マリマール来日
世界中に発信しながら
病気と闘い、キレイになりたいと願う女性、マリマール・キロアさん。
以前仰天ニュースでも取り上げた彼女が、昨年12月来日した。
"生まれながら「嚢胞」と戦う女性"
彼女はある病気のために、長年苦しんできた。
声を出すこともできず、会話は手話で行っている。
生まれたとき、彼女の顔はすでに大きくはれ上がっていた。
その原因は嚢胞性ヒグローマという病。
全身をめぐるリンパ管の形成異常で生じる病で、水風船のような「嚢胞」が集まって
塊をつくる。
発生する場所はリンパ腺の集中する首の辺りが多いが、全身どこにでもできる可能性がある。
大きさも数ミリから数センチのものまで様々。
中身はリンパ液が主体で悪性の腫瘍ではなく、他の健康な組織の害になるわけではない。
出来た場所や大きさによっては、手術で取り除いたり、薬で小さくしていくことも可能。
しかしマリマールは 口や喉の奥深くにできた嚢胞が気道や食道を圧迫していた。
完全にふさがっているわけではないが、このままでは呼吸や栄養補給も十分にできない。
生後6か月の時にノドに穴をあけ、器具を挿入。ここから呼吸する事となった。
同時に、腹にも穴があけられ、直接胃に栄養をとるよう処置がされた。
現在に至るまで、彼女はそうやって命を繋いできた。専用の栄養剤を1度に1~2缶。
これを1日4、5回に分けて摂取している。
見た目をからかわれ、"猿"と呼ばれた辛い日々。
思春期を迎えると...あることに強いあこがれを持った。
それは、メイクをすること。
やり始めると夢中になっていき、メイクする様子を動画投稿サイトにアップした。
こんな私でも、キレイになりたい...そして、頑張ればキレイになれる...。
動画はたちまちネットで話題となり、多くのコメントが寄せられた。
その後も動画投稿を続け、顔にコンプレックスを持っていた彼女は、
今や世界中で、カリスマ的人気を誇っている。
"日本で検査のため来日"
そんな彼女が、家族と共に来日。
その理由は日本の医療機関に良くなる可能性があるかみてもらうためだった。
初めての日本に、興奮気味の彼女。
明日の検査に備え、この日は早めに休むことに。
そして翌日...向かったのは東京・中野にある東京警察病院。
診察をしてくれるのは、先天的に、あるいは事故や病気で損なわれてしまった
『見た目』を直す形成外科が専門の秋月種高医師。
秋月先生は特に頭蓋顎顔面領域のスペシャリストとして知られている。
まずは顔の状態をよく見てみる。すると、秋月先生はあることに気づいた。
顔の側面、耳の下からアゴにかけて何度も治療した形跡があった。
母親によると、これまでに18回手術を受けているとのこと。
だが、除去できるのはいつもごくわずかで毎回ひどい痛みも残ったという。
彼女の嚢胞はいまどんな状態なのか?まずMRI検査。
続いてCTスキャン。食道や気道の状態が分かる。
最後に顔の骨を調べるためレントゲンと、1時間ほどかけて検査は終了。
2日後、再び東京警察病院を訪れ、検査結果を聞く。
首を輪切りにしたCT写真をみてみると、食道は周囲にできた嚢胞に圧迫され、
かなり細くなっている。
これでは水分は通るが固形物は通らない。
さらに口の奥からのどの入口にかけての腫れかたが大きく、ほとんど通り道がない状態。
そのため鼻や口からの呼吸もできないのだ。
さらにMRIの画像には、顔の下部から喉にかけて、まだかなりの嚢胞があることが
映し出されていた。
彼女は今より良くなる可能性はあるのだろうか?
体表近くの嚢胞であれば、比較的処置は容易。
しかし彼女の喉の嚢胞は奥深くまで及んでいて、血管や神経を複雑に巻き込んでいる。
無理に除去しようとすると、より重大な障害を引き起こしかねない。
しかし秋月先生によると、見た目に関しては骨をちょっと削ったり
皮膚の下にある軟部組織、まだ残っている腫瘍によって大きいところを小さくすれば、
見た目の改善は、まだまだ十分できるという。
それを聞いてマリマールは、「よく考えてみたい」と語った。
自分の状態がしっかり理解できたようだ。
マリマールの帰国からしばらくして秋月先生が手術をした場合のシミュレーション画像を作成してくれた。
3回ほどにわけて処置すれば、ある程度まで顔を小さくすることが可能だという。
手術をして顔が小さくなった画像を見たマリマールは、
「不思議だわ、ずっとこの顔で生きてきたので、この写真は私じゃないみたいな気もします」と語った。
どんな困難にも前向きに生きてきた彼女。これからの活躍に期待したい。