「ハコヅメ」脚本家 根本ノンジに聞く作品の魅力とは? “心の声”や警察官の日常を描く理由も明かす
8月18日(水)よる10時〜 第5話が放送となる日本テレビ系水曜ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」。
ひよっこ警察官・川合(永野芽郁)と元エース刑事・藤(戸田恵梨香)の凸凹交番女子ペアの、笑いあり涙ありの奮闘を描く本作。この度、本作で脚本を務める脚本家・根本ノンジ氏にインタビュー。作品の魅力や、「第2章」となるこれからの展開について話を聞いた。
「警察ドラマであんなシーンないですよ、前代未聞だと思います」。そう話す根本氏。7月28日(水)放送の第4話で、主人公ら女性警察官3人が署内の仮眠室で川の字になって眠る前代未聞の“添い寝シーン”が大反響。さらに話題を呼んだのが、第1話で描かれた“通常点検”。絶対に笑ってはいけない状況下で警察官たちの“心の声”がダダ漏れとなったシーンは、放送後にYouTubeでノーカット版が公開されるや否や“これ笑わない人いるの?”“めちゃくちゃ爆笑した!”などコメント欄は大盛り上がり。現在300万回再生を突破している。そんな話題のシーンを次々と生み出すドラマ『ハコヅメ』の魅力を、根本氏はどう考えるのか…?
■「今までいろんな原作をドラマ化してきたけど、一番難しい」
ドラマ「ハコヅメ」は、モーニング連載中の人気漫画が原作。通称“ハコヅメ”こと交番勤務に配属された新人警察官・川合が、“パワハラ”で飛ばされてきたという刑事課の元エース・藤とペアを組むことにより、徐々に絆を深め成長していくストーリー。原作者・泰三子は元警察官で、交番勤務の警察官の実情がリアルに描かれている。
「漫画であれ小説であれ、原作があるからドラマ化なり映像化の話がある。必ず原作に敬意を払い、原作の世界観を大事にしています」。そう話す根本氏は、これまで『監察医朝顔』『フルーツ宅配便』など原作のある作品も多く手掛けてきたが、そんな人気脚本家をして「今までで一番難しい」と言わしめるのがこの「ハコヅメ」だ。
「原作のコミックスがめちゃくちゃ人気なんですけど、初期のころは一話完結の“交番の日常”みたいな話が続くんです。それをドラマ化すると各話だいたい10分を切るくらいになってしまう。そうなると残りの40分はオリジナルのエピソードで作ることになって、漫画の世界観と変わってしまうことがある。もちろん面白くなる場合もあるし、そういうドラマもいっぱいあるけど、『ハコヅメ』に関しては面白いエピソードがたくさんあるので、いろんなエピソードを一つのストーリーとしてつなげた方がいいな、と。その上で、登場人物たちの気持ちの流れがきちんと起承転結できるように構成していく。だから話のつながりが難しかったりするんです」。原作を大切にするが故の難しい脚本作り。実は、ドラマの第1話で描かれた話題の“通常点検”のシーンも、原作では第6巻に登場する。あえて第1話に組み込んだ理由とは…?
■「第1話に通常点検のシーンを入れたことで“心の声”が『ハコヅメ』のお楽しみ要素に」
「初めに書いたのはもっと長かったので、打ち合わせのときに、やっぱり長すぎるんじゃないか、ストーリーに関わるシーンじゃないのにそもそも必要なのか、と議論になりまして。原作でも6巻くらいのエピソードなのに1話に入れることないじゃん、という意見もあった」。“通常点検”とは、警察官の規律を保つために、身に着けている装備品の状態や動作の確認などをする恒例行事。絶対に笑ってはいけない状況下で、主人公の藤や川合だけでなく、その場にいるみんなの“発してはいけない心の声”が飛び交う演出が笑いを誘った。
「それもまたドラマのセオリーとしてあり得ない、と議論になりました。みんなの“心の声”なんて、普通はあんまりやらないんですよ、主人公の目線で見ていくから。いきなり全員が、ってないんです。だけど面白いじゃないですか。こういうことをやろうとしてるんだな、とドラマの見方も分かってもらえる。だから絶対にやったほうがいい、と」。結果、無事に収録されたシーンは予想どおり大反響。「仕上がりを観たら超面白くて。藤が警笛を吹いたときのあの顔、あの目、素晴らしすぎましたよね。あれを1話でやったことによって、いつでも“心の声”ができるようになったので、よかったな、と」。事実、登場人物たちの本音ダダ漏れの“心の声”は、第2話以降も『ハコヅメ』にとって欠かせないお楽しみ要素の一つとなっている。
