やめられない苦しみと闘う芸能人
1980年代前半。空前の女子プロレスブーム!!
その中で注目を浴びた悪役、ダンプ松本!!
奇抜なメイクと強烈な凶器攻撃が売りの悪役レスラー。
57歳になる今も現役レスラーとして大暴れしている。
しかし、彼女は長年あることに苦しんできた。
それは...パチンコ依存症。
近年、借金に苦しむ主婦が増えているというがその理由の一つとしてパチンコがある。
1人でいる時間が長い専業主婦にとって長時間を過ごすことができるパチンコは
依存しやすい傾向にあると言われているのだ。
自分の意志ではどうする事も出来ない為、専門病院で治療を受ける人も。
辞めたいのにやめられない。「パチンコ依存症」とは...。
ビギナーズラックでハマったパチンコ
ダンプが初めてパチンコをやったのは、プロレス団体に入ってすぐの頃だった。
最初の目的は練習をサボって隠れてジュースを飲むことだったが、
仲間に勧められパチンコをすると、あっという間に数百円で大儲け!!
座った途端にすぐ大当たり。この瞬間の高揚感にダンプはハマってしまった。
その後、一度現役を退いていたが2003年、再びレスラーとしてカムバック。
ますますパチンコにのめり込んでいく。
狙った台を確保するため開店前から並び...閉店時間まで打ちっぱなし。
その間食事に立つこともせず、およそ13時間ぶっ通し。ほぼ毎日通い詰めた。
で、成績は勝ったり負けたり。負ける時は持ち金を全てつぎ込んでしまう。
夜は反省するのだが...翌朝になると、頭の中はパチンコの事でいっぱい。
考えるのは...あの大当たりした時の高揚感。
そんな高揚感を求めるあまり、家賃にまで手を出しパチンコへ。
大抵は、取り返すどころか大負けで終わる。
でも、やめられないのは...こういう思考に陥るから。
ダンプ「もし次の日、自分が行かなければきっと誰かが行って出していると思う。取られたくない。」
そんなダンプを心配する人もいたが、この時ダンプはまだ本気でやめようと思えば
いつでもやめられると考えていた。
このようにいつまでもパチンコがやめられない人は、「意志が弱い人」だと考えられてきた。
しかし本当の原因は、「意志の弱さ」ではなく脳の機能が低下しているためだった。
パチンコをすると、脳の中にドーパミンという物質が放出される。
これは、快感や興奮を促す事から快楽物質とも言われている。
だが、依存症に陥っている人は、絶えずドーパミンが放出される事により、
理性を司る「前頭葉」の一部が機能低下を起こしてしまうのだ。
そうなると『パチンコをしたい』という欲求の制御ができなくなってしまう。
本人の意志とは関係なくこの「脳の欲求」を求める行動はおさえることができない。
借金をしてもやめられないパチンコ
やがて貯金は底をついた。
金が無ければもうパチンコは出来ない。だがこれで終われないのが依存症の恐ろしい所。
翌日、向かったのは...ATM。
数日後にはギャラが振り込まれる。そうしたら返せると...5万円を借りた。
そのような金でパチンコをやると、たまに大当たりを連発するが
この金で直ぐに借金を返すことはなく...得た金は、勝った喜びも手伝いパーッと使う。
そしてまた大当たりを狙いパチンコへ。
パチンコで使った金を働いて返すのはバカバカしい、とパチンコで取り返そうとしてしまう。
結局また金が無くなる。その繰り返しだった。
やがてマンションの更新時期がきたがそんな金、どこにもない。
すると苦肉の策で昔からお世話になっていた人を訪ね、
ケガの影響で収入が落ちたとウソをつき、援助を願い出たのだ。
アルコール依存や薬物依存の場合、その症状に周りも気づきやすいのだが、
パチンコ依存の場合は周りが気付きにくい。
こうして毎月3万円ずつ返すという約束で70万円を借りた。
一方で、ウソをついた自分が恐ろしくなった。もう本当にパチンコをやめようと誓い、
出来るだけボーっとしている時間を無くすため、映画を借りてきて見まくった。
何かに集中していればパチンコの事を考えないですむ...。
更に、パチンコ店から漏れてくる音が聞こえないように近くは通らないようにした。
知人から借りた金も毎月きちんと返していった。
自分は変わるんだ、もう二度とパチンコはやらない。
しかし...彼女の姿はまたもパチンコ店にあった。
現在も依存症と闘い続けている
この日、借りた金を返す予定だったが、
ふとある事が頭に飛び込んできた。それは...大当たりした瞬間の光景!!
この金を使えば、もっと借金を返せる!!そう思ってしまった。
そしてパチンコ店へ...負けて借金は増え続け、
しまいには親戚からも「ケガで収入が減ったから...」とウソをつき更に40万円を借金。
だがダンプはこれが依存症だと気づくことはなかった。
なので専門医の治療を受けることもなく、パチンコをやめられないまま時は経ち、
2011年、ダンプも50歳になっていた。
だがこの頃になるとある変化が。
やめたいけど、やらないと気が済まないという矛盾したこの生活に
徐々に疲れを感じるようになっていった。
そんな思いが続いたある日。
パチンコに行こうと手に取ったお金をみてふとある事が頭に浮かんだ。
そして、友人に電話。
向かった先は...パチンコではなく、飲食店。
パチンコに使うお金を1度違うものに使ってみようと、全部飲食代に使った。
最初はドキドキしたが、食事を終えると...パチンコと同じような満足感を得ることができた。
こうして、徐々にパチンコから足が遠のいて行き、やめて7年が経つ。
しかし今でも...パチンコ店に行きたい衝動に駆られることがあるのだという。
どうやら闘いの日々は続いている。