一瞬で体重が30キロ増えた謎
南米ペルー。
首都リマの南に位置する港町、ピスコ。
ここの漁師、アレハンドロに信じられない事件が!
彼は海底で海の幸を獲る潜水漁の漁師。
空気を送るコンプレッサーにつないであったのは...長さ100mもある細いホース!
ホースの先端を口にくわえただけで海に潜っていく。
彼らが狙うのはチョロと言われるムール貝の一種。
その貝があるのは、なんと水深30m。
しかも、5~6時間は潜り続けるのだという。
水深30mともなると水圧がスゴい。
そしてその圧力によって、超圧縮された空気を吸う事になる。
この圧縮された空気が恐ろしい!
水深30mから急浮上すると、肺の中にあるこの圧縮された空気が膨張し
肺が破裂してしまう危険性があるのだ!
ペルーの漁師たちも、急浮上の恐ろしさを知っていたがとんでもない事が起きた!
ホースが切れ、息が出来ない状態に
2013年12月。
アレハンドロ・マルティネスは30年もの間、潜水漁を行ってきたベテラン漁師。
港から1kmほど離れた沖合に船を止め、漁を始めた。
いつもと同じ、ホースをくわえるだけの方法で水深30mへ。
そこでチョロという貝を獲っていた。
水深30mで3時間潜っていたとき、海上では別の船が近づいてきた。
ホースは海面に浮いている状態!
なんと、近づいてきた船はホースの上を通り...プロペラで切ってしまった。
この瞬間、アレハンドロは水深30mで突如、呼吸が出来なくなった。
このままでは窒息してしまう!とにかく急いで浮上した。
肺破裂を避けるため、肺に残った空気を吐きながら...
そして意識を失う寸前、なんとか海面にたどり着いた!!
幸いにも肺は破裂しなかった。
しかし、息苦しさと手のしびれが彼を襲う。
それはまさしく、減圧症と呼ばれる症状だった!
実は水中では空気中の窒素も恐ろしい。
通常、窒素は呼吸によって、血液中に溶け込んでいる。
一方、水中では空気が圧縮されているため窒素が大量に血中に溶け込んでいく。
その状態で急浮上すると、窒素は泡になってしまい
その泡が血管をふさいだり、体の組織を圧迫する。これが減圧症といわれるもの。
症状は軽度のものでは、しびれ、関節痛、筋肉痛など。
しかし気泡が肺動脈に詰まることで肺破裂を起こしたり、
脳に至ると血管を詰まらせると、重篤な後遺症をもたらす。
そのため、ダイビングなどではゆっくりと浮上し圧を徐々に下げ
溶け込んだ窒素を呼吸によって体外に排出している。
一方、急浮上したアレハンドロの症状はどんどん悪くなっていった。
アレハンドロの上半身に変化が
そして、アレハンドロの体にとんでもない変化が起きた!
なんと、アレハンドロの上半身はパンパンに膨れあがっていたのだ!!
両方の肩と胸が尋常でない大きさになっている。
一体なぜ膨れてしまったのか?
あの事故から4年。
仰天スタッフはアレハンドロさんのもとを訪ねた。
なんと現在も体は膨らんだまま!
服を脱いでもらうと...膨れあがった腕と胸が邪魔をして
一人ではTシャツを脱ぐことも大変。
触っても痛みはないという。
事故のすぐ後、病院に行くと急浮上によって出来た気泡が原因で体が膨れたと言われた。
現在左の腕は、周囲80cm。右の腕は65cm。
身体が膨らんだことで体重は30kgほど増えた。
肩に鉄の玉を乗せているような重さを感じるという。
膨れた後、アレハンドロは高気圧酸素療法という治療を受けた。
潜った水深と同じくらい圧を高めた機械に入り
呼吸によって窒素を排出する方法だが症状は改善しなかった。
去年の12月からより専門的な海軍の病院で、本格的な検査を始めた。
担当医によると、彼の腕や胸に詰まっているのは脂肪なのだという。
しかし、なぜこのような状態になっているかは不明。
彼の症状は世界的にも極めてまれで、減圧症とは関係ない可能性もある。
まず原因をハッキリさせベストな治療法を考えていくという。