さらにもう一つ、根本氏が「どうしてもやりたかった」と言うのが、あの第4話の“添い寝”シーンだ。「原作にもあるんですけど、あんなの警察ドラマで見たことない。でもおそらく実際にこういうシーンがあったんだろうな、と。どうしても寝なきゃいけないから寝よう、って。一方の男たちはおじさん刑事に囲まれて寝る。あれもたぶん本当にある話なんだろうな。今までの警察ドラマではあんなシーンないですよ、前代未聞だと思います。こういうところが『ハコヅメ』。ああいう、なんともいえないリアルなものは必ず入れたいと思っています」。
■「ハコヅメは、警察官を普通の人間として描いている」
「僕は普通に生きている人たちの細やかな日常を描くことが好きなので、どんな原作でもそこは大事にしています。ごはんは何を食べるとか、どうやってお風呂に入るとか、日常の細やかなことでも事件は起こると思うので。だから食べ物のメニューも台本に細かく書き込んじゃう。“こういうのを食べる人って、こういう性格だよね”ってあるじゃないですか。ごはんの食べ方だけでもキャラクターが出るので。細かく書いちゃって嫌がられるんですけど(笑)」。
そんな根本氏にとって「ハコヅメ」は、まさに自身が一番描きたいことと合致する作品だ。「原作でも『警察官なんて、しょーもない普通の人間だよ』というセリフがあるんですけど、まさにそこ。今までの警察ドラマは刑事の推理がすごいとか、熱血とか、正義感が強いとか、割とそういう描かれ方をしていたけど、『ハコヅメ』に出てくる警察官たちはすごく人間臭くて、普通の人なんですよ。文句も言うし、愚痴も言う。そこが魅力なんです。扱う事件も、普通の警察ドラマは殺人事件で人が死んで、誰が犯人で、と描いていくけど、そうことを全く描いてない。もっと身近な事件、誰にでも起こるような出来事、警察官はこんなこともしてるんだな、って。警察官を正義の味方として描くのではなく普通の人として、悩みながら事件にあたっている、解決するために頑張っている、そこを見てほしいですね」。
■「原作に魂を吹き込む、戸田恵梨香&永野芽郁の演技」
そして「ハコヅメ」のもう一つの見どころ、ダブル主演の戸田恵梨香さんと永野芽郁さん、原作の世界観そのままの演技をみせるお二人については、「原作があるので当て書ではないけど、お二人がよりリアルに、より魂を吹き込んでくれている。戸田さんの凛としてる顔と、優しい顔と、ちょっとキュートになるときの、あの感じが素晴らしくて。心奪われてしまいました。永野さんも、川合というキャラクターはちょっと失礼だし、急にタメ口聞いたりするし、やる気もなさそうだし、嫌われる要素があるんだけど、永野さんが演じることによってそれが全くない。また髪型がいいですよね、あれでもう川合そのもの。ほんとに感動します」。
ちなみに、お二人の演技で特に印象に残っているシーンはと言うと…?「1話で川合が犯人を走って追いかけて、でも転んで追いつけなかったのを、藤が捕まえた。それが4話では、転んだ川合に藤が『立て!走れ!』って言う。あそこは好きですね。川合が一生懸命立ち上がるところ、1話から4話の間でちょっとだけ成長しているところとか。でも5話以降、さらにいいシーンが出てきちゃう…」。
■「5話から物語は第2章へ!」
第4話で、川合は似顔絵が評価され、正式に似顔絵捜査官としての研修を受けることに。物語はここから新たな展開をみせる。「5話からは川合が似顔絵捜査官として開花して、“これから成長していくぞ”っていう、第2章と言っても過言ではない。面白いシーンが山盛り。川合と藤の合コンがあり、さらに川合は恋に落ちる。これは面白いです。真面目な事件も取り扱いながら、5話は楽しい回。それ以降も原作で人気のエピソード、僕が好きなエピソードをどんどん使っていくので、楽しみにしていてください!」。
初恋すらしたことがないという川合がまさかの恋に落ちる!?その相手とは!?
そしていまだ明かされない、藤が交番に来た本当の理由…。一体なぜ刑事課のエースが交番に来たのか。休みを返上してまで何を追っているのか。そして藤が大事にしまっている写真に写る、どこか川合に似た面影の女性警察官は誰なのか…!?見どころ満載の第2章に乞うご期待!
水曜ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」第5話は、8月18日(水)よる10時から放送。