激しく後悔したネット住民
今年7月、仰天スタッフは、一人の女性に話を聞いた。
実は彼女、ある問題で訴えられる可能性がある。
当時は一種の洗脳のような状態で、「みんな敵だ!」と思い込んでいたという彼女。
一体何があったのか?
きっかけはネットで見つけた、とある記事
2016年。彼女は独身、家族はなく一人暮らし。
友達と活発に遊びに行くタイプではなかった。
テレビはあまり見ず、情報はインターネットから得ていたという。
そんなある日、あるネット記事に目が留まった。
それは朝鮮学校への補助金についての記事。
朝鮮学校とは、主に在日朝鮮人の為に作られた朝鮮語を用いて民族教育などを行う学校。
日本の学校教育法で定められた学校とは異なり、
各都道府県が認可した『各種学校』、すなわち洋裁学校や
自動車学校などと同じものとして位置付けられている。
一方日本では、2010年から高校に補助金を支給するという制度ができた。
朝鮮学校は北朝鮮問題などの影響もあり、その制度の指定を受けていない。
さらに2016年、政府は元々各自治体が朝鮮学校へ支給していた補助金についても言及した。
それに対し、一部の弁護士たちが"差別的な人権侵害に当たる"と異論を唱えている。
彼女はそんな問題を目にしたのだ。
今まで一度も考えたことがなかった問題...彼女はこう思った。
女性『でも私たちが払っている税金が使われるの?...』
この問題に興味がわいた。
正義のつもりが大事件に発展!!
朝鮮学校補助金問題の記事に目が留まった女性。
彼女の意見はその弁護士たちとは違っていた。
それからというもの、インターネットでこの問題について調べる様になっていく。
するとそこには自分の考えと同じく"補助金は出すべきではない"という意見ばかり。
実はこの時、彼女が見ていたのは弁護士たちへの反対意見ばかりが集まったサイトだった。
生きがいのなかった日常。
そんな中、放っておけない問題を知った...やがて、自分たちは大きな敵と戦っている...
そんな事を思うようになっていった。
そしてある日のこと。
この時、サイトで話題となっていたのが"朝鮮学校に補助金を出すべきとしている弁護士たちに対し懲戒請求をしよう!"というもの。
弁護士への懲戒請求はしっかりとした理由があれば誰でも行える。
そこまでは...と思ったが、
署名するだけで、その後の提出などはサイトが請け負ってくれる...
こうして大して考えもせず、彼女は170人以上の懲戒請求に署名し、提出した。
無関係の弁護士までが標的に
だがこれがとんでもないことに!
都内で労働問題の弁護を主に行う佐々木亮弁護士。
去年6月、彼のもとに突然懲戒請求が届いたのだ。
懲戒請求は弁護士会に提出された後、請求を受けた弁護士に届けられる。
その数合わせてなんと1000通!
弁護士にとって懲戒請求は弁護士資格を失いかけない大問題。
だが...それ以前の問題としてその懲戒理由に全く心当たりがない。
実は佐々木弁護士、この問題に全く関わっていなかったのだ。
にも関わらず、何千人もの人が自分を懲戒しようとしている。
なぜこんなことが...その思いを自身のSNSに投稿した。
この投稿を偶然見た北周人弁護士は自身のSNSでこの事態について
批判のコメントをした。
すると...なんと北弁護士のもとにも大量の懲戒請求が!
自分を擁護しただけでその人も"懲戒"...これは行き過ぎている。
一度懲戒請求を受けるとそれに対し答弁書を提出しなければならない。
懲戒請求はすでに3千にも及んでいた。
誰かが自分を陥れようとしている...誰かに恨まれているのか?
その誰かは自分の近くにいるかもしれない...もし家族に何かあったら...恐ろしく感じた。
このようにネット上の偏った情報だけを信じ個人をターゲットにする事例は少なくない。
去年6月、神奈川県東名高速で起きたあおり運転死傷事故ではこの事件の犯人と
全く無関係の男性が『被告の父親』とネット上で流され拡散。
今年6月に関わったとされる11人が書類送検されている。
他人を攻撃してしまった代償とは
これ以上、弁護士として無責任なネットの意見を黙認するわけにはいかなかった。
そして彼は行動を起こした。懲戒請求を行った人たちを相手取り、
裁判を行うと宣言したのだ!
この行動に驚いたのは懲戒請求を出した人たちだった。損害賠償はおよそ30万円!
まさか、反撃してくるなんて...ネット情報に踊らされ、深く考えることなく
他人を攻撃してしまった代償は大きなものとなった!
今年5月16日、佐々木弁護士と北弁護士の2人はある会見を行った。
それは...今回の件について謝罪する気持ちがあるなら
慰謝料1人につき5万円で提訴はしないという会見。
これを受け、女性はすぐに謝罪を申し入れたという。
女性は、
「直接先生方の事も分かっていないのに、人に言われてそのまま鵜呑みにして
後になって自分のしたことがどれだけ人に迷惑をかけてしまった事を知った。
本当に申し訳なかった」と語った。
そして今回、3千もの懲戒請求を受けた佐々木弁護士は
「理由がある懲戒請求自体は批判するつもりはない。ただ今回のように、ネットで煽られた側が安易な行動をとってしまったことが一番の問題。
ネットの向こう側には生身の人間がいるんだという事を是非想像して様々な行動をとって欲しい」と語った。
ネット上には様々な情報が溢れている...そのどれを選択するかは自由だが
他人に意見する場合、その行動にはくれぐれも注意し責任が取れるものだけにしてほしい。