甘く危険なメールの真実
3年前に離婚し、母親と息子の3人で暮らす44歳の女性がいた。
シングルマザーの彼女は工場で働いていたが、それだけでは生活が厳しかったので
空いた時間に簡単にできるインターネットを使ったサイドビジネスを始めた。
それは安く購入した商品を少し高くして大手ネット通販で販売し、差額を得るというもの。
毎日深夜遅くまで安い商品を探す。
家事をこなし、中学3年生の息子の進学問題など目の回るような忙しい日々。
まだ44歳...残りの人生、一人で生きていこうなんて思ってはいない。
漠然とだが、幸せになりたいとは思っている。
だが、自分から積極的に相手を探してまで恋愛しようとは思っていなかった。
とりあえず副業を成功させたい。
そう考えた彼女は、SNSにこんなことを書き込んだ。
「一緒にインターネットで商売をしてくれる仕事のパートナー募集!」
すると...しばらくしてキムと名乗るアメリカ兵から連絡が来た。
アメリカ軍の兵士と言えば、日々激しい訓練に励む屈強な男。
そんなイメージがあった。
平凡な人生で決して交わることのない人物...興味本位で返信した。
すると、少々違和感のある日本語でメッセージが。
日本語の自動翻訳にかけてメッセージを送っているようだった。
キムと名乗る男は現在シリアにいるのだという。
聞いた事のある国名...大統領率いる政権と反体制派が対立し内戦が続いている国。
そんな危険な場所で命をかけて戦う人...そう想像した。
そんな人と会話できているなんて...彼女は前のめりになってしまった。
しかしそれは全て恐ろしい罠だった。
積極的なアプローチにときめく心
さらにキムは自らの素性について話す。
年齢は50歳、母親は日本人で両親は自分が幼いころ交通事故で亡くなったこと、
そして小さな娘がいることを彼女に伝えた。
この任務が解かれたら、日本で車を販売する仕事がしたいという。
やがてLINEで会話を始めた2人。
シリアでもLINEが使えるのかと少し疑問に思ったが...
キムから自分の写真が欲しいと言われると、すぐに送った。
すると...「魅力的な女性」とキムから返信が。
彼女は気分が高揚した。
「あなたの声が聞きたい」とメッセージが来ると、すぐにキムから着信が。
緊張しながら電話を取ると...彼はとても流暢な英語を話した。
声は50歳にしては随分若く感じた。
次々に来る甘い言葉、積極的なアプローチ。
考える間を与えてくれない。
彼女はめいっぱい冷静に返信し、この日のやり取りを終えた。
だが何だかドキドキしてなかなか眠れなかった。
翌朝目覚めると...メールでバラの花束の画像が送られていた。
そして、自分が眠った後もキムはメールをたくさん送っていた。
急展開すぎると思ったが、全く悪い気はしない。
仕事の休憩中も、携帯を開けば必ずメッセージが。
返事をすればすぐにまたその返事が来る。携帯を見るのがこんなに楽しいなんて...
この時...自分にまだトキメキたい気持ちがあることに気づいた彼女。
久しぶりにメイクをするようになった。味気なかった生活に彩が。
女性としての自信は、日に日に増していく。
一方で不思議に思う事もあった。
2人は毎晩3時間もたっぷりと話す...兵士ってそんなに時間があるものなのか?
どこか違和感を覚えながらも、彼とのやり取りはより親密なものに。
キムからセクシーな写真を送ってほしいと言われた彼女。
求められるまま、裸の写真を送ってしまった。
甘いメールから...矢のような催促に
そして遂にキムが動く。
キムは30年も勤めた軍をやめ、自分と暮らすために日本へ来るという。
彼女は彼の人生に責任を感じた。
そしていよいよこんなメールが。
キム「私の退職金が現金で支払われることになりました。ただ、私はこれから最後の任務に出ます。その間基地にお金を置いていくのは安全ではありません。私が戻るまであなたに預かっていて欲しい。」
キムは民間の輸送会社を通して荷物を送るので大事に保管していてほしいと伝え、
退職証明書と現金の写真が送られてきた。
非現実すぎて何が何だかわからない彼女。
それでも彼の役に立ちたいと、言われるままに返信した。
だがこの直後、彼女は地獄に突き落とされる。
間もなく輸送会社からのメールが届いた。
そこには彼からの荷物の配送料2万ドル(約220万円)を支払えという通知が。
キムに連絡をすると、一時的に配送料を立て替えてほしいという。
さらに甘いメールと、今までにない強い口調のメールが繰り返し送られてきた。
さらにキムはこう告げた...「送られてくる私の退職金は35億ドル(約3850億円)です」と。
これは、さすがにおかしい...
ようやく正気を取り戻した彼女は知人に相談した。
知人は間違いなく詐欺だと彼女に言うが、
それでもなお彼女は、もし彼が本当のことを言っていたら助けないと...
などと、まだ心のどこかでそう思っていた。
だが矢のような催促はどんどんずさんに。
「チームの1人が射殺された」、「自分も足を撃たれてしまった」などとメールが
送られてきたので、彼女も顔が見たいと写真を催促すると...
送ってきた写真は、
明らかにこれまでに送られてきた人物とは別人だった!
お金は払えないとキッパリ断ると...キムは最終手段に出た!!
男の最終手段
なんとキムは、以前送ってしまった裸の写真をばらまくと脅してきたのだ。
彼女はなんて軽はずみな行動をしてしまったのかと悔やんだ。
しかしお金なんて払えないし、払いたくない。
すべてを失うかもしれない...家族にも恥をかかせてしまう。
だがまさにその日、彼女は衝撃的なニュースを目にした。
それは、関東に住む外国人男性グループがSNSを使い、アメリカ軍兵士を名乗って
好意を装い、福岡県在住の女性から数百万円をだまし取った罪で
逮捕されたというものだった。
この手口を「国際ロマンス詐欺」と言うのだと、説明していた。
自分と全く同じ状況。
彼女はLINEをブロックし、キムとの連絡を絶った。
彼女はこの犯行をどう暴けばいいのか考えていた。
週刊誌にこの出来事を伝えようとも思ったが、その時浮かんだのが仰天ニュースだった。
そしてこの体験を仰天ニュースに投稿してくれたのだ。
国際ロマンス詐欺に詳しい新川さんによると、
実は、メールを送っているのはナイジェリアやガーナ、インドなどに住む
20代の若者である事が多いのだという。
そして犯人が語ったあのキムさんは、米軍に実在する人物だと思われる。
名前と経歴、そして写真を無断で使われた彼もまた被害者なのだ。
SNSでの甘い誘いにはくれぐれもご注意を!