いかつい男たちに守られた少女
アメリカ・ミネソタ州にある、人口7000人ほどの小さな町セント・フランシス。
この町に全米で話題となった女子高生がいる。
"誤解から不良たちに襲われる"
その話題のきっかけは今年6月に起きた。
この町に住む高校2年生のシドニー・ディテネンコ(15歳)は、
この日、友達の家に泊まる事になっていた。
親の忠告を守り、外へは出歩かずにいたが、
夜10時を回った頃に友人と名乗る女性が訪ねてきた。
心当たりは全く無かった。
訪ねて来たのは、近所に住むカサンドラという女性とその取り巻きたち。
彼女は地元では有名な不良で、シドニー達も知る存在だった。
迫力に押され、夜の散歩へ連れ出されたシドニー。
15分ほど歩かされ、かなり森の奥まで進んだ時だった。
カサンドラはそこで昨日一緒にいた男性の事について聞いた。
確かにシドニーは昨日の買い物の帰り道にセスという男に声をかけられた。
夜道は危ないからというその強引さに断り切れず、車で送ってもらう事に。
親切にちゃんと家まで送り届けてくれた。だが、この男...カサンドラの彼氏だった。
シドニーを問いつめるカサンドラ。
どれだけ事実を伝えても、カサンドラは聞く耳を持たなかった。
それから数時間。
シドニーの自宅に、泊まりに行った友人の家から電話が。
シドニーが大怪我をしているという連絡だった。
驚いた母親がすぐに友人宅へ向かうとそこには顔を傷だらけにした娘の姿が。
鼻が腫れあがり...唇は痛々しく裂けている。
しかし怪我の理由を聞いてもシドニーは多くを語ろうとはしなかった。
"暴行された動画をSNSにアップ"
翌朝、再び自宅に一本の電話が...
それは、昨日泊まりに行っていた友人の母親からだった。
とんでもない動画があるという。
それは、あの時カサンドラの仲間の一人が撮っていたもの。
その動画が仲間内に送られていたらしい。
映像にはカサンドラが馬乗りになり、シドニーを激しく何度も殴打。
シドニーは、顔をガードするだけで精一杯。すると!
なんと、仲間の女がハサミで髪を切り落した。
まったくの誤解だが、カサンドラの怒りは収まらない。
無抵抗の顔を蹴る。こうして凄惨な暴行の映像は5分にも及んだ。
これはケンカではなく暴行事件。父親は警察署へ通報した。
しかし、警察は一応カサンドラの身柄を拘束したが...
なんと大した取り調べもせず、すぐに釈放してしまった。
あいつらは、何の罪にも問われていない。もしかしたら家まで来て、また...。
そう思うとシドニーはますます、家から出られなくなってしまった。
もう警察はあてにならない...そして母親は、暴行動画をSNSにアップして
色んな人に見てもらおうと言い出した。
父は、そんなことをしたらシドニーがまた襲われてしまうかもしれない、と心配した。
確かに、シドニーを危険な目に遭わせる事になるかもしれない。
だが、母親はどうしても許せなかった。
愛する娘に奴らがどれだけ酷い事をしたのか、みんなに動画を見てもらった方がより伝わると考えたのだ。
塞ぎがちだったシドニーも母親の意見に賛同した。
こうして母親はSNSに動画を投稿。
この動画は全米に拡散した。そして、多くの好意的なメッセージが寄せられる一方で、
何もしない警察に対しても非難が殺到した。
そんな声を受け、ようやく警察は本格的な捜査を開始。
カサンドラと仲間の数人は逮捕された。
しかし、いつ仕返しされるかもしれない...シドニーはまだそんな恐怖に苛まれていた。
"救世主はいかついバイク集団"
事件から5日後。自宅の外が騒がしい。
窓を開けるとなんと自宅前にものすごい数のバイクが押しかけてきた!
革ジャンに身を包んだ、いかついバイク軍団が総勢150人も。
まさか、カサンドラの仲間達が報復に!?
実はこの集団「アメリカン・レジョン」という軍人や退役軍人からなるバイクチーム。
この一団を率いる人物は...バイクチームのリーダー、ブランドン・マウ。
実は彼には、27年前に妹が不良達の事件に巻き込まれ命を落とすという
悲しい出来事があった。
以来、この町の平和を強く願うようになり...大人になってバイクチームを結成。
貧しい子どもへの募金や、パトロールなどを行い治安維持に力を尽くしていた。
そんな彼が仲間達に集合をかけ...なんと150人もの男達が。
これは、「シドニーをいじめる奴らは俺たちが黙っていないぞ!」という無言のアピール!
集まったのは、皆軍人や退役軍人のいかつい強面ばかり。
そんな男達から、シドニーに素敵なプレゼント。それは...バイクのヘルメット。
更に、近所の美容室からは無残に切られた髪を無料で整えるチケット。
他にも護身教室の無料レッスンやTシャツなどなど...
メンバーが持ち寄ったプレゼントが次々にシドニーに手渡された。
シドニーをいじめから守るため、総勢150人の決起集会。
この日のツーリングは彼女がリーダー。バイクの先頭はもちろんシドニー。
自分を守ってくれる人がいる。ようやくシドニーに、笑顔が戻った。
この出来事から4か月。
当時の事を振り返ってシドニーは、ブランドンの一言が本当に心強かったと語る。
そしてシドニーの父親は、バイク軍団に影響されバイクを購入。
だが、まだ免許は持っていないため現在講習中。
いつかシドニーを乗せてツーリングに行くのが夢だという。
そしてバイクチームのリーダー、ブランドン・マウは
その後、複数のバイクチームが団結し「シドニーの天使」というチームを新たに結成。
定期的に集会を行い、いじめ撲滅活動に更に力を注いでいる。