元気いっぱいの少女の奇跡
アメリカ・フロリダ州。この街に驚きの病と闘う少女が住んでいる。
バルサビアちゃん、8歳。
少女の病気は、20万人に1人と言われる稀な病気。
なんと心臓が飛び出しているのだ。
" 心臓が飛び出した少女"
2008年、ロシア。
妊娠5か月を迎えたダリは医師から悲痛な宣告を受けた。
お腹の子はカントレル症候群という病気を持っているという。
カントレル症候群とは腹膜、胸骨、横隔膜、心膜、心臓に欠損が起こる先天性の病気。
世界でも症例が少なく、治療の最も困難な病気のひとつ。
覚悟の上で産んだ赤ちゃんは、心臓が飛び出していた。
本来あるべき胸骨と心膜が欠損していたために心臓が肋骨の間から飛び出していたのだ。
さらに心臓にも複数の穴が空いていて、医師からは長くは生きられないと宣告された。
なんとか娘を助けたい母親。
しかし、ロシア中の病院を回ったが治療ができるところはなかった。
夫は、娘を見捨て家を出て行った。
絶望の中、唯一の救いは...
いつ死んでもおかしくないと言われた娘が見せた驚異的な生命力。
医師の予想に反してなんと、お風呂に入れるまでに成長。
時々、血液の循環がうまくいかず、呼吸困難になるため呼吸器は手放せなかったが
バルサビアちゃんは元気に生き続けた。
国内の病院がダメならばと、アメリカ、イタリア、ドイツ、イギリスなど
様々な国の医療機関にカルテを送り、手術を依頼した。
娘を助けたい。必死の願い。
そして2年前、ボストンの病院から返事が来た。
親子はすぐにアメリカへ。
心臓をチェックし、問題があれば計画的に治療。
そのあと肋骨内に心臓を納めて、人工の胸骨を作る予定だった。
それは心臓を停止させて行う大手術。
しかし、血圧が低すぎるのと、体が成長過程にあるため
手術を受けることは出来なかった。
その時、医師に暖かい土地で暮らした方が良いと勧められ、
ロシアに戻らずにフロリダに移り住むことになった親子。
こうしてアメリカに移住してきて2年。
まだ手術は受けていないが暖かい気候の中、元気に暮らしている。
" おてんばな娘に母も一苦労!"
娘との生活は注意ごとだらけ。
糖分が多めのものはほとんど食べさせない。お菓子やソーダ類も禁止。
体調管理には気を使う。
この病気は症状によっては歩くことも難しいケースもあるのだが、
バルサビアちゃんは、毎日、元気に学校へ通っている。
クラスの友達とのおしゃべりが一番の楽しみ。そして、なかなかのおてんばだった!
それでも他の子と同じ、というわけにはいかない。
硬いところでうつ伏せになるのはダメ。
ボールを扱うスポーツも禁止。心臓に強い衝撃を受けたら命に関わる。
母親の心配は尽きる事がない。
バルサビアちゃんの心臓を守るためプロテクター付きワンピースを用意している。
胸に合うように特別に作ってもらったのだが
バルサビアちゃんはこれをつけるのをとても嫌がるため、
今は、体育の授業の時しかつけないという。
こちらがヒヤヒヤするくらい元気。
熱いお湯や冷たい水を浴びるのもダメ。でも、暖かいフロリダではプールはOK。
最近、ダンススクールにも通いだした。
それでも、心臓への負担は普通の子とは比べ物にならないらしく、将来的には手術が必要。
実は、バルサビアちゃんの心臓は大きくなり過ぎていて、
肋骨に収めるには治療が難しいという。
今は、治療法の確立を待ち望むばかり。
そんな中、カントレル症候群の手術に成功している病院もある。
その病院は、なんと日本にあった。
2015年、静岡県立こども病院が世界で最も重症な
カントレル症候群の手術に成功したという。
救われたのは14歳の少女だった。彼女は今も元気に暮らしている。
すでに何人もの子ども達を救っているという。
病と闘い続けるバルサビアちゃん。
治療を待ち望む親子は、日本で診察を受けることを考えている。