愛する妻のためにエルビスのモノマネ
ひとりの少年が恋をした。それは3歳年上の女の子。
ずっと片思いだったが、それから21年後...偶然2人は再会した。
そして結婚を考えたその時、あまりに残酷な宣告を受ける。
その時、男性のとった行動にアメリカ中が涙した。
"エルビスのモノマネで町の人気者に"
1997年、アメリカ・バーモント州。
15歳のマークは近所に住む3歳年上のリサに恋していた。
彼にとっては高嶺の花。思いを打ち明ける事なんてできなかった。
そんな時...高校を卒業したリサは他の州の大学へ進学。憧れの女性は町からいなくなった。
マークの淡い恋は、終わってしまった。
その後、高校に進学したマークにある転機が。
この日は文化祭。するとあるクラスメイトから促されプレスリーのモノマネを披露した。
驚きのクオリティに周囲は大ウケだった。
この日から学校中の人気者になり、小さい街での出来事ではあったが
マークはなんとレコードデビューまで果たした。
やがて、マークは軍に入隊するため町を出た。
そして28歳で結婚。男の子を一人もうけるがすぐに離婚。
息子を引き取り、昔からの夢を叶えるためこの町に戻ってきた。
その夢とは...歌手。
高校時代、多くの女性を虜にした美声は瞬く間に地元のイベントや祭り、
結婚式などで引っ張り凧に。180kgに増えた巨体を揺らしステージをこなしていく。
そしてマークが37歳になった1999年、人生を大きく変える出来事が起きる。
この日もステージを終えると、1人の女性が声を掛けてきた。
聞き覚えのある声...なんとあの憧れ続けたリサだった。
"憧れの女性との交際がスタート"
21年ぶりの再会。
実はリサも音楽活動を行っていて、たまたま同じイベントに出演する予定だったのだ。
しかも彼女も離婚を経験して、一人で娘を育てていた。
やがて、2人は食事に行くようになり、互いの家族と一緒に過ごすようになった。
そんな中でリサはマークが昔、この町のプレスリーと呼ばれていたことを知った。
もちろん当時のプレスリーのことを大学進学で別の州にいたリサは知らない。
リサが昔の友人に会いマークの話しが出ると、皆がプレスリーの話をする。
そして必ずと言っていいほど、そのあとにマークの人柄の良さを褒めていた。
確かにマークがその場にいると空気が一気に明るくなる。
いつも笑顔で誰にでも同じ態度で接するマーク。リサもそんな彼にすっかり惹かれていた。
こうして交際は始まった。
時は流れてこの関係が14年以上も続いた2013年。
マークの息子は既に20歳。リサの娘も17歳。
娘の大学も決まり、祝いをしていると子どもたちから幸せになって貰いたいと
結婚を促された二人。ついにマークはリサにプロポーズをした。
"幸せな二人に忍び寄る影"
結婚式を1か月後の5月24日に控えたころ、リサは咳に悩まされていた。
咳止めの薬を飲んだが、効果はない。病院で肺炎と診断された。
しばらく歌の仕事は休むことになった。抗生物質が処方されそれを飲んでいた。
だが、3週間経っても症状は治らない。
そこで設備の整った病院で精密検査を受けた。
そんな中、2014年5月24日、2人は結婚式を挙げた。
初恋から40年、マークの夢は叶ったのだ。
しかし、わずか3日で幸せな2人にある不幸が襲い掛かる。
検査結果を聞くため、病院を訪れた2人は思いもしないことを宣告された。
精密検査の結果、リサの肺にガンが見つかったのだ。
さらに肋骨にも転移が確認され、すでにステージは4に達していた
肺ガンのステージ4はガンの大きさにかかわらず、脳、骨、肝臓などの臓器に
転移している状態。5年生存率は一桁台にまで下がる。
マークはもちろんそんな宣告を受け止めることが出来なかった。
しかしその後もいくつもの病院をまわったが、絶望的な意見がほとんど。
受け入れられないマークにリサは言った。
現実を受け止めて病気と闘いたいと。
こうしてリサとマークはガンと闘う事を決意した。
抗ガン剤治療は副作用をともなう。
しかし、治療を始めてしばらく経つと、体調は徐々に良くなってきた。
唄う事は出来ないが、子ども相手のピアノ教室も始めた。
ところが治療を始めて1年半が経過した頃、再び体調が悪化。
咳き込む事が多くなり、体の痛みが強くなった。
やがて、医師にもう手の施し様がない状態だと告げられた。
リサは残り少ない命の中でやり残したことについて考えた。
そこでふと一つだけ後悔している事を思い出した。
皆がよく言うマークがやったプレスリーのモノマネ。あれをまだ見ていない。
リサは一度でいいからマークのプレスリーを見てみたいと思うようになった。
リサの最後の希望を聞いたマークは、言葉を飲み込んだ。
みんなが知っているプレスリーのモノマネは現在の180kgもある身体では不可能。
しかし愛するリサの為、マークはある決心をした。
"もう一度エルビスになる為に一念発起!"
それからのマークは、翌朝から4時に起床。
そして食生活を改めた。口にするのは野菜とフルーツのみ。
そして5時から7時までスポーツジムでウエートトレーニング。
もちろん、仕事も全力でパフォーマンスを行い、仕事帰りにまたジムに通う!
そんな中、医師に言われたリサの余命は過ぎようとしていた。
1日でも早くプレスリーができる体型に戻さなければ...
マークはイベント会場でも一切食事に口をつけなくなり...。
ジムでのトレーニング以外にも時間を見つけてはランニング。
どうしても辛い時はこう考えた。
必死になって厳しい減量をすれば、神様がリサの病気を治してくれるのでは...、
自分が苦しめば苦しむ程、ギフトを与えてくれるんじゃないか...。
そんなことを考えながら自分の体をいじめ抜いた。
こうして8か月。マークの体重は100キロに!なんと80キロの減量に成功した。
そして今年の10月1日。リサさんとの約束はついに実現した。
マークがステージに登場。
この日のためにプレスリー本人の衣装を作っていたカナダの店に
白いジャンプスーツを特別注文。
30年前、リサさんが見られなかったステージを完全再現するために。
そして最後の曲。マークはリサをステージに上げ、
リサがもっとも好きな曲「サレンダー」を熱唱した。
このステージから2か月。
仰天スタッフはバーモント州の自宅を訪ねた。
ガンの宣告から2年と7か月。
診断当初は余命2年とも言われたが、リサは元気そう。
いつかマークとデュエットすることを目標に今もガンと闘い続けている。
そしてマークはこれからもプレスリーのショーを続けるという。
もちろんリサと一緒に。