不思議な絆で結ばれた2人
1998年5月、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス。
この町に住むアジータ・ミラニアンは愛犬との散歩が日課だった。
そんなある日の散歩中...愛犬がとある茂みで止まって動かない。
いつもなら呼べば来るのだが、この日はなぜか呼びかけに答えなかった。
愛犬が足を止めた場所が気になり見てみると...なんと、小さい足が見えた。
まさか...赤ちゃんが埋まっている?
急いで掘り起こすと...そこにいたのは黒人の赤ちゃんだった!
もう死んでいるのか?...すると赤ちゃんが泣き出した!まだ生きている!!
急いで携帯電話で救急隊を呼ぼうとしたが、電波が悪いのかうまくつながらない。
何とか助けなければと思ったアジータはとっさに近くの道路まで走った。
そこで偶然通りかかった車に助けを求め、発見から30分後にようやく病院へ。
赤ちゃんの状態は、低体温症を起こし危険な状態だった。
この状態が続けば、心臓に致死的不整脈が起こるか、心停止に陥る危険がある。
アジータは赤ちゃんが気になり帰れなかった。
翌日...赤ちゃんは奇跡的に回復。
この赤ちゃん発見は、地元でニュースとなった。
だが、赤ちゃんを捨てた親が名乗り出てくる事はなかった。
突然の別れ...もう二度と会えないのか?
あの子はこの先どうやって生きていくのか?
離婚して子どものいなかったアジータは、自分が養子として引き取る事も考えていたが、
その数日後、赤ちゃんが気になり病院に見にいくと、その赤ちゃんはいなくなっていた。
看護師に聞くと、里親が見つかったためその家に引き取られたのだという。
里親に引き取られた事には安心はしたが、あの子に会えなくなるのもさびしい。
アジータはなんとか行方だけでも知りたくて児童保護サービスに電話した。
しかし、児童保護サービスは赤ちゃんの行方を教えてはくれなかった。
当然だが、カリフォルニア州の法律でも里親の情報は、親族以外には公表できない。
確かに、あの子の新しい家庭を私が邪魔してもいけない。
そう思うようにしたが...町で黒人の赤ちゃんを見るとつい思い出してしまう。
そして、彼女はこの時の経験をきっかけに、
恵まれない境遇の孤児を助けたいと、子どもたちを救うための団体を立ち上げ
チャリティー活動に力を注ぐようになっていった。
こうして、月日は過ぎたが...あの子の事が頭をよぎる。
そしてある行動に出た!なんとTV局にあの事件を紹介してもらったのだ!
自ら再現ドラマに出演し、事件のことを伝えた。
私のことを里親が見てくれれば連絡がくるかも...という思いからだった。
しかし、連絡がくる事はなく時は過ぎ20年。アジータは56歳になっていた。
突然自分の素性を知ってしまった青年
そんな彼女に電話が。
電話先の相手は、ラジオ番組を制作しているという男性だった。
なんと、20年前に自分に発見されたと言う男性が会いたいと言っているという。
20年も経って、一体なぜ突然?
それはさかのぼる事1年前。
ロサンゼルスから約780キロ離れた、アリゾナ州トゥーソン。
この町に住む政府関係の仕事をする夫と検察官の妻のエリート夫婦。
この夫婦には一人息子がいた。
マシュー・クリスチャン・ウィタカー(19歳)...彼があの時の赤ちゃんだった。
幸せに暮らしていた彼に、夫婦は養子のことは黙っていたのだが、
親戚の中にろくでなしがいた。
この一家の暮らしをうらやみ、事あるごとにお金をせびる男。
そして親戚が集まった時、この男はマシューの出生の秘密をしゃべってしまった。
突然の告白に混乱するマシュー。
そして夫婦は不本意な形で真実を伝えた。
ショックを受けたマシューだったが、真実を知りたいと当時の事を調べた。
そして自分は生まれてすぐに土に埋められていたこと、
さらに、そんな自分を救ってくれた人がいた事を知る。
真実を知ったショックよりも、自分が幸せに過ごせているのは、
その人のおかげだとマシューは思った。
あの日からちょうど20年後に起きた奇跡
彼女に会いたい...会って感謝の想いを伝えたい。
そして、どうアプローチしていいか親友に相談した。
すると、ラジオ局から連絡が・・!
親友がマシューの話をラジオ局に持ちかけたのだ。
こうして、20年会いたいと思い続けたアジータと、
自分を救ってくれた人に、感謝の想いを伝えたいマシュー。
2人が再会する事に。
今年、5月18日。
マシューが待つラジオブースにアジータがやってきた。
それは2人が20年ぶりに会う瞬間。
アジータ「やっと会えたわ。」
マシュー「ありがとう。本当にありがとう。あなたのおかげです。」
この日はアジータが、彼を発見してからちょうど20年。
そんな記念の日に2人は奇跡の再会を果たしたのだった。