元気な患者が次々死んだ魔の病院
1995年、アメリカ・マサチューセッツ州ノーサンプトン。
この医療センターで不気味な事件が起きた。
"死ぬはずのない患者の不可解な死"
8月のある夜、病棟に緊急を知らせるブザーが鳴り響いた。
それは患者が急変した合図。医師が病室に駆けつけると
スタンレーという患者の心拍が停止していた。
医師は必死の処置を施したが、再び心臓が動きだすことはなく、死亡が確認された。
スタンレーは糖尿病により、右足切断の手術を受けていたが、回復は順調だった。
不可解な死の4か月後。
ヘンリーと言う患者の血圧が突然上昇。看護師のクリスティンが緊急コールした。
医師はおどろいた。なぜなら、ヘンリーは風邪をこじらせて入院していただけ。
しかもすでに回復し次の日に退院が決まっていたその夜に心停止となったのだ。
35歳とまだ若かった患者は何度か持ち直しはしたが、
心停止により死亡した。
さらにその10日後。
足のできものを取り除くために入院していただけのフランシスという患者が
同じ症状に陥った。持病もなく、こんな状態になることはあり得ない。
再び心臓は動きだしたが、この時看護師のジョンはある疑いを持った。
彼は信頼する同僚のキャシーだけにその疑念を打ち明けた。
誰かが大量の薬を投与したのではないか?
しかもその犯人は看護師のクリスティンではないのか?
という疑念だった。
クリスティンは、どんな事態にも的確な判断を下す優秀な看護師。
医師からの信頼も厚く、看護師たちからも頼りにされている。
看護チームのリーダー的存在だった。
確かに彼女は、3件の患者急変の場すべてに居合わせてはいた。
だが何の証拠があるわけでもない。
しかし、年が明けて1月26日、
今度はトーマス・キャラハンという患者が同じ症状で緊急コール。
その夜の担当もクリスティンだった。
心拍数が急激に上がったのち、心停止。これまでの3件と同じ症状だった。
彼女への疑いはますます強くなる...。
その後も、クリスティンが担当の夜に患者の容体が急変する。
"優秀だった看護師のゆがんだ愛"
噂は広がり、同僚達は密かに彼女を「死の天使」と呼ぶようになったが、
もし本当に彼女だったとして、いったいなぜそんなことをする必要が
あるのか?その理由が全く思い当たらない。
それに、クリスティンに特に変わった様子はみられなかった。
これまで通り真面目に出勤し、同僚との連続死についての話題にも
特に過敏になっている様子もなかった。
しかしその後もクリスティンからの連絡で患者が命の危機となる。
警察が動きだし、クリスティンの事情聴取が行われたが、
本人は犯行を否定。証拠と言えるものはなく、何より動機が分からない。
クリスティンには夫がいたが、一連の事件がはじまったころ
夫婦仲は冷えきっていた。
実は彼女は、警備員のジェームスに心ひかれていた。
だが、同じ病院にいるのに、会える時間はごくわずか。
彼に会いたくなる。そんな時だった。
クリスティンは仕事中でも彼に会える禁断の方法を思いついてしまう。
患者の容体が急変すればいい、そうすれば警備員の彼はかけつけてくる。
彼に会いたい、ただそれだけのために、患者の点滴に薬を入れた。
一度やってしまうと、歯止めがきかなくなった。
これが恐るべき殺人の理由だった。
2人の関係に、捜査の手が及ぶまで時間はかからなかった。
患者を殺害し続けたモンスター看護師・クリスティンは、明らかになっただけでも
4人の殺人罪、3人の殺人未遂で、終身刑を言い渡された。
しかし、実際に殺害された患者は数十人にもなると思われている。