放送内容

2018年6月12日 ON AIR

アライグマで衝撃の死の病

2011年、アメリカ・ノースカロライナ州。
アメリカ空軍の関係者がある家を訪れた。


そこは一人息子を育てるシングルマザー、アリシアの家。
その関係者は、彼女にウィリアムという男性の死を伝えた。


ウィリアムは彼女のパートナーでひとり息子の父親だった。
そしてこのウィリアムの死が州を越え驚くべき事態を引き起こす事になる。


予想外だった驚きの死因とは


健康だったウィリアムだが、ある日釣りから帰ってきた直後、
嘔吐や腹痛、嚥下障害を発症し入院。


医師たちは釣った魚を食べた事が原因だと考え
シガテラ毒などの神経症状を伴う中毒を疑った。
しかしその後、容体はどんどん悪化...最後は脳炎を発症し亡くなった。


脳炎の原因は不明。
常に人の役に立ちたいと考えていたウィリアムは生前、ドナー登録をしていたため、
彼の臓器は、病に苦しむ人たちに提供された。


そして1年半後。
再び、軍関係者が彼女のもとを訪ねて来た。
ウィリアムさんの本当の死因を伝えにやってきたのだ。


20180612_04_02.png


本当の死因とは、狂犬病だった。
狂犬病とは...ヒトを含めた、すべての哺乳類が感染するウイルス性の伝染病。
菌を持った犬などにかまれたり、ひっかかれたりして感染する。


傷口から入った狂犬病ウイルスが神経に沿って進み、
高熱や臓器の障害を起こしながら最終的に脳に到達。
そして脳炎を起こし、発症すれば、ほぼ100%の確率で死に至る。


ウィリアムは、亡くなる7か月前にある動物に噛まれていた。
それは...アライグマだった。


まさか、アライグマから狂犬病に感染するなんて考えもしなかった。
実は、ネコやサル、こうもり、狐などにかまれても感染する事がある。


そしてもっと重大な事件がウィリアムの狂犬病によって起きていた!


狂犬病で亡くなった男性の感染原因とは


500kmほど離れたメリーランド州である男性に異変が起きていた。


数日間続く発熱。
水を飲もうとするが、痛みで飲めなかった。
風があたると体が震え、薬も効かない。


20180612_04_03.png


やがて水の音にも痛みを思い出し、恐怖を覚えた。
ついには脳が過敏になり、精神不安定になる。


病院で検査を受けると、この男性も狂犬病に感染している事がわかった。
しかし家族には全く覚えがなかった。


まもなく男性は亡くなった。
なぜ動物と一切接触していない男性が狂犬病で命を奪われたのか?


実は...亡くなった男性は、1年半前に腎臓移植を受けていた。
その腎臓を提供したドナーが、あのウィリアムだったのだ。


なんと、男性の狂犬病は臓器移植によって感染したのだ。
通常、臓器提供をする場合はドナーの身内や近しい人々に病歴などの調査を行う。
そして狂犬病は通常3か月以内に発症するとされている。


一方ウィリアムはかまれてから、7か月以上たってからの発症だったため
誰もアライグマのことは思い当たらなかったのだ。


ウィリアムの臓器は亡くなった男性以外にも、
3人に心臓、肝臓、もう一つの腎臓が提供されていた。


幸い狂犬病を発症していなかった彼らは直ちに狂犬病ワクチンを接種、
これで発症のリスクは無くなった。


臓器提供を受けた人が狂犬病で死亡したという衝撃の事実。
人の役に立ちたいという善意が他人の命を奪う皮肉な結果となってしまった。

バックナンバー一覧