放送内容

2018年11月20日 ON AIR

理想を求める母とその娘の苦しみ

親子関係で深刻な悩みを持つ女性...宮澤那名子さん。
母から、精神的にダメージを受けるような扱いを受けていたという。
いったいどんな苦しみだったのか?


1986年。那名子さんは、宮澤家の二女として誕生した。
サラリーマンの父と、パートをしながら家計を助けていた母、そして3歳上の姉の4人家族。


母は、娘たちに幼い頃からバレエや楽器を習わせるなど教育熱心だった。
さらに、几帳面できれい好き...家事全般が得意な、完璧主義。


周囲から見ると、いい親子関係。
しかし、母には家族に対し急に怒り出すという一面があった。


母親が予定していた夕ご飯の時間が、家族の都合で遅れる事があった。
どこの家庭もよくある事だが、母はこの時間のズレで怒りを爆発させる。
そして一度怒りのスイッチが入ると、誰にも手がつけられなかった。


月に1度ほどだが、こんな風になってしまう母がすごく怖かった。
だからいつも、母の機嫌が気になった。
普通の日はそうでもないが、少しでも機嫌が悪いと、小言から家族への攻撃が始まる。


とりあえず大事にならないように、と思うのだが...
3歳上の姉は、そんな母に対して火に油を注ぐタイプだった。
言い返せる姉が、うらやましかった。


そんな自分にできる事といえば、母が笑顔でいる時間を増やすため、機嫌を取ること。
ところが、娘の気遣いもおかまいなしで、怒りをぶつける母。


常に母の機嫌を気にしてビクビク生きる日々。
一方、母は娘が憎いわけでも、愛していないわけでもなかった。


娘の未来を考え、素敵な人生を送れるように真面目に厳しく育てているつもりだった。
そしてこの関係は、子どもが成長するにつれ激しくなっていく。


「毒親」に蝕まれる学生時代


高校生になった那名子さん。
文化祭の準備でちょっと帰りが遅くなる連絡を家に入れた。


しかし、娘が帰る予定の時間にしっかり食事を作る母親はそれを許さなかった。
それは、娘からすると横暴な母だったが、従うしかない。


そして、那名子さんの心は少しずつ壊れていった。
全て母の気持ちを考え、それだけで頭が支配されていく。


実はこのようなケースの親は、近年「毒親」と呼ばれている。
子どもの人生を支配し害悪を及ぼす親、と説明されることが一般的。


いわゆる虐待や、育児放棄などが含まれる事もあるが、
どこにでも起こり得るケースもある。


理想の親になろうとして、子どもに自分の理想どおりに育つ事を求めてしまう。
完璧主義な親が、この「毒親」に陥りやすい傾向にあるという。


一般的には、母と子だけになる時間が長く、さらに同性同士のほうが、
自分の理想を投影しやすいため、母と娘に問題が多くなっているという。


那名子さんは、相談窓口に電話した事もあったが、母親と話しあってみて、という解決方法を勧められた。
この苦しみは一体誰に分かってもらえるのだろうか?
「誰か、助けて。」...やりきれない気持ちを、ノートに書きなぐるしかなかった。


高校を卒業した那名子さんは音楽の世界を目指し、音楽の短大に進学。
そしてその頃、父が胃ガンで他界した。


すると母の言動は、より激しくなっていった。
少し機嫌が悪そうな声が聞こえるだけで、胃痛や動悸が彼女を襲う。


機嫌の悪くなった母親にとにかく謝る娘。
それで母の怒りがおさまるなら...全て自分が悪いのだということにした。


ひとり暮らしも考えたが、それを簡単にできない理由も。
ある時、母と姉がもめていた時、つい母に対して本音を漏らしたことがあった。


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すると母は、自分もなぜいつもこうなるかわからないと苦しそうに言った。
母も苦しんでいたのだと分かり、私は近くにいよう、という思考になっていった。


絶望の淵で出会った1冊の本


短大卒業後は、夢の実現を目指して、オペラのレッスンに通いながら
自分でお金を稼ぐためにバイトもした。


これで自立したつもりだったが、母はそのバイト先にも連絡をしてくる。
もはや24時間、母の監視下...彼女は限界だった。


自分は母のために存在しているのか、自分が何者かわからない。
そんな感情を1人で抱え込むと、突然涙が出てくるなど、目に見える形で異変が起きた。


病院に行くと、医師からは「うつ病」と診断された。
でも、これは少しうれしかった。
なぜならこれで、母も自分の異変を分かってくれるはずだから。


さっそく母にこの事を伝えると...予想外の答えが返ってきた。


母「はぁ?何言ってんの?うつ病になるんだったら私の方よ」


きちんと子育てをしていると思っている母の心はぶれなかった。
そんな絶望の中、彼女の人生を変えるものに出会う。


それは、たまたま目にした本だった。
その本のタイトルは...『母がしんどい』


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筆者が母親から受けた理不尽な体験を漫画でまとめたもの。
那名子さんが共感できる出来事が多く書かれていた。
苦しんでいるのは自分だけではなかったのだと、気持ちが楽になった。


離れる事で改善された親子関係


すると、どん底だった彼女にある変化が!
これまで母に意見することが無かった那名子は、ひとり暮らしがしたいと伝えたのだ。


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すると母は、あっさり承諾!
本の中の主人公のように、自分でどうにかしないとダメなんだと考え、行動した結果、
那名子さんの人生と親子関係の未来が開けたのだ。


こうして毒親に育てられた那名子さんは29歳で一人暮らしを始め、
ようやく自分自身を取り戻すことが出来た。


そして現在...仰天スタッフは那名子さんと母親に会いに行った。
那名子さんの母は娘への怒りに対して、辛い思いをさせてしまっていたと語っている。


一方で那名子さんは、ソプラノ歌手として活動しながら、
同じような毒親の体験をした人たちを集め、お互いの事を話す場を作っている。


専門家は毒親への対処法について、
親に合わせて良い子を演じ続けるという段階を終わりにして
本音を出す段階が必要だという。


そして親の方はそこをうまく冷静に受け止めて、子どもの立場で言っている訴えに
ちゃんと耳を傾けてあげて、そこに向かい合うということが大事だと語る。


それが難しければ、宮澤さん親子のように少し離れる事で劇的に改善することもあるという。
また、この毒親の性質は、親から子へと連鎖していく可能性が高いとも言われている。

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