謎の男に操られ同級生を刺した少女達
2014年5月31日。アメリカで、ある衝撃的な事件が起きた。
ウィスコンシン州の森で、一人の少女が19か所も刺され、瀕死の状態で発見された。
少女は、幸いにも一命を取り留めたのだが...。
数時間後に逮捕されたのは、被害者の同級生2人。共にわずか12歳。
この残忍な犯行は、アメリカ中を震え上がらせた。
逮捕後、2人の少女は、取り調べで驚くべき事を口にしたのだ。
少女M「やらなければ彼に何かされてしまうと思ったの」
少女達が口にしたのは「スレンダーマン」。
彼女たちが恐ろしい犯行に至ったわけは、信じられないものだった!
"少女たちが夢中になった「スレンダーマン」"
事件の8か月程前のこと。
後に同じ中学校に通い、犯行に及ぶ二人の少女。
周りからは変わり者だと見られ、友達はほとんどいない。
それは、もう一人の少女も同じだった。
クラスでは、からかわれる対象だった。
学校で疎外感のあった2人は、スクールバスで出会い、話すようになった。
お互いどこか似ている。すぐに意気投合した2人。
互いにかけがえのない存在...そんな2人は、密かにあるものに夢中になっていた。
はまっていたのは、いわゆる都市伝説をまとめた、オカルトサイト。
特に心を奪われたのが...『スレンダーマン』だった。
身長は2メートルから3メートルの巨人で、手足が異常に長く、顔はない。
ときに背中からたくさんの触手を伸ばし、子どもをさらうという。
2009年にインターネットサイトに加工画像が投稿されたのが
スレンダーマン伝説の始まりだという。
ネット上では作られたスレンダーマン情報が拡散。
蓄積され...いつしか行動パターンも定着、彼は子どものいるところに現れ誘拐する。
瞬間移動ができ、「プロクシー」と呼ばれる手下がいる。
ネット上で競うように作り上げられる、スレンダーマンの姿。
目撃情報まで相次いだ。
"空想と現実が混ざり合った狂気の殺人計画"
オカルトの世界に、内気で空想好きな2人は魅了された。
2人の絆を強くする、彼の力。
誰にも邪魔されないネットの世界で、少女2人はスレンダーマンにすがるように熱狂し、ともに楽しみ、ともに怖がり、ともに信じるようになる。
架空の怪人だと思っていたはずが、にわかに感じる現実味。
子どもをさらうスレンダーマンが、もしかしたらそばにいるのではないか?
本当のようなウソが、少女の中でウソのような本当に。
そう考えれば、そう思えてしまう世界で2人の少女は、
ますますその男にのめり込んでいった。
彼の存在を信じない人のほうが不思議に思える。
そんな言動が学校ではますますからかわれ、自分だけでなく彼が馬鹿にされたように感じた。
そして思う。みんなを見返したい。
そんなとき、少女たちはある情報を目にした。
自分たちがプロクシーになればいい。
プロクシーとは、スレンダーマンの手下とされている存在。
プロクシーになれば、彼に会える。そうすればみんな信じてくれるはず。
プロクシーになる方法...それはスレンダーマンに自分たちがプロクシーに
ふさわしい存在だと証明すればいい。つまりそれは人を殺すという事だった。
それはもちろん、とんでもないことだとはわかっていた。
それでも周囲を見返したい。スレンダーマンのプロクシーになりたい。
その思いが強い2人は、殺人計画を練り始めた。
2人の考えた計画。それは誕生日に同級生をお泊まり会に誘い、狙うというもの。
危険な秘密を共有することで、ますます親友とつながった気がした。
"都市伝説に魅了された少女たちの末路は?"
準備は着々と進んでいた。
恐ろしい計画のターゲットになったのは、片方の少女の幼なじみ。
もう一人の少女とも顔見知りだった。
そして...犯行は行われた。
少女達はこの日、近くの森で遊ぶ約束をしていた。
かくれんぼのような遊びをして視界をふさぎ、狙うことにした。
木陰に隠れていた同級生を襲い、家から持って来たキッチンナイフで同級生の
全身19か所を刺した。
刺し傷のいくつかは、臓器にまで達する深いものだった。
これで願いが叶う...そう信じて、あてのないスレンダーマンの屋敷に向かったという。
一方、刺された少女は...力を振り絞って、道の近くまで這い出し、
そこを通りかかった男性に発見され、男性は911に通報。
すぐに救急搬送され、一命を取り留めた。
心臓付近の刺し傷は、あと1mmずれていたら命の危険もあったという。
その後すぐに、少女たち2人は歩いているところを発見され逮捕されることとなった。
わずか12歳の少女達による残忍な犯行は全米に衝撃を与えた。
主犯となった少女の両親はテレビ番組のインタビューで、
中学生の娘がスレンダーマンを信じているなんて思わなかった、と語った。
空想の怪人に取り憑かれ、友人を刺した2人の少女達。
しかしスレンダーマンは少女達に何もしてくれなかった。
事件から3年が経過したが、まだ裁判は始まっていない。
ウィスコンシン州の州法は、第一級殺人未遂罪の場合、10歳以上で成人と同じく扱われ、有罪となれば、最高65年の禁固刑となる。
弁護側は少年法で裁かれるべきだと主張。
この夏、裁判が始まる予定だ。