放送内容

2017年1月25日 ON AIR

凍死寸前の幼児 奇跡の復活

2001年2月23日。カナダ、エドモントン。


母親のレイラは2人の娘を連れ、幼なじみの家に泊まりに出かけた。
その日は、気温はマイナス25℃を下回る今季一番の冷え込み。


数年ぶりの再会。話は尽きず、ふと気が付くと夜11時になっていた。
寝室の暖房は止まる事があるため、リビングの暖房が効くようドアを開けて就寝。


しかし、部屋を温めるために開けたこのドアが、まさかの事態を引き起こす!


"マイナス25℃の中、凍りついた娘"


予報通り、外はマイナス25℃に。
午前3時半...毎日、二女・エリカがミルクを欲しがり、ぐずる時間だった。


母レイラはいつもならぐずるエリカが大人しい事に違和感を覚え
エリカに触れようとすると...いない。


開けっ放しのドア。まさか...!
小さな体。どこかにはまって抜け出せなくなったのかもしれない。


しかし、どこにもいない。
残るは、裏口に通じる廊下だけ。
すると...なんと裏口のドアが開いていた。


胸騒ぎを覚えながら...レイラは外へ。
すると...ピンクのシャツが倒れていた。
顔は凍り、足の指先は真っ黒に...息も脈も感じられなかった。


まるで氷のように冷えた娘。
その場にあったブランケットでくるみ、必死で息を吹き込んだ。
しかし何の変化もない。


10分後...救急車が到着。
すぐにエリカの容体が確認された。


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実はこの時、エリカの心臓は心室細動を起こしていた。
つまり、鼓動しているのではなく、心臓がけいれんしている状態。
このままでは、完全に止まってしまう。


母レイラも救急車へ乗り込もうとした。
しかし、話しかけてきたのは警察。
なんと...わが子を凍死寸前にした「児童虐待」の疑いがかけられ、連行されてしまった。


"必死の蘇生処置。奇跡は起こるのか?"


一方、エリカは、心肺蘇生処置を受けながら病院へ。
担当したのは、小児救急救命診療科のアラン・ド・ケアン医師のチーム。


発見から、すでに30分が経過していた。
体温は16℃。状況はかなり厳しい。


人は、代謝で生まれた熱を、血液で全身に送ることで、36℃前後の体温を保っている。
しかし、エリカは心臓のポンプ機能が停止。
血流が止まり、マイナス25℃の外気にさらされたため、
体温は16℃まで低下。低体温症の状態だった。


体温16℃のエリカは、仮死状態。蘇生の可能性はゼロに近い。
しかし...なんと微弱ながら、エリカの心臓は鼓動を始めたのだ。


アラン医師はすかさず看護師に体温管理装置の用意をさせた。
体温管理装置とは、体の上にかけたり体の下に敷かれたブランケットに
温風を吹き込んで患者を温める、加温装置の事。
エリカは、わずかでも心拍が戻り、血流が回復したため、この方法が有効に。


その頃、母レイラは警察にいた。
エリカのそばにいたいのに...虐待について追及されていた


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体温管理装置で温め始めて、約1時間30分後。
体温は回復してきたが、心拍数がまだ上がらない。
体温回復のショックで再び心室細動に戻る可能性もあるため、油断はできない。


一方、エリカが運ばれて2時間後、母レイラは「虐待疑惑」から解放され、病院へ。
警察の調査の結果、友人宅の裏口の鍵は以前から壊れており、
そのドアからエリカが1人で外へ出て行ってしまった...と判断されたのだ。


"体温16℃からの奇跡の蘇生"


そして、治療開始から3時間を過ぎた頃。
脈、呼吸、体温...エリカの生体反応が安定し始めたのだ。
それは、体温16℃からの蘇生だった。


その後、脳への影響が調べられたが、問題はなく、
足の指は、感覚が麻痺するなどの後遺症があったが、すくすくと成長した。


アラン医師によると、エリカが奇跡的に助かった理由は、
シャツとおむつだけだった事と、マイナス25℃という寒さだという。
薄着で足も露出していた事で急激に体温が低下し、酸素の消費量が抑えられたため、
臓器が良い状態で維持できたのだという。


奇跡的な蘇生を経験し、現在17歳になったエリカ。
普通に歩けるように見えるが、少し左足首が外を向いている。
歩行には問題ないというが、やはり後遺症はあった。


現在の彼女の夢は獣医になる事だという。
自分が助けてもらったから、命を救う仕事がしたいという。


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マイナス25℃から生還した奇跡の赤ちゃん。
今は、夢に向かって歩いている。

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