選びようによっては人の命を奪いかねない危険な食べ物...キノコ。
しかし、なぜか人を惹きつけてやまない魅力がある。

そんな毒キノコの魅力にとりつかれ、命の危機に直面した男性がいた。

2015年8月12日。
神奈川県に住むサラリーマン、皆川さんの趣味はキノコ狩り。
1年前、キノコ狩りの魅力にはまって以来、週末はほとんど山に出向いていた。

遠くからでも種類が見分けられるほど知識も豊富。
キノコを見つけると写真を撮り、すぐに仲間にメールで報告。

彼らが感じるキノコ狩りの魅力は...キノコそのものが神秘的で美しいこと。
そして、まるで宝探しのような達成感を味わえることだという。

この日、そんな皆川さんがベニテングタケを発見した。
ベニテングタケといえば赤い傘に白い斑点。
絵本や童話に出てくるキノコのモデルとしてもお馴染み。

このキノコの最大の特徴は...毒があること。
しかし、彼の頭によぎったのはなんとこのキノコを食べることだった。

それにはある理由が...実はベニテングタケはキノコ仲間の間では憧れの存在。
毒はあるが、驚くほど美味だという噂があった。しかし、誰も実際に試すほど度胸はない。

そんなベニテングタケについて、皆川さんは今度見つけたら食べてみたいと
仲間内で宣言してしまっていた。
もちろん、ベニテングタケで死ぬことはないと、勝手に思っていたから。

見つけたベニテングタケを写真を撮り、仲間にメール。
そしてベニテングタケを食べると宣言!
食べると決めたら、恐怖よりも好奇心が勝った。
このバカな行為が皆川さんの命を危険にさらすことに！

好奇心でベニテングタケを食べる!

ベニテングタケを家へ持ち帰った皆川さん。
妻の心配をよそに、アルミホイルの上にベニテングタケを置いた。

ベニテングタケそのものを味わいたいと思い、味もつけずにシンプルに素焼きにした。

仲間からの羨望の声が届き、毒キノコに挑む自分を誇りにすら感じた。
そして、ベニテングタケのオーブン焼きが出来上がった。

そして毒キノコ、ベニテングタケを口にした！
すると、大地の恵みを凝縮したような旨味が口いっぱいに広がった。
噂は本当だった！毒キノコ・ベニテングタケは半端なく美味かった!

その秘密は、ベニテングタケに含まれるイボテン酸。
これは旨味成分で知られるグルタミン酸の10倍の旨味があるという。

皆川さんは、キノコの美味しさに大満足。１本ペロリと食べきってしまった。
しかし30分後...胃が強烈にムカムカし、ありえない吐き気が襲う。
さらに恐ろしい症状が...視界が暗くなったのだ。

毒キノコを自分から率先して食べて救急車を呼ぶなんて申し訳ない。
ベニテングタケでは死なないと信じていた。
しかし、それも吹き飛ぶほどの苦しみが皆川さんを襲った。

皆川さんが苦しんでいるとは知らず仲間から次々に届く、味の感想催促メール。
そんな中、瀕死の皆川さんはとんでもないことをした。

それはベニテングタケを食べたらこうなるという記録写真。
汗が噴出し苦しむ自らの姿を激写した!!

ベニテングタケには大きく分けて3種類の毒が含まれている。
１つはムスカリンという毒。

副交感神経を刺激する作用があるムスカリン。皆川さんの視界が暗転したのはこのため。
さらに異常な発汗や下痢・嘔吐の症状もこのムスカリンによるもの。

そして、ベニテングタケの旨味成分でもあるイボテン酸も実は有毒。
興奮する作用があり、幻覚が出ることもある。
さらにムシモールという毒は脳の働きを抑制し、深い眠りに落ちたり昏睡状態になることも。

それぞれの毒が様々な中毒症状を起こすベニテングタケ。
皆川さんの場合、主にムスカリンの影響が強かったと思われる。

その後、皆川さんの症状は回復。
しかし、経験したことのない気持ち悪さを味わった。
ベニテングタケだけではなく、知らないキノコは絶対に食べないように。