放送内容

2017年9月 5日 ON AIR

満腹を感じない病と闘う

東京都、荒川区。
こちらに住む小川家の長男、凛太郎くんが太る病と闘っている。
しかし実際会ってみると、全く太っていない。
一体どういうことなのか?


凛太郎くんが生まれたのは2015年9月。
体重2176g。低出生体重児で生まれ、しかもミルクを飲むのも大変だった。


普通にミルクが飲めるようになったのは、生後半年を過ぎた頃。
そして1歳半を超えた最近、ようやく食事を食べられるようになった。


凛太郎くん、実はこれから太る確率が非常に高い病を患っている。
それはプラダー・ウィリ症候群というものだった。一体どんな病気なのか?


"3歳で症状が現れる太る病"


その同じ病と20年間闘い続けている患者と、その母親を海外で見つけた。


オーストラリア・シドニーに住む、バージニア・スザラスは
1996年に3番目の子どもを出産した。


ヘンリーと名づけられたその男の子の体重は2270g。
ミルクを吸う筋肉が弱かったためチューブでの栄養補給が必要だった。
さらに...身体が小さいこと、筋力が弱いことから先天的な病気の疑いがあった。


生まれたばかりの我が子に一体なにが起きているのか?
生後6週間が経ったころ、プラダー・ウィリ症候群である事が告げられる。


20170905_02_02.png


プラダー・ウィリ症候群とは約16000人に1人が発症すると言われる先天性疾患。
過食・それに伴う肥満・低身長・性腺の発育不全、知的な障害、
そして情緒面の問題を伴う先天性の疾患で、最も恐ろしいのが過食による肥満と、
それに伴う様々な合併症。


過食の症状は3歳頃から現れるといわれる。
医師によると、一般的に3歳を過ぎたころからヘンリーは
自分の食欲を抑えられなくなるという。


通常、食べ物が胃に入り血糖値が上昇すると脳の視床下部というところにある満腹中枢に
信号が送られる。これによって満腹感が得られ食事をやめる。
しかしプラダー・ウィリ症候群の患者は満腹中枢に異常があるため、
どれだけ食べても満腹感を得ることができない。


さらに身体全体の筋肉量が少ないため基礎代謝が低いことも特徴。
そのため、わずかなカロリーでも太ってしまう。
肥満によって、糖尿病や高脂血症など合併症を患い死亡するケースもある。


現在では、成長ホルモン剤の投与が認められ肥満になりにくい処置が可能だが、
ヘンリーが幼い頃はまだその処置ができず、過食が始まる3歳までの恐ろしい
カウントダウンを止めることはできなかった。


"食欲のコントロールが出来なくなる"


3歳になったある日の食卓。
他の兄姉とほとんど同じ量を食べたはずのヘンリーがまだ食べ足りないとぐずった。
まさか...過食の症状が始まったのか?


その時はなんとか親が説得してヘンリーも納得したが、
その夜にキッチンから物音が。両親が向かうとそこにはヘンリーの姿があった!


ついに恐れていた症状が!!
それから母・バージニアとヘンリーの食欲との闘いの毎日が始まった。


勝手に食べ物を食べないよう冷蔵庫には鍵を。
プラダー・ウィリ症候群の患者は常に空腹を感じているわけではなく、
食べ物を見たり、食べ物のことを考えたりすることで抑制が効かなくなる。
そのため、食べ物を遠ざけることが最も効果的と言われている。


しかし、食べたいという欲望のコントロールは難しい。
だから...母親の一瞬のスキを突いて食べ物を取って隠し、上手にウソを付くことも。
そして怒られないように家族が寝静まった頃、食べるのだ。


20170905_02_03.png


こうして、ヘンリーの体重は14歳で100kgを超えた。
現在20歳になるヘンリーの体重は195kg。これでもかなり頑張った結果だという。


週4日、ダイレクトメールや衣料品のパッキング作業といった仕事をし、
社会とのつながりがもてている。


ただ、冷蔵庫や戸棚には現在も鍵をかけていて、
カロリーを制限した食事は一生続いていく。


ヘンリーは現在、糖尿病など肥満からくる合併症を発症してはいない。
少しでも適正な体重に近づけるため、ヘンリーの闘いはこれからも続く。


"日本でこの病と闘う親子"


そして、日本人でプラダー・ウィリ症候群と闘う親子はどんな生活をしているのか?


遺伝子が原因で、満腹を感じられないというプラダー・ウィリ症候群と診断された
現在1歳11か月の小川凛太郎くん。まだ、過食の症状は見られない。


筋力をつけ、代謝をあげる効果がある成長ホルモンの投与は欠かせないという。
その甲斐あってか、最近は筋力がついてきた。


そして両親はある目標を掲げている。
それはプラダー・ウィリ症候群専門のグループホームを作ること。
息子のために作らないと安心して死ねないという。


20170905_02_04.png


家族全員でこの難しい病気と闘い続けていく。

バックナンバー一覧