放送内容

2018年8月14日 ON AIR

命の危機 海外での歯の痛み

親知らず...一般的に20歳前後に生えてくる歯。
とある男性が、その親知らずの痛みを我慢し、
海外旅行中に悲劇に見舞われる!


それは、死をも覚悟した恐ろしいものだった。


楽しい旅行が...帰国後すぐ病院へ搬送!!


去年5月、岡山県。
この日、中野さんは人生初めての海外旅行。行き先はタイ。
一緒に行くのは仕事仲間だった。


飛行機は初めてだった。
すると...歯に弱い痛みが。
このとき仲間から鎮痛剤をもらい、痛みは治まった。


そして、タイではゴルフにプール遊び、初めての海外を満喫していた。


しかし2日目、食事をしていると...喉に痛みを感じた。
なぜか呼吸がしづらくなり、首が腫れて水も普通に飲むことができなくなった。


友人に病院に行くよう勧められたが、慣れない海外で病院に行く気がしなかった。
こうして、帰国までの残り2日間、ずっと部屋に。


そして帰国。
夫の異常を聞きつけた妻が見たのは衝撃的な光景だった。
中野さんの呼吸が浅く...首が異常に腫れ上がっていたのだ。


そのまますぐに病院に搬送。
急遽、複数の専門医が集められ、緊急手術となった。


担当医からは「降下性壊死性縦隔炎」という感染症と診断された。


縦隔とは、左右の肺の間や胸の中央部分のことで、心臓や食道、重要な血管、
神経が多く集まる場所。
その縦隔に何らかの形で細菌が侵入し、感染症を起こしたのだ。


症状は風邪のようなものから始まり、発熱、呼吸困難などに及ぶことが多い。
そして、様々な場所で炎症が起き、膿が溜まっていく。
こうなると胸が圧迫され、呼吸が苦しくなり歩くのも困難になる。


中野さんの場合、首でも炎症を起こし、膿が溜まり腫れていた。
さらに進行すると、縦隔の組織が壊死したり、細菌が血液中に入る敗血症を引き起こし、
致死率は40%とも言われている。


このとき中野さんの症状は、敗血症まで引き起こす非常に危ないところまで進行していた。
抗菌薬を投与し、広がる細菌と膿を排出しつづけ、あとは本人の免疫力に頼るしかなかった。


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親知らずが感染症の原因に


中野さんは、まだ年齢が若かったこともあり、
1か月以上にも及ぶ長い闘いの末、なんとかもちこたえることができた。


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その後、この感染症の原因が親知らずだと判明。
実は、この降下性壊死性縦隔炎は抜歯のあとや、虫歯など歯のトラブルから
起こることがある。


歯茎などに細菌があると、その細菌が膿と共に首の組織の間を通り
縦隔の部分まで降りてくることがあるのだ。


中野さんには虫歯などはなかったが、
数か月に1回、親知らずの周りの歯茎が腫れたりすることがあった。


親知らずは、歯茎から少し出ていたり、完全に埋まっていたり、
様々な形があるが、少し出ているタイプは汚れが溜まったり、
隣の歯や歯茎を傷つけやすく、そこから細菌が入り、腫れたりすることがよくある。


歯茎に完全に埋まっているタイプでも、周囲に細菌が溜まりやすい空間ができやすく、
疲れたときなど炎症が起こることがある。


中野さんも、旅行の際の行きの飛行機の時点ですでに感染が起きていた。
ちなみに、鎮痛剤を飲んでも細菌は殺すことができない。
どの細菌に感染するかは状況によって違うが、今回中野さんが感染したのが溶連菌。


溶連菌は、多くの人の口の中に存在するが、普段は免疫力に守られており、
症状が悪化することは少ない。


しかし中野さんは、慣れない海外旅行で免疫力が落ちており、
感染が進みやすかったと考えられる。


溶連菌に感染すると重篤な症状に繋がることもあるが、
首が腫れているなど異変を感じた時点で病院に行けば、ほとんど重症化することはない。


しかし、今回のように海外にいたりして、長期間病院へ行かず放っておくと、
命に影響を及ぼすほど重症化することもある。


あと数時間、処置が遅ければ亡くなっていたとも言われている。


楽しい旅行が一転、親知らずが原因で命の危機に陥った中野さん。
現在も体中に闘いの痕が残っている。


親知らずは必ずしも抜く必要はないが、一度でも腫れや痛みを感じたら、
歯科医に相談した方がよい。


いずれにしても、旅行に行く際は、歯の調子を整えてからどうぞ。

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