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自分が感染源になる恐怖
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30代の女性が老人ホームで給食を作る仕事をしていた。
さらに飲食店の仕事も掛け持ちしていたが、
あることを境に生きがいを感じていた食の仕事を辞めざるを得なくなった。
2年前の夏。
仕事先の店長から勤務中にもかかわらず、途中で帰るように言われた女性。
思いもよらない言葉...それには理由があった。
最近、飲食店などで定期的に行うことが多くなっているスタッフの検便。
このとき、彼女から検出されたのは...サルモネラ菌だった。
家畜などの腸内に存在するサルモネラ菌は卵や食肉に付着することがある。
以前、仰天ニュースで取り上げたのはカップラーメンに生卵を入れて食べた女性や
養鶏場から直接買った生卵を食べたカップルが発症し
激しい下痢、嘔吐、高熱などに襲われたケース。
カップルの男性は重症化し、ICUで治療を受けた。時には亡くなってしまう事もある。
しかし、この女性はどこも調子が悪いところはなかった。
検便を提出したのは数日前。元気そのものだった。
ただ1つ思い当たるのが、2か月ほど前にいなり寿司を食べた時の事。
高熱と尋常ではない腹痛に襲われ、病院へ行くとサルモネラ菌の感染が判明。
処方された下痢止めや抗菌薬で治療した事があった。
でも、あれは2か月も前の事。
仕事が出来ないと困るので、検査所で再度検便を行った。
すると...やはり陽性。
そして宣告されたのが、「無症候性キャリア」という聞きなれない言葉だった。
自らが感染源となる「無症候性キャリア」とは
無症候性キャリア...または「保菌者」とも呼ぶ。
通常、細菌やウイルスに感染すると様々な症状が現れるが、その後快方に向かうにつれ
病原体は体内から消えていく。
しかし稀に、回復後も病原体が体内にとどまったままになることがある。
それが無症候性キャリア。
彼女の場合、2か月前にサルモネラ菌に感染。
すぐに元気になったが、菌は腸内にとどまってしまったものと考えられた。
その仕組みは解明されていないが、下痢止めを使ってしまうと、
菌が排出されるのを妨げる可能性があるとも言われている。
そして無症候性キャリアの人が最も恐れる事は...自分が感染源となる可能性がある事。
サルモネラ菌の場合、トイレで他人と間接的に接触したり、トイレの後、消毒が不十分なまま調理をすることで、食べ物を介して、他人への感染する可能性があった。
そう、無意識のうちに菌をばらまくかもしれないのだ!
彼女は病院で処方された薬を飲み、1週間様子を見て再検査した。
すると結果は陰性に。
そうして職場に戻ったのだが...また陽性に戻ってしまう!
実は、体内にサルモネラ菌があっても、毎回必ず検出されるわけではない。
その後、彼女はなんとか仕事を続けられたが、直接食品に触れない作業のみ行うことに。
誰かにいつ、うつしてしまうか分からない...必要以上に神経質になっていった。
サルモネラ菌の場合、検出されたからと言って、食の仕事に就けないという
厳格な法律はないが、彼女は自ら仕事を辞めた。
実際、無症候性キャリアの人でもトイレのあと、適切な手洗いをしていれば
ほとんど問題はない。
近年、無症候性キャリアになる人が増加しているという推測もある。
決して他人事ではない。