害もなく、元気に生まれた二人の子はクレアと名付けられた。
そして夫婦の子育てが始まった。
家ではインターホンが鳴ると部屋でランプが光ったり、
娘が泣きだしたときには、その音に反応して明かりが点灯するなど
音に対する対策が数多くとられていた。
とはいえ、すべてをカバーすることは出来ない。
子どもに何かがあった時、自分は異変に気付くことが出来るだろうか?
親となったトーマスとロリにとって不安な日々が続いた。
"娘が両親に送ったサプライズ"
そんな両親の心配をよそにクレアはすくすくと育っていった。
2歳になると手話を覚え始め、親子でやり取りが出来るように。
一方で、言葉を教えることが出来なかったためロリはトーマスに
クレアを日中は託児所に預けることを提案した。
言葉に触れあえる機会が多くなればとトーマスも了承。
一般的には少し早いがクレアは託児所に預けられることになった。
出来るだけ一緒にいたいが、これも娘のため。
家にいるときは声の出るおもちゃやDVDで言葉に触れさせた。
また、出産前はあまり外に出歩かなかったが、積極的に外出し
クレアに外の世界を見せていった。
クレアは幼稚園に入る頃になると他の子ども達に遅れることなく
言葉を話せるようになった。
そして次第に両親の障害について気にし始めるようになった。
2013年12月。
幼稚園ではクリスマスの合唱発表会が開かれる季節になった。
両親にとって我が子の成長を見ることが出来る楽しみなイベント。
トーマスとロリは娘の歌声は聞こえない。
しかし、クレアの嬉しそうな姿を見るだけで十分だった。
しかしクレア自身は愛するパパとママに自分の歌を聞いてもらいたかった。
そんな時、あるアイデアがひらめいた。
そして合唱発表会の当日。
クレアは多くの園児たちが歌う中で一人だけ手話を交えながら歌った。
時には内容に合わせて表情も豊かになっていく。
トーマスとロリはクレアからのサプライズに感動した。
このクレアの行動は、全米のみならずヨーロッパなど世界中のメディアで取り上げられた。
娘の純粋な思いが世界中を感動に包んだ出来事だった。