スター選手を追いつめたSNSいじめ
数年前、関東地方。
小学校を卒業した少女は、新体操の強豪校である私立の中高一貫校へ入学した。
新体操が大好きな少女...夢と希望でいっぱいだった。
部活で仲が良かったのが...新体操が一番上手く、リーダー格だった女子。
いつも一緒に遊んでいた。
しかし、中1の夏。ささいなこじれから、2人はケンカをした。
この出来事が少女を追い込んでいく。
部内で受けた陰湿ないじめ
少女とケンカをしたリーダー格の女子は、その後少女を無視するようになった。
それは、部員を巻き込んだかなり陰湿なもの。
しかしこの行動は露骨だったため、顧問が注意をしたことで表面的には収まった。
ところが、顧問の見えないところで再び嫌がらせが始まった。
学校のクラスでは楽しいことがたくさんあったが、部活では憂鬱になった。
しかし...部活のために選んだ学校。
周りを気にせず、新体操に打ち込むことにした。
そして、めきめきと上達した彼女は、高校1年生で全国大会のメンバーに。
1年生で選ばれたのは、以前ケンカをしたあの子と二人だけだった。
すると、またも露骨な無視が始まった。
しかし、今回はそれだけで終わらなかった。
しばらくして、クラスメイトからメッセージが届いた。
ツイッターで悪口を言われているらしい...どういうことか?
不思議に思い、ツイッターを開くとそこには衝撃的な内容が。
なんと彼女の実名、さらには生年月日まで出し、
あるあると称して誹謗中傷の数々が書かれていた。
投稿者は匿名...ただ、こんなことを知っていて、こんなことを言う人間は1人しかいない。
黙っていられず、ダイレクトメッセージを送った。
すると、返信はすぐに来た。
「お前のことが嫌いな奴なら山ほどいんだから絞れないよね...哀れ」
彼女も負けず、発信者を特定しようとしばらくやり取りをするが、
陰湿なメッセージが続く。
「学校からでてけ、死ねよ」
この言葉で彼女の心は折れてしまった。
その夜、自分のツイッターに「学校やめていいですか」とつぶやいた。
動かない学校と警察
部活内で起きたいじめ。
それはSNSでの陰湿な誹謗中傷へとエスカレートし、彼女を追い詰めていった。
部活に行けなくなった彼女は、食事も喉を通らなくなった。
そんな状況を心配する両親に、これまでの話をすべて打ち明けた。
父親はすぐに新体操部の顧問に電話で相談。
そして3日後、父親は校長と面談することになった。
実際にツイートを見たという校長、しかし生徒の犯行とは認めなかった。
ツイートの文面にある一文が少し難しい言い回しで書かれていたのだが、
「こういった言い回しは最近の高校生には書けないだろう」という理由で、
生徒の犯行ではないと主張したのだ。
この対応に怒りを覚えた父親は、警察へ。
しかし...警察も現段階では事件性がないということで動かなかった。
その間、彼女はみるみる痩せていった。
精神的なストレスからくる拒食症...163cmある彼女の体重は29キロに。
それでも...彼女は学校を休まなかった。
それは、ボロボロになった彼女の最後の意地だった。
一方、必死に闘う娘に父としてできること...
せめて、誰がやったかだけでも突き止めたい。
そんな父親が行き着いたのが探偵事務所だった。
これまでの経緯を説明し...調査が始まった。
ついにいじめの証拠を突き止める
まず探偵は、ネットに詳しい調査員と共にツイートのIPアドレスを見つけ出し、
その通信記録を探った。
すると...投稿者は学校近くの駅ビルでWiFiを利用していたことが判明!
すぐに、駅ビル内の各店舗で新体操部の人間を覚えていないか聞き込みを行うと...
駅ビル内のカフェによく来るという証言を得た。
さらに、新体操部員を調査。
彼女たちとつながりのある生徒を見つけ、あのツイッターについて話を聞くと...
その生徒は新体操部員とのグループメッセージを探偵に見せた。
そこには、少女がツイッターに「学校やめていいですか」と投稿をした日の直後、
新体操部員たちが、そのツイートをグループメッセージに張り付けて
状況を報告するやりとりが書かれていた。
これは明らかに彼女たちの仕業という証拠。
そして、探偵が集めた証拠を持って学校へ行くと...
学校主導のいじめ調査がようやく行われることになった。
彼女は、高校3年生になってからようやく体重が回復。
新体操部には結局戻れなかったが、新体操への想いをぶつけるように猛勉強を開始。
学年トップクラスの成績を維持し、志望していた有名大学へ進学した。
現在、大学生になった彼女は、当時の経験についてこう語る。
「あんなことあったから割となんでもきつい事とか耐えられる感じにはなったのでいろんなことにチャレンジしたい。」
これらのいじめ調査を行った阿部泰尚氏は、
「いじめを解消するには、まず話を聞かせてほしい。
インターネットやSNSでも相談できるところがあるので、とにかく話してほしい」
と呼びかけた。