留守堂:
小学校の時、チビでデブで貧乏で……ドジスケと言うあだ名で、
いじめられていた僕の家に、毎週、餃子を届けてくれる人がいました。
一体誰が届けてくれてるのか。
隠れて待ち伏せしたりしたけど、その人が誰だか、どうしてもわかりませんでした。
ある夏の日、プールの時間に泳ぎの苦手な僕は溺れてしまいました。その時、意識不明寸前の僕を、見つけてくれたのはクラスの人気者・マンチッチでした。
マンチッチはプールに飛び込んで、僕を引っ張り上げ、人工呼吸をしてくれたのです。
その人工呼吸は……
あの餃子の味がしました。
ぼんやりした意識の中で、僕は確信したのです。毎週餃子を届けてくれているのはマンチッチなんだと。
留守堂:
でも、高校2年の6月のある日、マンチッチは忽然と姿を消してしまいました。そして何と、ホームレスになっていたのです。公園で震えているマンチッチに、僕は問いかけました。『何か欲しいものある?』
……覚えていますか?
万智:
欲しいもの……それは家……帰る家。
留守堂:
……あの言葉を聞いたから、僕は、不動産屋になったんです。
そして留守堂謙治に名前も変えました。
あの時と同じ気持ちで、僕は今も、あなたを愛しています。