放送内容

2017年4月18日 ON AIR

全米大騒動 悲劇の物語の裏に大ウソ!

ある大学フットボールのスター選手がいた。
シーズンのさなか、彼は最愛の人を失うことに。


その悲しみに耐え、懸命にプレーする姿は感動を呼び、国民的スターになっていく。
だが、あるスクープがきっかけで、状況は一転した。


"彼女の死に奮起したチームは連勝街道!"


2012年9月、アメリカ・インディアナ州サウスベンド。
この町にあるノートルダム大学はアメリカンフットボールの名門校として知られている。


アメリカでは、大学フットボールの人気が高い。
記者も熱心に取材に訪れる。この日もコーチが記者たちに囲まれていた。


コーチはチームの中心選手、マンタイ・テオについてコメントをした。
実は、彼の恋人、リネイさんが白血病を患い一昨日亡くなったという。
そんな彼のためにも次の試合は必ず勝つと語った。
マンタイも彼女の死のショックがあるにもかかわらず彼女のために試合に出るという。


この話は記者たちの胸をひどく打った。
そして翌日。チームメイトはマンタイのために奮起。相手チームを圧倒した。


そしてマンタイ自身も、12ものタックルを決める大活躍!
20対3の圧勝に貢献した。


その後もマンタイを中心にチームは連勝街道を突き進んだ。
チームの快進撃と、若い2人の悲しいラブストーリーは
アメリカ中に報道され、多くの人々の心を動かした。
悲劇のヒーロー、マンタイ・テオはたちまち注目の的となった。


亡くなった彼女、リネイ・ケクーアとマンタイの出会いは2年ほど前。
SNSがきっかけだった。


カリフォルニアの大学生というリネイ。
すぐに意気投合し、毎晩のように電話するようになり、自然に交際がスタート。
幸せでいっぱいだった。


でも、遠距離恋愛だからなかなか会えない。
チームがカリフォルニアに遠征をするというようなチャンスがあっても、
リネイは家族旅行があったりしてタイミングが合わず...
なんと、直接会ったことは一度もなかった!


それでも、彼女とは心で繋がっている...そう信じていたマンタイ。


しかし...2012年6月のある日。
リネイから白血病を患ったという告白があった。
ショックを受けるマンタイは、恋人の身に起きたことをチームメイトに話した。


するとシーズン開幕が迫った夏のおわり...闘病中の彼女から
「自分に何があってもいつも通り試合に出場して精一杯プレーしてほしい」
というメッセージがあった。


そして9月12日。
マンタイのもとに、リネイの兄を名乗る人物から電話が。
この日の朝、リネイの容体は急変...そのまま息を引き取ったという。


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突然の不幸は試合の3日前の出来事だった。
彼女との約束を守り、マンタイは試合に出続け、精一杯プレーをした。
そんなチームは連戦連勝。その中心には闘志むき出しのマンタイの姿があった。


連日大勢の記者が、マンタイにコメントを求めた。
ついには、全米ネットのテレビでも特集が組まれるほどに。
リネイの顔写真や、マンタイへのメッセージも紹介され、多くの視聴者の涙を誘った。


"死んだはずの彼女から電話が"


だが、この後とんでもない事態が。
リネイの死から3か月が過ぎた、2012年12月6日。
マンタイのもとに1本の電話があった。


それは、何と...死んだはずのリネイからだった!
戸惑う彼にリネイは
「ごめんなさい。実は私...麻薬組織に追われていて、死んだことにする必要があったの」
とだけ伝えると一方的に電話を切った。


一体、何がどうなっているのか...混乱するばかり。
しかし、その時...恐ろしい事実に気づいた。


あの悲劇のストーリーは...全てウソだったということ。
自分はそのウソでヒーローになっている。


チームは彼女の死をきっかけに奮起している。記者も自分に注目している。
実はリネイは生きている!もう口にできる状況ではなかった。
ただ早く時間が過ぎ、世間があのストーリーを忘れてくれればいい。そう祈るばかりだった。


しかし、年が明けた2013年1月。
あるサイトに記事がアップされたことで事態は動き出した。


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その記事は、リネイという女性は実在しない架空の存在だという内容のものだった。
憤るチームメイトたち。しかしそんなチームメイトのいる中でマンタイは口を滑らせた!


マンタイ「何がどうなってるんだ?だってリネイは生きてる。彼女は確かにそう言って...」


マンタイの思いがけない言葉にチームメイトは説明を求め詰め寄った。


事態はさらに混迷していく。
元々この記事は、あるネットニュースサイトに寄せられた匿名の情報が発端だった。


「マンタイと恋人のストーリーは何かがおかしい。調べてみて」という情報から、記者が取材をすると
彼女が通っていたという大学に問い合わせても、リネイという学生は
在校生にも、卒業生にもいないという事がわかった。


さらに彼女が住んでいた地域の病院すべてにあたっても、そんな名前の
自血病患者はおらず、死亡届けもリネイ・ケクーアの名前では出ていなかった。


ではテレビでリネイとして紹介されている女性はいったい誰なのか?


"ついにリネイの正体が明らかに"


記者はあらゆる手段でこの写真の女性を探した!
そして...ついに見つけた!彼女は、カリフォルニアの企業で働く
ダイアン・オメーラという女性だった。


ノートルダム大のあるインディアナ州から遠く離れた所に住む彼女は、
マンタイとリネイの話を全く知らなかった。
もちろん自分の写真がメディアで話題になっていることも知らない。


なぜ自分の写真が使われているのかダイアンに心当たりはなかった。
こうしてマンタイの美談は、嘘だと全米に報じられた


するとダイアンに、高校時代の同級生だった男から一本の電話が。
男は意外な事実を告げた。


電話の相手はロナイアという男。
彼もまた高校までフットボールで活躍していたが、大学に入ると才能に限界を感じ、挫折。
そんな男が、この騒動に関わっていたのだ。


一方そのころマンタイは苦しい立場に。
悲劇のヒーローから一転、非難の嵐にさらされていた。


写真を盗まれたダイアンはテレビに出演。
そして、この事件の黒幕の話を始めた。


騒動の犯人はダイアンの高校の同級生、ロナイアだった。
男は、ダイアンのSNSを見つけ、そこから写真を盗み取って、
ネット上に架空の女性を作り上げたのだ。


その女性に惹かれてしまったのがマンタイだった。
ボイスチェンジャーを使い、できるだけ高い声を出して女性を装って電話。


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加工された声だったが、マンタイは全く気付かなかった。
ロナイアはこんな悪戯をさんざん楽しんだあげく、リネイが白血病になったことにして
兄を装い、リネイが死んだと連絡。遊びを一方的に終わらせた。


しかし、マンタイとリネイのラブストーリーが大反響となっていることを知り、
焦った男は、再びマンタイにリネイとして電話をかけ、実は生きていると発表させて
事態を収めようとしたのだった。


大騒動を起こしたロナイアは、後に、
マンタイや巻き込んだすべての人に謝りたい、と反省の言葉を口にした。
なお、ロナイアは金銭をだまし取ったわけではないので、詐欺罪には問われなかった。
その後、プロフットボール(NFL)のドラフトに指名されたマンタイ・テオは
現在もトップ選手として活躍している。

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